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2015年3月

2015年3月16日 (月)

「植草一秀の『知られざる真実・・そして、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と判断できるものについては、

引用

「植草一秀の『知られざる真実』」2015/03/15

財政健全性は資産と負債のバランスで判定する  第1102号

3月14日、北陸新幹線の長野-金沢間が開業した。高崎-長野間が開業したのが1997年10月1日。長野-金沢の距離は228キロメートル(営業距離)。この延伸に17年半の時間を要したことになる。これまで金沢-東京間は、鉄道利用の場合、新潟県上越市の犀潟駅(さいがたえき)と上越新幹線の越後湯沢を結ぶ北越鉄道を経由する特急はくたか号と越後湯沢-東京間を結ぶ上越新幹線を乗り継ぐルートが最短であった。

4時間20分ほどの時間を要していたが、北陸新幹線の開業で、金沢-東京間

が最短2時間28分に短縮された。北陸-首都圏が日帰り圏内になり、また首都圏から北陸への観光客が急増することが予想され、北陸三県ではその大きな経済効果に期待が寄せられている。

長野-金沢間は最短で65分で接続されることになったが、この1時間の路線開業に要した時間が18年ということになる。

日本有数の豪雪地帯を通過することから、積雪対策に多くの技術が必要であったし、また山岳地帯を通過する部分が多く、トンネル工事にも多大な費用と労力が求められた。

 

18年の歳月を経て、ようやく実現した金沢延伸であるが、時間がかかり過ぎたとの印象は否めない。中国では首都北京と最大都市上海とが京滬高速鉄道(けいここうそくてつどう)で結ばれている。全長1318キロメートルの距離は、長野-金沢間の228キロのちょうど5倍に該当する。この高速鉄道建設が着工されたのが2008年4月で、2011年6月には開業された。工事着工から開業までの期間が、わずか3年余りであった。


両者の時間の開きには改めて驚かされる。新幹線のようなインフラの特徴は、その社会資本=インフラが効用を発揮する期間が長期にわたる点にある。完成して実用に供されれば、長期にわたって価値を発揮するのである。道路も、港湾も、空港も、そして鉄道も、作るのは大変だが、作ってしまえば大きな価値を発揮し、しかも、その価値発揮の時間が非常に長い。

 

生活に関連した社会資本も同じだ。生活の利便性を飛躍的に高める、電気、ガス、水道などの、いわゆる「ライフライン」と呼ばれる社会資本も、敷設には時間と労力、そして財源を必要とするが、敷設されてしまえば大きな価値を発揮して、しかも、長期の利用を可能にするものである。


財政政策の運営を考える場合には、「投資」が持つ、こうした特性を十分に踏

まえることが大事なのである。

 

財政運営ではとかく「財政赤字」の問題だけが前面に出されやすい。巨大な財政赤字を計上して、債務を累積させれば、財政破綻に対する懸念が拡大するとともに、累積債務の利払い費などの経費が財政運営をさらに圧迫することなどが警戒される。

 

このことから、緊縮財政が唱えられ、とりわけ、「公共投資」に対する抑制圧

力が強まるのである。しかし、例えば、新幹線のような「投資」を考えるときに、膨大な費用がかかるからと言って、毎年の投資支出を抑制すれば、投資が完了して、投資資産が実用に供される時期は大幅に先送りされる。日本はいま人口減少を加速しているが、完成したときには利用する国民がほとんどいなくなってしまうということも考えられる。家計における「実物投資」の最大のものは「住宅建設」だろう。

 

「家を買う」、「家を建てる」と言うのは、家計の支出行動のなかでの最大イ

ベントと言っても良いだろう。この住宅建設を考えるときに、「財政規律」だけを優先するとどのようなことが起こるだろう。「財政規律」の「原理主義的発想」は、「借金は良くない」というものである。「借金は不健全」「借金は悪」というのが財政規律重視の「原理主義」的な考え方である。

 これを「家を買う」ことにあてはめると、「家を買う」時期は大幅に先送りさ

れる。「家を買う」費用を確保できるのは、恐らく退職直前、あるいは、退職して退職金を獲得したときに、初めて「家を買う」費用を確保できるということになるだろう。

そして、「家を買って」、まもなく死去するのである。これに対して、就職して間もない時期に住宅ローンを組んで家を買ってしまう。

退職時点で退職金を得て、ローンは完済される。

この人は、若年の時期から死去するまで、ローンで購入した「持家」に暮らす

ことができ、退職時点ではローンを完済して、負債を残さない。

 どちらの行動が、より「賢明」と言えるだろうか。先を見越して、「家を建てる」決断がある場合には、早い時期に借金をして「投資」を行ってしまう方が、はるかに「賢明」であることが分かるのだ。

公共投資、インフラ建設、実物資産投資において大事なことは、長期の視野に

立ったときに、その「投資」を実行するのか、それともしないのか、の見極め

である。つまり、「どうしても必要と言える」ものなのか、それとも「最終的には絶対必要とは言えない」ものなのか。その見極めが大事である。

そして、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と判断できるものについては、

「出来るだけ早くに投資してしまう」「完成させてしまう」ことが賢明なのである。

たとえば、生活関連インフラである電気、ガス、水道、下水道これらが、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と考えらえれるなら、「出来るだけ早くに完成させてしまう」ことが賢明である。

 

その完成には「費用」がかかる。手元にそれだけの資金がなければどうするか。こういうときには、「借金」をするのが良いのだ。日本の財政法は、第4条で、このような場合の借金を認めている。財政法4条債と呼ばれるもので、「建設国債」と称されている。「投資的経費」については、国債を発行して支出を行なうことが許されているのである。

これは、住宅ローンと住宅の関係に似ている。家計が住宅ローンを組んで家を購入したとする。

 

家計には、住宅ローンという大きな借金が生まれるが、他方で、住宅という大

きな資産が形成される。「借金」はあるが、これと並行して「資産」が形成される。「借金」はあるが、見合いの「資産」が残存するから、この「借金」を「不健全」と見なさないのである。

国の場合も同じ。

「建設国債」という借金が残存するが、その借金に見合う「資産」が形成され、その資産が長期にわたって価値を発揮する。だから、この借金は「不健全」なものでないと評価できるわけだ。

長い目で見て、「これはどうしても必要と判断できるもの」、あるいは、「最終的には建設することを決定するもの」については、「どうせ作るなら、できるだけ早くに完成させること」が重要なのである。

何よりも重要な見極めは、「最終的に作るのか、それとも、作らないのか」という点にある。

「作らないなら作らない」「作るのなら作る」のだから、「作るもの」については、「可能な限り早く作る」ことが大事になる。

なぜか、完成させないと利用できないからだ。

一生懸命に貯金をし続けて、ようやくお金が出来て、住宅建設を着工したら、

その工事中に亡くなってしまった、というのでは悲劇である。若いときに住宅ローンを組んで家を買ってしまえば、死ぬまでその家という資産がもたらす効用を享受できる。

この行動を取る方が、はるかに「賢明」であると言える。

電気、ガス、水道、下水道と同じように、「長期的に見てどうしても必要」と判断できるものについては、その投資をできるだけ前倒しで、集中して実行してしまうことが「賢明」な判断なのである。

国全体の基幹道路、基幹となる新幹線、基幹空港、基幹港湾、あるいは、基幹となる橋や学校、公共施設などの建設はできるだけ前倒しして、集中的に整備することが「賢明」なのである。

その代り、長期的に考えて、「どうしても必要とは言えない」ものへの投資は絶対に行わないことだ。豪華絢爛な役所の庁舎など、まったく必要ないだろう。コンサートのないコンサートホールも不必要だ。

車が通らない道路を作る必要もない。ひとつの県にひとつの空港というのも必要ない。無駄な投資は全廃するべきだ。

他方で、長期的に見て、どうしても必要、作るべきものについては、これを見極めて、出来るだけ早期に、集中投資を行って、できるだけ早くに完成させてしまう。

これが賢明な対応なのである。北陸新幹線が開業して大きな期待が寄せられているが、長野-金沢の228キロの開業に18年もの時間を費やしたことの意味を、私たちはしっかりと見つめるべきだ。

安全なものでなければならないから、中国を手放しで礼賛できないが、中国が

5倍の距離の建設・開業をたったの3年で実現したこととをよく比較する必要

がある。

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著者:植草一秀(政治経済学者)

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16:56 2015/03/15


2015年3月18日 (水)

なぜ小渕優子前経産相は「収支がわからない」のか?国会議員事務所のお財布事情と政治家の“哀しい性”――松井雅博・現役国会議員政策担当秘書・NPO政党政治・大前さん。

引用 


なぜ小渕優子前経産相は「収支がわからない」のか?国会議員事務所のお財布事情と政治家の“哀しい性”――松井雅博・現役国会議員政策担当秘書

 松井雅博[現役国会議員政策担当秘書]

 2014年10月21日 著者・コラム紹介バックナンバー

 初歩的ミスで辞任した安倍政権の華、小渕優子議員

女性初の首相候補とも言われていた小渕氏だったが―― Photo:Natsuki Sakai/AFLO

10月20日、小渕優子・経済産業大臣が辞表を提出した。34歳で初入閣を果たし、40歳で二度目の入閣。将来は女性初の総理大臣も夢ではないと目されていただけに、衝撃は大きい。自身の資金管理団体から高級ブランドなどへの多額の支払いが見つかっただけでなく、有権者に対する「利益供与」とも見られる不明瞭な会計も発覚し、「世論を納得させられない」と辞任を判断した。

一方、同日、松島みどり・法務大臣も辞意を表明した。自らの選挙区で「うちわ」を配布したことを国会で野党から追及され、公選法違反を指摘された。その後の失言もマスコミを賑わせ、事態をさらに悪化させてしまった。

この相次ぐ2人の女性大臣の辞任の理由は、実は同じである。「有権者への利益供与」だ。あまり知られていないことだが、政治家は「モノをもらう」ことよりも「モノをあげる」ことの方が厳しく律せられている。

それにしても、小渕優子議員は、小渕恵三総理大臣の娘であり、自身もTBSの記者を務めていた経験を持つ。若いとは言え、政治の「素人」では全くないはずである。松島みどり大臣も東京大学経済学部を卒業後、朝日新聞で政治部の記者として活躍しており、それくらいの見識が無かったはずはない。そんな彼女たちでさえ、「初歩的」とも言えるような過ちで辞任騒動を引き起こしてしまう。一体、政治の世界にはどのような魔物が潜んでいるのか。よほど制度が複雑なのか、強いしがらみがあるのか。

筆者はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、国会議員政策担当秘書として政治の世界へ飛び込んだ。与野党の国会議員事務所で働き始めて2年以上が経った。普段は国会事務所で委員会質疑資料作成や陳情処理などを担当しつつ、地元で選対本部長として選挙をマネジメントした経験も持つ。カネ勘定も含めた国政の「実務」を知る立場から、国会議員事務所のお財布事情と、有権者からは見えづらい、政治家の生態を解説する。

国会議員のカネの入りを解説! 年間活動費は約2500万円

国会議員本人および事務所でのカネの出入りは、多くの人にとってわかりにくいものだろう。まず、カネの「入」の方から解説しよう。

国会議員が「所得」として報告するものには、歳費(月額129万4000円〈注1〉)と期末手当(553万5085円〈注2〉)がある。したがって、一般の国会議員の税引き後の年収は、手取りでおよそ1400万円程度となり、毎年公開されている所得・資産公開の数字〈注3〉)を見ても、多くの議員はこの程度の金額が所得の欄に並んでいる。

加えて、議会の役職についている議員には、議会雑費(非課税)として日額6000円が支払われる。200日議会が開かれていれば、単純計算で120万円がもらえることになる。また、入閣すれば年収の額が変わる。ただし、日本の場合、大臣になったからといって、大幅に給料が跳ね上がるわけではない。

一方、議員個人の年収としてではなく、活動費として支払われるカネとして文書通信費(非課税)が月額100万円、年額で1200万円支払われる。また、政党を介して政党交付金・立法事務費が支払われる。党を介するため、政党によって事情が違うが、議員個人にも年間1000万円以上の金額が支払われることが一般的である。

これ以外で活動費が必要な場合は、政治資金パーティを開催してみたり、寄附を募ってみたりするわけだが、正直、このご時世、パーティやら寄附やらで多額のお金を集められる議員はごくわずかだと思う。

ほとんどの議員は、文書通信費と政党からの助成金の年間合計2500万円程度で活動しているのが一般的と言えるだろう。こうした議員の活動をする際に使うカネはすべて「資金管理団体」に登録した一つの会計口座で管理することが義務付けられている。

 

注1:議長は月額217万円。副議長は158万4000円。

 注2:期末手当については、12月10日に支払われる金額290万8265円が公務員給与の引き上げに伴って増額されることが現在検討されている。

 注3:実際の所得・資産公開では税引き前、税額控除(245万円)後の数字が掲載されている。

議員の雑務は多岐にわたる公設秘書三人でも手は足りない

年収が手取りで1400万円、活動費は2500万円。それに加えて交通費は無料(JRのみ)、飛行機はクーポンがもらえ、公設秘書は3人公費で雇うことができる。これだけを聞くと、「国会議員はいい待遇だな」と思う人もいるかもしれない。

しかし、こんな多額のカネ(もちろん原資は税金)は、具体的にいったい何に使われているのだろうか。カネの「出」について、具体的に説明しよう。

まず、最もカネがかかるのは「人件費」だ。これは民間企業でも同じことだろう。人を1人雇うのに月給25万円を支払ったとしても、社会保険なども含めると年間300万円程度は必要になるだろう。地元で2人、国会事務所でアシスタントを1人雇えば、900万円かかる計算になる。

「税金で秘書を3人雇えるのに、私設秘書も必要なのか」と首を傾げる方もいるかもしれないが、政治家事務所の仕事は多岐にわたる。地元事務所であれば、チラシを配ったりポスターを貼ったりするような単純労務、さまざまな会合に参加して有権者や団体と直にコミュニケーションする仕事、車の運転や議員の随行、電話番やら資料作成と、時間をとられる仕事はいくらでもある。

有権者からしてみれば「年に一度の陳情」や「たまには一言、言ってやろう!」でも、政治家事務所からしてみれば、毎日のように電話が鳴り、激励やお叱りの言葉も含めて有権者の方々との対話に時間を使わねばならない。

国会事務所であれば、国会開会時には、当然議論の内容は常にウォッチしていなければならないし、事務所には訪問者も多い。官僚からのレクチャーや政策についての勉強会などへの参加を1人でこなそうとすると、事務所が留守になってしまう。

朝は8時前には出勤して会議に出席し、議員の代理で講演を任されることもあり、夜はパーティや会合に参加することも多い。何より、政策担当秘書の仕事は「考える」ことでもあるので、1人で考えを巡らせる時間も欲しい。そうなると、どうしてもアシスタントが必要になってしまうのである。

もちろん、私設秘書を雇うかどうかは議員本人の判断なので、選挙区が東京に近い議員は政策秘書にも地元まわりを兼務させたり、事務所を一本化してアシスタントを集約したりすることで人件費を抑制している例もある。

支援者に「割り勘で」と言えるか議員の職業病と“哀しき性”次にお金がかかる費目は、会合参加費・飲食費だろう。

国会議員の重要な仕事の一つに「国民の声を拾う」ことが挙げられる。しかし、駅前で演説していても国民の声など拾えるわけがない。さまざまな会合や勉強会などに参加したり、直接会って話をすることで、「今の有権者はこういう風に考えているんだ」と肌で知ることは極めて重要なことだ。

しかし、それにはどうしてもお金がかかってしまうのも現実なのだ。人と会って話をするのに、食事もお茶も無く向かい合って話をするということは、考えにくい。また、選挙で自分を支援し、国政に送り出してくれた有権者と話をしながら食事をした場合、「では、割り勘でお願いします」とはなかなか言えるものではない。これはビジネス界で活躍している方であれば、想像できるのではないだろうか。

また、冠婚葬祭への参加も多い。議員に対してよくある批判に「国会議員は呼ばれてもいない結婚式に参加して票を稼いでいる!」というものがある。

しかし、よく考えてみてほしい。呼ばれてもいないのに結婚式や葬式に参列することなどできるはずがない。国会議員は職業柄どうしても顔が広くなってしまう職業なので、応援してくれた人が結婚した、関係者が亡くなったとなると、必然的に電報を送ったり参加することになる。

結婚披露宴のご祝儀の相場は3万円と言われているが、「国会議員だし、3万円とはいかない」という心理が働くのも事実で、5万円、場合によっては10万円は包まざるを得なくなる。

これは人によって異なると思うが、真面目に活動すればするほど、毎日誰かと食事を共にしたり、会合に参加したりすることになるので、おそらく年間300~500万円程度は必要になってしまうのではなかろうか。

会合に出ること、有権者とのコミュニケーションは議員としての大事な仕事であり、それによって人脈が広がるのは“職業病”と表現できるだろう。そして、有権者との食事を含む会合などで「相手に払わせられない」という心理が働くことは、議員の“哀しい性”でもある。

ちなみに、筆者は政治家ではなく、単なる秘書であるが、すでに結婚式には100回以上出席し、300万円以上のお金を自腹で支払っている。これもまた議員同様、人脈が広くなってしまうことに起因する“職業病”なのである。

若者とお年寄りの将来に起こることとは? 議員と深い付き合いを持ちやすい年齢層 若者とお年寄りの将来に起こることとは?

また、政治家の周りに集まる人の層の特性も関係していると思う。選挙事務所に何日かいればわかることだが、国会議員の事務所に集う人の年齢層は、20代前半の若者か定年後の高齢者が多い。その2つの層の共通点は「時間に余裕がある」こと。そして、彼らと深い関係を築くということは、数年後に結婚式や葬式に出席する機会が生じる可能性が高いということでもある(不謹慎な言い方かもしれないが)。

小渕優子議員は会見の中でこう述べていた。

「ベビー用品を購入したのは県外の方の出産祝いや誕生祝いの社交儀礼、化粧品、服飾品は海外出張のお土産として購入しお渡ししたものでした。一部報道では関係者に品物を送るのはポケットマネーで行うべきとの指摘がありますが、会社や団体が経費で社交儀礼をするのと同じく、政治家が人脈を広げていくことは重要な政治活動であり政治活動の経費として認められるものと思う」

小渕議員は「女性の活躍」の代名詞とも言えるような存在だった。もし、100人の若い女性が小渕議員の支援をしていたと仮定しよう。その後、年ごろの彼女たちが続々と結婚・出産したならば、小渕議員が「何か贈り物をしなくちゃ」と考えるのも自然なことかもしれない。さらに、「一応大臣を務めた国会議員だし、安っぽいものを贈るのもなぁ」と5万円のベビーカーを贈ったとするならば、百万円単位での出費となる。

今回、問題となった金額は数千万円単位で、額の大きさが注目を集めたが、政策秘書として、国会議員のカネの出入りを見ている筆者からすれば、小渕優子議員ほどの大物議員になれば、ありえない数字ではない、と感じている。

他にも、チラシ・ポスターの印刷代・配布代(およそ200万円)、東京での議員宿舎の家賃(年間およそ120万円)、事務所の電気・水道・ガス・NHK、コピー機、新聞代などを合わせれば、年間500万円は下らない。

ベテラン議員が犯した初歩的なミスの背景にある3つの要因

国会議員のお財布は主に2つの法律によって明朗にされることが義務付けられている。

1つは、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」。これに基づき、国会議員は毎年、所得と資産を報告することになっている。春になると、新聞でも一覧が報道されている。

もう1つが、「政治資金規正法」。これに基づき、国会議員は収支報告書と政党交付金使途等報告書(注4)を作成し、公開することが義務付けられている。今回の小渕優子議員の事件も収支報告書で「公開された情報」から事実が発覚している。さらに、今国会において、維新の党は毎月入る文書通信費についても使い道を公開する方針を掲げており、議員立法で法案を提出する構えだ。

しかし、ここまでやってもなお「初歩的なミス」が生じるのはなぜなのか。政治家がカネがらみのスキャンダルで辞任するというニュースは、今に始まったことではない。

要因は3つ挙げられるのではないだろうか。まず、政治の世界に集まる人の質である。つまり、プロフェッショナルとして議員秘書を極めようという人材が、なかなかいないということである。

注4:収支報告書とは、国会議員事務所全体の損益計算書のようなもの。政党交付金使途等報告書とは、その中で政党交付金を何に使ったのか、という使い道を報告するもの。

二人の女性大臣の辞任から 学ばなければならないこと 高学歴者の多くが「サラリーマン」の道を選ぶ日本においては、政治の道に進もうとする人間は極めてレアである。国会議員を目指すならまだしも、秘書やスタッフとして働く人材となると、なかなか確保が難しいのが現状だ。

優秀な人がいても、自身も議員を目指している場合、選挙が近くなると事務所を辞めてしまうことになる。最近、地方議会議員のお粗末な事件が世間を騒がせたが、秘書やスタッフだけでなく、地方議会議員についても、人材の確保は非常に難しいのが現実で、鐘や太鼓を叩いて探してもよい候補者を見つけるのは難しい。日本全国の政治の現場は、深刻な人材不足に陥っているのだ。

次に、仕組みの問題だ。収支報告書の作成は主に秘書が行う。しかし、秘書は前述したようにその人自身が政治家を目指していたりするので、選挙になると辞めてしまい、人の入れ替わりが激しい。その上、人材難であり、しっかりと収支報告書の作成に関する過去の経緯が引き継がれない現状がある。

それゆえ、マスコミに過去の誤謬を発見されても、その時の担当者はもう事務所にいないためわからない、という事態は構造的に起きやすいのだ。

最後に、小渕優子議員のような世襲議員にはありがちかもしれないが、強固な後援会や支援組織がしっかりしていればしているほど、議員本人にとっては中身がブラックボックスになりやすいということだ。新人候補者はゼロから自分自身で積み上げていくので、すべてを把握しやすいが、すでにあるモノの上に立つと、なかなか中身は見えないものである。これはベンチャー企業をゼロから立ち上げた社長と、大企業の社長との違いにも似ているかもしれない。

2人の女性大臣の辞任から学ばなければならないこと

今回の事件を、「また政治家の金銭スキャンダルが起きたな」と他人事で終わらせてはいけない。まず、筆者は有権者への利益供与など言語道断だし、カネのかかる政治体質にメスを入れることが、優秀な人材を政治の世界へ流入させるためには必要不可欠であると認識している。それに「金銭的にクリーンであること」は政治家として当然であると考えている。

しかし、そうは言っても、政治家に対してそれをどこまで求めるか、また現状のルールが適当か、ということは、議論の余地があるのではないかと考えている。

上場している株式会社がIR情報を公開するのは、その内容によって投資判断がなされるからだ。そして、企業の最終目的が「利益」を産み出し、株主に配当することである以上、企業には「金銭的なクリーンさ」が強く求められることになる。

しかし、政治家の仕事は利益を生むことではないし、配当することでもない。政治家事務所の秘書やスタッフが、領収書を集めたり公開書類を作成することにばかり時間を使っているようでは、一体何のための政治活動なのか、わからなくなってしまう。

6また、政治とカネの話をやるなら、しかるべき場でやるべきだ。経済産業委員会や法務委員会でカネやウチワの話をされたのでは、有権者もガッカリだろう。

政策論争ではなく、カネのスキャンダルで政治家を追い落とす、というのは、かつては第四次伊藤博文内閣の星亨逓信大臣が辞任に追い込まれて以来、田中角栄、竹下登、細川護煕、小沢一郎と、近年までずっと続いている悪しき伝統である。原発再稼働や成年年齢の引き下げなど、極めて注目度の高い重要な国政課題を議論する場でカネのスキャンダルを議論するのは、上述した通り、政治の本筋ではないはずだ。やるなら「政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会」という場があるわけなので、場を移すべきではないか。

そして、有権者もまた、こういったスキャンダルを一過的に騒ぎたてるのではなく、しっかりと公開された資料に目を通すべきである。単にヒステリーを起こすだけでは、「一人前の有権者」としては失格だろう。

繰り返しになるが、今回の事件は、決して許されるものではないし、批判されて然るべきものだ。本来議論すべき重要な国政課題を放置する原因をつくった小渕、松島両議員の責任は重い。

ただし、単に彼女たちを批判し、辞任に追い込めばよいわけではない。「金銭的クリーンさ」を議員にどこまで求め、またそれに対する規制はどの程度であるべきか、問題が起きたときに重要な国政課題が放置されないようにするには、どうしたら良いか、こうしたことを考えるべき時にきているのではないだろうか。

さて、ではそろそろ領収書の整理に戻るとしよう。

8:06 2015/03/18

 

 

安倍首相まで疑惑に苦しむ「企業献金」の知られざる闇事情――政治ジャーナリスト・松井雅博 2015年3月18日

 著者・コラム紹介バックナンバー

「違法性はない」「知らなかった」 続々と発覚する「政治とカネ」の疑惑

留まることを知らずに次々と噴出する「政治とカネ」問題。そもそも企業から献金を受けることは、どれほど悪いことなのかPhoto:Natsuki Sakai/AFLO再び、永田町に「政治とカネ」の嵐が吹き荒れている。

2月23日、西川公也農林水産大臣が辞任した。西川元大臣が代表を務める政党支部に対して、国の補助金の対象になっていた会社から寄附を受けていたことが判明したのだ。西川氏サイドは「違法性はない」と主張していたものの、最終的には辞任に追い込まれることとなった。

しかし、事態はそこでとどまらなかった。なんと、安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理兼財務大臣、菅官房長官に加えて、重要閣僚らにも続々と同様の疑惑が発覚しただけでなく、それを追及する立場であるはずの野党民主党のトップである岡田克也代表もまた、その政党支部が補助金支給企業の持ち株会社から献金を受けていたことがわかったのである。

挙句の果てに、下村博文文部科学大臣の「違法献金」疑惑に中川郁子農水政務官の不倫騒動などが加わり、政界はてんやわんやの大騒ぎである。

多くの重要課題を抱えていながら空転する国会。「もういい加減にしてくれよ」と嫌気がさしてる有権者の方々も少なくないだろう。政治家たちは口を揃えて「返金した」「違法性はない」「知らなかった」と主張しているが、政治不信は高まるばかりだろう。

事態が膠着状態に陥るなか、ちょっと立ち止まって、今何が起きているのかを整理してみたい。我々国民の多くは、政治献金の何が問題かを、実は詳しく知らないであろうからだ。

 ――そもそも、政治資金規正法って何だろうか?

――ちゃんとルールがあるにもかかわらず、なぜこんな問題が続々と明らかになるのだろうか?

――いったい、どこに問題があるのか。法の欠陥なのか、仕組みの問題なのか、それとも議員の質の問題なのか?

――そして、政治家たちの言い訳はホントなんだろうか?

筆者はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、国会議員政策担当秘書として政治の世界へ飛び込んだ。与野党の国会議員事務所で2年半働いた後、自身も兵庫県第10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)から、前回の衆議院議員選挙に出馬した。政治の現場や裏側を「民間の目」で見てきた経験から、こうした有権者からの素朴な問いに答えつつ、本件の本質に迫りたい。

そもそも何が悪なのか。政治資金規正法の抜け穴 そもそも企業献金は悪なのか? 政治資金規正法はやはり「ザル法」

第一に、そもそも政治資金規正法とは何か。

国会議員のお財布は、主に2つの法律によって明確にすることが義務付けられている。1つは、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」。これに基づき、国会議員は毎年、所得と資産を報告することになっている。春になると、新聞でも一覧が報道されている。

もう1つが、「政治資金規正法」。これに基づき、国会議員には収支報告書と政党交付金使途等報告書(注)を作成し、公開することが義務付けられている。こちらは、国会議員個人ではなく、国会議員が代表を務める政治団体のお金の使い道を明らかにしようとするものである。

つまり、政治資金規正法とは、政治団体のお金の流れについてルールを定め、しっかりと公開することによって不正を防止しようという趣旨の法律である。ちなみに、巷で使われている「政治献金」という文言は法律には使われておらず、正確には「寄附」という。

あまり知られていないことだが、基本的に政治家は有権者に金品を「与える」ことに対して厳しい制約を受けているが(昨年、松島みどり元法務大臣が辞任したウチワ問題はこれにあたる)、金品を「もらう」ことに対しては比較的制約は少ない。もちろん上限は定められているものの、きちんと公開さえしていれば、もらうのは問題ないケースがほとんどである。

これは、有権者が特定の政治家を「応援したい」と思うのは自由であるし、具体的な行動をとるのも自由なはず、という思想に基づいている。政治家を応援すること自体を敬遠する人が増えてしまったら、とても残念なことだ。

しかし、1970年代半ば、ロッキード事件という大規模な汚職事件で田中角栄内閣が退陣した際、初めて寄附に対して制限が導入された。その後、1990年代前半に起きたリクルート事件をきっかけに、政治改革の旗印の下、様々な規制がつくられることとなった。

注 収支報告書とは、国会議員事務所全体の損益計算書のようなもの。政党交付金使途等報告書とは、その中で「政党交付金」の使い道を報告するもの。

 

企業が「寄附」で補助金を還流させる思惑と仕組み そして1994年、細川護煕政権時代に、企業・団体からの寄附は政治家個人に対しては全面禁止され、政党(政党支部を含む)、政治資金団体、資金管理団体(のちに禁止)に限定されることとなった。これは、企業・団体からの献金については、しっかりと見える口座で管理し、公開を徹底することで、贈収賄を防ぐという意図であった。

今回、次々と大物政治家から疑惑が発覚しているが、ほとんどの議員は「闇献金」をもらっていたわけではなく、公開情報から問題が明るみになっている。ただし、下村博文文部科学大臣の「裏金」疑惑は、要は政治資金管理団体に集約して報告すべきところを怠っていたのではないか、という疑惑である。きちんと報告さえしておけば、政治資金を集めるために講演を行ったり、寄附を募ること自体は何ら問題のない行為であることは、ご理解いただきたい。

この法律によって、確かに「透明性」は担保されたものの、結局「個人からの献金」にしてしまえばお金を渡すことは可能であることや、政党支部に堂々と献金すれば問題にならないこと、公開したところで大臣級にでもならない限り、チェックされることもほとんどないことなどから、この政治資金規正法は「ザル法」だと批判する人も多いのが実態である。

 

なぜ企業は「寄附」をするのか?補助金を還流させる思惑と仕組み

さて、「金品を『もらう』ことに対しては比較的制約は少ない」と述べたが、実は政治資金規正法は、国から補助金などを受け取る企業については一定の制限を設けている。まずは、法文を読んでみてほしい。

 

◆政治資金規正法

第二十二条の三  国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金(試験研究、調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないもの及び政党助成法第三条第一項の規定による政党交付金を除く。第四項において同じ)の交付の決定を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。

2 国から資本金、基本金その他これらに準ずるものの全部又は一部の出資又は拠出を受けている会社その他の法人は、政治活動に関する寄附をしてはならない。

補助金だけでなく公共事業でも「政治とカネ問題」が

5 何人も、第一項又は第二項の規定の適用を受ける者であることを知りながら、その者に対して、政治活動に関する寄附をすることを勧誘し、又は要求してはならない。

6 何人も、第一項又は第二項の規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない。

ここに書いてある通り、補助金をもらった企業は、そこから1年以内については政治活動への寄附は制限されている。これはなぜか。

簡単に言えば、「補助金」というのは、その名の通り「補助」である。「『お金が足りないから不足分を税金で補填しますよ』というのが補助金であるにもかかわらず、『寄附』をするのは変ですよね」ということである。その意味では、1年以内に限定している点も「ザル法」な気がする。

さらに踏み込んで言えば、「そもそも利益を求めるのが至上命令であるはずの民間企業が、なぜ政治家に寄附をするのだろう」という疑問を持つ人も多いのではないだろうか。もちろん、CSR(企業の社会的責任)という言葉が普及しつつある今、民間企業だって寄附することはあるだろう。しかし、特定の政治家への寄附が一般の社会貢献活動への寄附と同じであると感じる人は少ないだろう。

「何か見返りを期待しているのではないか」――正直、そう疑われても仕方がないのは事実だと思う。

すなわち、政治家が「顧問」として補助金の情報を民間企業に教える。企業はその情報を素早く得ることによって、役所に迅速に申請を行い、補助金を得ることができる。その見返りとして政治家に寄附をする……という構図である。

 

補助金だけでなく公共事業絡みも選挙の公示日にカネを受領した元閣僚

これは補助金だけではなく、公共事業にも同じことが言える。 2007年10月2日、福田康夫政権の閣僚、渡海紀三朗・文部科学大臣(当時)は、閣議後の記者会見で、自身が代表を務める自民党政党支部が国の公共事業を受注している県内の建設会社から2000年衆院選前後に計478万円を受領していたことを明らかにした。2003年と2005年の衆院選でも、公示日などに国の公共工事を受注していた建設会社から、同支部に計200万円の寄付があったことも判明した。

渡海紀三朗元文科大臣は、「疑義が生じるのは不本意なので返金する」としたが、選挙の公示日に何度もカネを受領していたのでは、疑惑の目を向けられても仕方がない。

政治家は「知らなかった」で済まされるのか 筆者も国会事務所で働いていたからわかることだが、実は国会議員は公共事業の未発表の計画などを事前に知ることができる。その情報があれば、その開発される予定地の近くの土地などの物件は値上がりすることが容易に予測できるわけで、たとえばその情報を事前に知ることができれば、企業は土地を転がして儲けることだってできるかもしれない。

政治家は、常に選挙を意識している。自分を応援してくれる人、支持者をより強くしたいと願ってしまう生き物である。逆に、もし補助金や公共事業などの計画が自分と対立する政敵にとって有利に働きそうな場合、その計画を潰したいと願ってしまうということも意味している。

こうした問題を根源から断つことを目的として、維新の党は2月22日に大阪で開催された党大会において、企業からの献金については全面的に禁止する方針を発表した。企業献金を全面的に禁止する政治資金規正法改正案も国会に提出し、改革姿勢を有権者に示そうとしている。しかし、その維新の党の幹部である柿沢未途政調会長と片山虎之助総務会長にも、補助金支給企業からの献金が発覚してしまい、いかにこの問題の根が深いかを浮き彫りにする結果となった。

「知らなかった」で済まされるのか?「政治とカネ」の問題はエンドレス

「違法性はない」「知らなかった」と答える政治家が多いが、この言葉が本当かどうかは別として、こう答えるのが「模範解答」なのである。

よく法文を読んでみてほしい。まず、「違法性」に関して言えば、政治資金規正法第二十二条の三の1項では、かっこ書きで例外規定が記載されている。

(試験研究、調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないもの及び政党助成法第三条第一項の規定による政党交付金を除く。第四項において同じ)

「補助金を受けている企業と言っても、その補助金は利益を伴わないものに対する補助金だから、この例外規定にあたりますよ」と説明しているわけである。しかし、利益を出すことが至上命令である民間企業に「利益を伴わないもの」などあるのだろうか。たとえば、地震などの災害から復旧するための補助金だとしても、政治家に寄附をする余裕があるのなら復旧の方にお金を充てるべきだし、その先にはやはり「利益を求める」という目標があるはずではないか。

たとえば、赤字が見込まれるものの、ブランド力をアップさせるために、あえて国から委託を受けて行う事業など、利益を求めない活動を民間企業が行うこともあるかもしれないが、だからと言って、特定の政治家に寄附をする合理的な理由は特に思いつかない。

もはやここまで来たら、ルールの在り方を問い直せ 一方、「知らなかった」という答えについては、政治資金規正法第二十二条の三の5項、6項に、「知りながら」という条件文があることに注目してほしい。

5 何人も、第一項又は第二項の規定の適用を受ける者であることを知りながら、その者に対して、政治活動に関する寄附をすることを勧誘し、又は要求してはならない。

6 何人も、第一項又は第二項の規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない。

つまり、知らなければこの規定に反することにはならないのである。だからこそ、疑惑を追及された政治家は「知らなかった」と言い張るのだ。

元政策秘書から見て仕方ない側面も もはやルールの在り方を問い直すべき

ただし、「法を知らず」が言い訳にならないことは言うまでもないが、「補助金を受けている企業だということを知らなかった」というのは、実務を経験した立場から正直に言うと、確かに起こり得る出来事だと思う。

補助金を受けているかどうかもそうだが、第二十二条の五の1項が禁止している外国人からの寄附も、実際には判別するのが難しいケースもある。寄附をいただいた際に、「あなた本当に日本人ですか?」とパスポートを確認するということをせず、素直に「ありがとうございます!」と受け取ってしまうことは確かにあり得る。この外国人からの献金問題で、かつて前原誠司衆議院議員が民主党代表を辞任したことがある。

こうした同情的にも聞こえる発言をすると「政治家を擁護するのか!」と読者に怒られてしまいそうだが、これらは法に違反しているのであり、許されないことであることは言うまでもない。

しかし、ここまで多くの政治家が叩かれている現実を見れば、そもそものルールのあり方を問い直さねばならないはずだと、むしろ筆者は思う。

政治にはお金がかかる。これは事実である。必要経費だけでも、それなりにかかってしまうのが現実だ。この現実から目をそらすことなく、政治にかかるお金をどのように捻出するのが妥当なのか、有権者も冷静な議論をすべきだろう。

筆者としては、企業・団体献金は全面的に禁止してしまい、個人献金のみにしてしまった方がわかりやすいのではないか、と考えている。寄附というのは、1人ひとりの有権者が自らの意思と判断によって行うべきものであって、企業や団体が行うものではないと思う。スキャンダルを騒ぎ立て、呆れているだけでは、政治とカネ問題は永遠に終わることはない。

ちなみに筆者も、前向きな意味での「個人献金」はいつでも受け付け中。むろん補助金、公共事業、開発計画などの未公開情報は教えられないが、こうした政治に関する解説なら、いつでもお話しさせていただきたい。

7:41 2015/03/18

 

 

 

言論NPO メールマガジン■■■■ 2015年3月13日■■■■ 発行:認定NPO法人言論NPO<

http://www.genron-npo.net/

【Topics】【報告記事・アンケート結果公開】言論スタジオ「日本の民主主義制度のどこに問題があるのか~ドイツと比較しながら検証する~」━━━━━平素より言論NPOの活動に、ご理解とご協力を賜りまして、誠にありがとうございます。本日放送した言論スタジオ「日本の民主主義制度のどこに問題があるのか~ドイツと比較しながら検証する~」の報告記事をホームページで掲載いたしました。

2月に行った言論スタジオの際に、にアンケートを行ったところ、現在の日本で民主主義は「機能していない」との回答が半数を超えるという結果となりました。そこで民主主義シリーズ第2弾は日本の民主主義とドイツの民主主義と比較しながら、民主主義を機能させるために必要なことは何かについて議論しました。ぜひ報告記事をご覧ください。

また、先日、本テーマに関するアンケートにご回答いただいた皆様、ありがとうございました。本日放送した言論スタジオ内で使用いたしました。アンケート結果も同時に公開していますので、報告記事と合わせてご覧ください。

 言論スタジオ「日本の民主主義制度のどこに問題があるのか~ドイツと比較しながら検証する~」─報告記事と動画がご覧いただけます─

2月に行った日本の政党政治についての議論を一歩進めて、日本の民主主義を考えていきたいと思います。そこで今回の企画では、ドイツの民主主義と日本の民主主義を比べながら、新しい視点で日本の民主主義を見てみます。

 

<言論スタジオ概要>

テーマ:日本の民主主義制度のどこに問題があるのか ~ドイツと比較しながら検証する~参加者:網谷龍介(津田塾大学学芸学部国際関係学科教授)

     近藤正基(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)

     平島健司(東京大学社会科学研究所教授)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

 

 

▼報告記事と動画がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/03/0313.html

 

▼本テーマに関するアンケート結果はこちら

 http://www.genron-npo.net/politics/genre/cat300/post-498.html

  【本テーマに関連する言論スタジオ】

テーマ:日本の民主主義、政党政治はこのままでいいのか

参加者:岩井奉信(日本大学法学部教授)

     内山融(東京大学大学院総合文化研究科教授)

     牧原出(東京大学先端科学技術研究センター教授)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/post_21.html

 

▼アンケート結果はこちら

 http://www.genron-npo.net/politics/genre/cat300/-n-1.html

 【今後の言論スタジオ】

 

日 時:3月27日(金)18時30分~19時30分

テーマ:東日本大震災から4年、東北の復興は進んでいるのか

参加者:川崎興太(福島大学共生システム理工学類准教授) 新藤宗幸(後藤・安田記念東京都市研究所理事長)

     寺島英弥(河北新報社編集局編集委員)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

日 時:3月20日(金)14時30分~17時45分

      21日(土)13時30分~17時00分

内 容:国際シンポジウム

    「戦後70年 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」を中継予定

 

 

日 時:4月3日(金)18時30分~19時30分

テーマ:原発再稼働を含めた日本のエネルギー政策を考える

参加者:橘川武郎(一橋大学商学研究科教授)

     澤昭裕(21世紀政策研究所研究主幹)

     山地憲治(地球環境産業技術研究機構研究所長)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼放送URLはこちら

 http://www.ustream.tv/channel/genron-npo-live

          【過去の言論スタジオ】

 

テーマ:2015年度予算を検証する

出演者:小黒一正(法政大学経済学部准教授)

     亀井善太郎(東京財団ディレクター(政策研究)・研究員)

     矢嶋康次(ニッセイ基礎研究所経済研究部 チーフエコノミスト)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事と動画がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/03/150306.html

 

▼本テーマに関するアンケート結果はこちら

 http://www.genron-npo.net/politics/genre/cat300/2015-1.html

 

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テーマ:農協改革で日本の農業は強くなるのか

出演者:大泉一貫(宮城大学名誉教授)

     山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事と動画がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/150227.html

 

▼本テーマに関するアンケート結果はこちら

 

http://www.genron-npo.net/politics/genre/agriculture/post-497.html

テーマ:アベノミクスの成功と財政再建にどのようにめどをつけるのか

参加者:小幡績(慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授)      鈴木準(大和総研主席研究員)      山田久(日本総合研究所調査部長)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事とテキスト全文がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/post_20.html

テーマ:2015年の日本に何が問われているのか

参加者:明石康(国際文化会館理事長)

     川口順子(明治大学国際総合研究所特任教授)

     宮本雄二(宮本アジア研究所代表)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事とテキスト全文がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/2015_1.html

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17:24 2015/03/15

「植草一秀の『知られざる真実』」2015/03/16

米が露を悪と見るとき、露は米を悪と見る   第1103号

本日、3月16日の午後8時から、UIチャンネル

http://live.nicovideo.jp/gate/lv213321643

で、鳩山友紀夫元首相孫崎享氏高野孟氏による鼎談「クリミアの現状と日本外交の在り方」が生放送される。番組紹介では、「鳩山氏がクリミアを訪れ、大騒動になっているが、その真相を同行した高野氏と共に語り、さらに孫崎氏を交えて日本外交の在り方を考える。」

 

とある。

 

鳩山元首相のクリミア訪問に賛成の人も反対の人も、ぜひ番組をご覧いただ

き、鳩山氏の真意を知るべきである。

 

メディアの多くが鳩山氏の行動に批判的な報道を展開し、現在の腐敗した民主

党の幹部も鳩山氏を批判しているが、的外れの批判をしている者が、実は日本

の国益を損なっていることを、賢明な市民であるなら洞察できるだろう。

 

この問題に焦点が当たることにより、

 

本当のところ、誰が正しく、誰が間違っているのかが、浮き彫りになる。

 

鳩山元首相は、そこまで読み抜いて行動しているのだと推察される。

 

 

 

クリミアの問題も、その端緒となったウクライナの問題も、見方は当初から二

分されているのだ。

 

米国を中心とする西側の国は、西側の利害からこの問題を捉えて論評してい

る。

 

一方で、ロシアを中心とする東側の国は、東側の利害からこの問題を捉えて論

評している。

 

立場が変われば評価が変わる。

 

どちらが正義でどちらが悪魔であるのかは、自分の立ち位置、価値尺度によっ

て全面的に変化する。

 

しかし、日本では米国が主導する情報だけが流布される。

 

しかし、その見解、論評は絶対的なものではない。

 

多種多様な意見、見解があるなかで、米国が主張する見解、意見なのである。

 

したがって、それが絶対に正しいなどという保証はどこにもないし、それだけ

が唯一の真理などということはまったくありえないのである。

 

日本という国が、

 

「思想及び良心の自由」

 

を基本的人権として保障する国であるなら、クリミアのロシア編入についての

見解、主張についても、「自由」が認められる必要がある。

 

米国には米国の立場があり、米国の主張があるだろう。

 

それはそれでよい。

 

しかし、その見解があるからと言って、

 

「他の見解は悪だ」

 

「他の見解を述べることは国益に反する」

 

などと論評することは、あまりにも浅はかなことだ。

 

民主党の枝野幸男氏や岡田克也氏が、分別もなく鳩山友紀夫氏批判を展開して

いること自体が、これらの人物の底の浅さ、見識の低さを鮮明に物語ってい

る。

 

米国がロシアによるクリミア編入を認めないというだけで、なぜ、すべての日

本国民がその見解に同意しなければならないのか。

 

開いた口がふさがらない。

 

総理大臣まで経験した人物が、沈思黙考して、その結果として行動しているの

である。

 

鳩山氏の行動に賛成者がおり、反対者がいることは不思議でも何でもない。

 

しかし、反対だからといって、旅券を取り上げろなどと発言することは、良識

の欠如、品格の欠如、基本的判断能力の欠如を告白しているに等しい。

 

 

 

ウクライナは東西のせめぎ合いの核心地帯に立地する国であるる。

 

冷戦終焉後、東と西が、ウクライナをめぐって綱引きを演じ続けているのであ

る。

 

ヤヌコビッチ政権が倒され、ポロシェンコ政権が樹立されたが、この政権に正

統性があるのか否かについてさえ、見解は分かれるのである。

 

米国が背後で謀略を展開して、前政権を不正に倒し、ウクライナという国家を

乗っ取ったとの見立ても成り立ちうるのだ。

 

この見解に立てば、現在のウクライナ政権こそ、批判の対象にされるべきだと

いうことになる。

 

大事なことは、双方の主張に真摯に耳を傾けて、和解の道を探ること、平和解

決の道を探ることである。

 

鳩山元首相は、日本の現在の風潮が、対米隷属に偏り過ぎているとの判断に

立って、あえて、見解はただひとつではないのだということを、広く人々に知

らしめるために行動しているのだと思われる。

 

何も考えず、ひたすら米国にひれ伏し、米国が操る情報にただ流されるだけの

人物を、国会から追放することを考えることが、国民の利益、国益を増大させ

る方向に働くのではないか。

 

 

 

ウクライナは欧州における東西の対決点であると言って過言でない。

 

同時にウクライナは巨大な地下資源をも有しており、その利権を巡る争奪戦も

熾烈である。

 

2004年以来、ウクライナでは政治的な動揺が続いてきた。

 

親ロシアの主張を示すヤヌコヴィッチ氏と親西欧の主張を示すユシチェンコ氏

が大統領の座を争った。

 

選挙でヤヌコヴィッチ氏が大統領に選出されたが、

 

「不正選挙」

 

の批判が巻き起こり、首都キエフを中心に大規模な抗議行動が展開された。

 

この模様が世界のマスメディアを通じて大きく報道された。

 

西欧側の情報誘導が優勢となって再選挙が行われた結果、ユシチェンコ氏が大

統領に就任したのである。

 

この政治騒乱は「オレンジ革命」と呼ばれており、西側、東側で、問題の受け

止め方は正反対である。

 

米国が背後からユシチェンコを支え、ロシアが背後からヤヌコヴィッチを支え

る構図だったのである。

 

 

 

こうして親西欧政権が誕生したが、ユシチェンコ大統領は内部で盟友であった

ティモシェンコ女史などと対立するなどして国民の支持を失った。

 

その結果として、2010年の大統領選ではユシチェンコ氏と闘ったヤヌコ

ヴィッチ氏が大統領に選出され、ウクライナは親ロ政権に転換したのである。

 

このなかで、焦燥感に駆られたのが欧米陣営である。

 

2013年11月にヤヌコーヴィチ政権が欧州連合との政治・貿易協定の調印

を見送ったことを契機に、親欧米勢力および極右勢力である全ウクライナ連合

「自由」などによる反政府運動が勃発した。

 

デモ隊は暴徒化し、ウクライナは一種の内乱状態に陥り、ヤヌコヴィッチ大統

領が国外に脱出したことを名目に、一種のクーデター政権が樹立されたのであ

る。

 

西欧から見れば新政権が正統政権であるが、ロシアの側から見れば、新政権に

正統性を付与することはできない、との判断になるのは当然のことである。

 

ウクライナ政変の背後にはCIAの影が蠢いており、過去に米国が手掛けてき

た世界における卑劣な謀略工作の数々を見れば、今回のウクライナ政変も、米

国が主導した謀略であると推察することは正鵠を射ているようにも思われるの

 

 

 

こうしたことを踏まえれば、ものごとの判断は難しい。

 

すべての判断、主張は、依って立つ立場によって大きく変化する。

 

米国の利害を軸とするものの見方と、ロシアの利害を軸とするものの見方とで

は、判断は恐らく180度異なるものになるだろう。

 

米国の見立て、米国の主張に耳を傾けることは必要だが。大事なことは、それ

がすべてというわけではないことだ。

 

国会議員が、ウクライナ、ロシア、クリミアの歴史的背景をも理解せず、ただ

単純に米国の見解に絶対服従すべきだなどという浅はかな考えで行動する姿

は、日本政治の未熟さ、貧困を象徴するものである。

 

あまりにも恥ずかしい行為である。

 

 

 

米国にひれ伏す人々は、現地の実情をも知らずに、

 

「クリミアを併合したロシアは悪」

 

とだけコメントする。

 

そのような「論」がマスメディアを通じて垂れ流されているからだ。

 

しかし、クリミアに在住する人々が、ロシアへの帰属を本当に求めているな

ら、クリミアのロシアへの併合は正統性を持ち得ることになる。

 

クリミアに住む人々も多くが親ロシアの考えを有しているのかどうかは、実際

に現地で確かめなければ知りようのないことである。

 

「百聞は一見に如かず」

 

なのだ。

 

現地を訪問して、現地の実情を知ろうとすることは、決して無益の行為ではな

い。

 

大いなる意義のあることだと言ってよいだろう。

 

 

 

日本は一体いつから、一党独裁の国になったのか。

 

アメリカが好きで、アメリカに蹂躙されたい、ひれ伏したい、土下座したいと

思う人は、その嗜好に合わせて対米隷属の行動を示せばよいだろう。

 

しかし、そのような土下座外交ではダメだ、と考える人もいるだろう。

 

日本が自由主義の国であるなら、ひとりひとりの思想、良心の自由に土足で踏

み込むことは控えるべきだ。

 

人それぞれに、行動の流儀は異なる。

 

日本はロシアと領土問題を解決しなければならない関係にある。

 

鳩山友紀夫氏の祖父の尽力で、日ソの国交は回復し、シベリア抑留者の帰還が

実現した。

 

鳩山一郎首相も米国からは攻撃を受けた。

 

日本政治においては、米国にひれ伏す、米国に対して土下座外交を展開すれ

ば、米国からの覚えがめでたくなり、政権は支援を受ける。

 

しかし、米国に服従しない、米国に対しても主義主張を貫く人物は、ことごと

く激しい攻撃に晒されてきたのである。

 

このために、鳩山友紀夫氏も、激しい攻撃を受け続けているのである。

 

 

 

米国にひれ伏し、ものごとをさまざまな角度、さまざまな立場から見ようとす

る努力を怠ることが、国の進路を誤るもとになる。

 

さまざまな立場がある。

 

さまざまな価値判断がある。

 

それらのすべてに真摯に耳を傾け、相互理解と相互尊重の関係を築くことが大

事なのであって、そこから「平和と繁栄」がもたらされるのだ。

 

「偏狭なナショナリズム」

 

は国民に幸福をもたらさない。

 

70年前に、私たち日本国民を痛いほど思い知らされたのではないのか。

 

偏狭なナショナリズムに走り、無益で無謀な戦争に突き進む愚を二度と繰り返

してはならないのである。

 

8:32 2015/03/16

 

 

「植草一秀の『知られざる真実』」財政健全性は資産と負債のバランスで判定する  第1102号

3月14日、北陸新幹線の長野-金沢間が開業した。高崎-長野間が開業したのが1997年10月1日。長野-金沢の距離は228キロメートル(営業距離)。この延伸に17年半の時間を要したことになる。これまで金沢-東京間は、鉄道利用の場合、新潟県上越市の犀潟駅(さいがたえき)と上越新幹線の越後湯沢を結ぶ北越鉄道を経由する特急はくたか号と越後湯沢-東京間を結ぶ上越新幹線を乗り継ぐルートが最短であった。

4時間20分ほどの時間を要していたが、北陸新幹線の開業で、金沢-東京間

が最短2時間28分に短縮された。北陸-首都圏が日帰り圏内になり、また首都圏から北陸への観光客が急増することが予想され、北陸三県ではその大きな経済効果に期待が寄せられている。

長野-金沢間は最短で65分で接続されることになったが、この1時間の路線開業に要した時間が18年ということになる。

日本有数の豪雪地帯を通過することから、積雪対策に多くの技術が必要であったし、また山岳地帯を通過する部分が多く、トンネル工事にも多大な費用と労力が求められた。

 

18年の歳月を経て、ようやく実現した金沢延伸であるが、時間がかかり過ぎたとの印象は否めない。中国では首都北京と最大都市上海とが京滬高速鉄道(けいここうそくてつどう)で結ばれている。全長1318キロメートルの距離は、長野-金沢間の228キロのちょうど5倍に該当する。この高速鉄道建設が着工されたのが2008年4月で、2011年6月には開業された。工事着工から開業までの期間が、わずか3年余りであった。

 

両者の時間の開きには改めて驚かされる。新幹線のようなインフラの特徴は、その社会資本=インフラが効用を発揮する期間が長期にわたる点にある。完成して実用に供されれば、長期にわたって価値を発揮するのである。道路も、港湾も、空港も、そして鉄道も、作るのは大変だが、作ってしまえば大きな価値を発揮し、しかも、その価値発揮の時間が非常に長い。

 

生活に関連した社会資本も同じだ。生活の利便性を飛躍的に高める、電気、ガス、水道などの、いわゆる「ライフライン」と呼ばれる社会資本も、敷設には時間と労力、そして財源を必要とするが、敷設されてしまえば大きな価値を発揮して、しかも、長期の利用を可能にするものである。

 

財政政策の運営を考える場合には、「投資」が持つ、こうした特性を十分に踏

まえることが大事なのである。

 

財政運営ではとかく「財政赤字」の問題だけが前面に出されやすい。

 

巨大な財政赤字を計上して、債務を累積させれば、財政破綻に対する懸念が拡

大するとともに、累積債務の利払い費などの経費が財政運営をさらに圧迫する

ことなどが警戒される。

 

このことから、緊縮財政が唱えられ、とりわけ、「公共投資」に対する抑制圧

力が強まるのである。しかし、例えば、新幹線のような「投資」を考えるときに、膨大な費用がかかるからと言って、毎年の投資支出を抑制すれば、投資が完了して、投資資産が実用に供される時期は大幅に先送りされる。日本はいま人口減少を加速しているが、完成したときには利用する国民がほとんどいなくなってしまうということも考えられる。家計における「実物投資」の最大のものは「住宅建設」だろう。

 

「家を買う」、「家を建てる」と言うのは、家計の支出行動のなかでの最大イ

ベントと言っても良いだろう。この住宅建設を考えるときに、「財政規律」だけを優先するとどのようなことが起こるだろう。「財政規律」の「原理主義的発想」は、「借金は良くない」というものである。「借金は不健全」「借金は悪」というのが財政規律重視の「原理主義」的な考え方である。

 

これを「家を買う」ことにあてはめると、「家を買う」時期は大幅に先送りさ

れる。「家を買う」費用を確保できるのは、恐らく退職直前、あるいは、退職して退職金を獲得したときに、初めて「家を買う」費用を確保できるということになるだろう。

そして、「家を買って」、まもなく死去するのである。これに対して、就職して間もない時期に住宅ローンを組んで家を買ってしまう。

退職時点で退職金を得て、ローンは完済される。

この人は、若年の時期から死去するまで、ローンで購入した「持家」に暮らす

ことができ、退職時点ではローンを完済して、負債を残さない。

 

どちらの行動が、より「賢明」と言えるだろうか。

先を見越して、「家を建てる」決断がある場合には、早い時期に借金をして

「投資」を行ってしまう方が、はるかに「賢明」であることが分かるのだ。

公共投資、インフラ建設、実物資産投資において大事なことは、長期の視野に

立ったときに、その「投資」を実行するのか、それともしないのか、の見極め

である。つまり、「どうしても必要と言える」ものなのか、それとも「最終的には絶対必要とは言えない」ものなのか。その見極めが大事である。

そして、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と判断できるものについては、

「出来るだけ早くに投資してしまう」「完成させてしまう」ことが賢明なのである。

たとえば、生活関連インフラである電気、ガス、水道、下水道これらが、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と考えらえれるなら、「出来るだけ早くに完成させてしまう」ことが賢明である。

 

その完成には「費用」がかかる。手元にそれだけの資金がなければどうするか。こういうときには、「借金」をするのが良いのだ。日本の財政法は、第4条で、このような場合の借金を認めている。財政法4条債と呼ばれるもので、「建設国債」と称されている。「投資的経費」については、国債を発行して支出を行なうことが許されているのである。

これは、住宅ローンと住宅の関係に似ている。家計が住宅ローンを組んで家を購入したとする。

 

家計には、住宅ローンという大きな借金が生まれるが、他方で、住宅という大

きな資産が形成される。「借金」はあるが、これと並行して「資産」が形成される。「借金」はあるが、見合いの「資産」が残存するから、この「借金」を「不健全」と見なさないのである。

国の場合も同じ。

「建設国債」という借金が残存するが、その借金に見合う「資産」が形成され、その資産が長期にわたって価値を発揮する。だから、この借金は「不健全」なものでないと評価できるわけだ。

長い目で見て、「これはどうしても必要と判断できるもの」、あるいは、「最終的には建設することを決定するもの」については、「どうせ作るなら、できるだけ早くに完成させること」が重要なのである。

何よりも重要な見極めは、「最終的に作るのか、それとも、作らないのか」という点にある。

「作らないなら作らない」「作るのなら作る」のだから、「作るもの」については、「可能な限り早く作る」ことが大事になる。

なぜか、完成させないと利用できないからだ。

一生懸命に貯金をし続けて、ようやくお金が出来て、住宅建設を着工したら、

その工事中に亡くなってしまった、というのでは悲劇である。若いときに住宅ローンを組んで家を買ってしまえば、死ぬまでその家という資産がもたらす効用を享受できる。

この行動を取る方が、はるかに「賢明」であると言える。

電気、ガス、水道、下水道と同じように、「長期的に見てどうしても必要」と判断できるものについては、その投資をできるだけ前倒しで、集中して実行してしまうことが「賢明」な判断なのである。

国全体の基幹道路、基幹となる新幹線、基幹空港、基幹港湾、あるいは、基幹となる橋や学校、公共施設などの建設はできるだけ前倒しして、集中的に整備することが「賢明」なのである。

その代り、長期的に考えて、「どうしても必要とは言えない」ものへの投資は絶対に行わないことだ。豪華絢爛な役所の庁舎など、まったく必要ないだろう。コンサートのないコンサートホールも不必要だ。

車が通らない道路を作る必要もない。ひとつの県にひとつの空港というのも必要ない。無駄な投資は全廃するべきだ。

他方で、長期的に見て、どうしても必要、作るべきものについては、これを見極めて、出来るだけ早期に、集中投資を行って、できるだけ早くに完成させてしまう。

これが賢明な対応なのである。北陸新幹線が開業して大きな期待が寄せられているが、長野-金沢の228キロの開業に18年もの時間を費やしたことの意味を、私たちはしっかりと見つめるべきだ。

安全なものでなければならないから、中国を手放しで礼賛できないが、中国が

5倍の距離の建設・開業をたったの3年で実現したこととをよく比較する必要

がある。

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著者:植草一秀(政治経済学者)

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16:56 2015/03/15

 

 

差出人: 『大前研一ニュースの視点』メルマガ事務局

<OhmaeNews@bbt757.com>

送信日時:       2015年3月13日金曜日 8:20

宛先:   takita@po.synapse.ne.jp

件名:   KON559【シャープ・ジャパンディスプレイ・

ファミリーマート・ピジョン~プレーヤーの強

みを考える】大前研一ニュースの視点

 

 

◆━世の中どうなってんの…?大前さん!━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

『 大前研一 ニュースの視点 』

 

2015/3/13 #559

発行部数 178,727部(自社配信+まぐまぐ)

 

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

おはようございます。

ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ

問題解決力トレーニングプログラム事務局の窪田です。

 

今週の「ニュースの視点」は、

シャープ・ジャパンディスプレイ・ファミリーマート・ピジョンの話題について大前研一が解説し

ます。

 

 

★index★

-------------------------------------------------------------------  

【1】今週の ~大前研一ニュースの視点~>シャープ・ジャパンディスプレイ・ファミリーマート・ピジョン~プレーヤーの強みを考える

シャープ 連結最終赤字2000億円ジャパンディスプレイ スマホ用高精細液晶パネルファミリーマート ユニーグループHDピジョン 連結純利益89億円見通し

シャープ 連結最終赤字2000億円

ジャパンディスプレイ スマホ用高精細液晶パネル

ファミリーマート ユニーグループHD

ピジョン 連結純利益89億円見通し

-------------------------------------------------------------

▼経営実態を失ったシャープ/再建に成功したジャパンディスプレイ

経営再建中のシャープの2015年3月期連結決算で、純損益の赤字額が2千億円近くに膨らむ見通しになっていると報道されました。広島にある電子部品の4工場を閉鎖するなどリストラの追加を検討しているとのことです。

また、主要取引銀行に協力を要請し、借入金を株式に振り替えてもらい、「債務の株式化」を実施するなどで、計1750億円の資本増強を目指す考えです。シャープの再建に関しては、ファンドからの出資、工場の閉鎖、銀行借入の株式化(デッド・エクイティ・スワップ)など、色々な情報が飛び交っています。さらには、三菱自動車の救済策と同様、銀行の傀儡ベンチャー企業を立ち上げて支援するという方法もあります。

シャープの業績推移を見ると、V字回復などと言われていましたが、報道されているように2000億円の赤字を出すとすれば致命的です。おそらく、すでに「経営の実態」はなく、自ら経営ができる状態ではなくなっているのでしょう。鴻海会長の郭台銘(テリー・ゴウ)が買収交渉を再開したとも言われていますが、正直、私は厳しいと感じています。

部分的に良いところはあるでしょうが、全体として経営が崩壊しているからです。

相当厳しいリストラを敢行し、ルネサスエレクトロニクスのようになれば良いですが、現状を見ていると、しばらくの間、上昇してくるのは難しいと私は見ています。シャープとは対照的に、上手に回復を果たしたのがジャパンディスプレイです。ジャパンディスプレイは6日、石川県白山市にスマートフォン(スマホ)用の高精細液晶パネルの新工場を建設すると発表しました。投資額は1700億円で、大半を主要な納入先である米アップルが負担するとみられ、2016年夏に稼働して全社的な生産能力を2割強増やす考えです。

整理するものをきちんと整理し終えたら、アップルから供給安定を求められ、

同時に資金まで提供してもらえる状況になりました。シャープもこのようなスタイルをとることができれば良かったのですが、中途半端な立場を取ってしまったのが致命的だったのでしょう。

▼セブン-イレブンが強い理由/ピジョンの将来性は有望

国内コンビニエンスストア3位のファミリーマートと、同4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(GHD)は経営統合に向けて交渉に入るとのことです。実現すればコンビニ事業の売上高は首位のセブン-イレブン・ジャパンに次ぐ2位に浮上します。

と言っても、1店舗当たりで見ると、売上高ではセブン-イレブンが他社を圧倒しています。

セブン-イレブンの売上高は約3兆8000億円です。

ファミリーマートとサークルKサンクスを足しても約2兆8000億円で、約1兆円の開きがあります。

また、セブン-イレブンが四国に進出した際、他のコンビニからセブン-イレブンに切り替えた店舗の中には、売上が2倍近くになったところもあったそうです。重要なのは店舗数ではなく、個々の商品です。その商品力が勝負の鍵を握っています。セブン-イレブンは商品開発力が高く、おそらくメーカーにも厳しく指導しているはずです。店舗の数だけ合わせても、セブン-イレブンに追い付くのは難しいと思います。

ピジョンは2日、2016年1月期の連結純利益が前期比5%増の89億円になる見通しだと発表しました。中国向けの育児用品が貢献し、6期連続で最高益を更新するとのことです。2年以上前ですが、私はピジョンをケーススタディで取り上げ、中国への進出に可能性があることを示しました。

ここに来て、ようやく売上に利益がついてくるようになって、私の予想通りピジョンは非常に良い状況になっています。

中国では、国内製の哺乳瓶や粉ミルクよりも日本製のほうが、人気があるほどです。今後も中国市場は伸びていくでしょう。ピジョンはすでに国内の利益よりも海外のほうが大きくなっています。

 中国では一人っ子政策が緩和され、子供の数が増える傾向にあります。私が経営している大連の会社でも、1割近くの従業員が産休を活用しています。このような状況を見ても、ピジョンは非常に将来有望だと私は見ています。

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シャープ・ジャパンディスプレイ・ファミリーマート・ピジョン~プレーヤーの強みを考える

 

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★ホンダ・スカイマーク再生・雪国まいたけ~ホンダイズムの観点で考えるトップ交代

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平成27年3月16日


2015年3月25日 (水)

「植草一秀の『知られざる真実』」絶望の山に分け入り希望の石を切り出すということ 第1109号・・・ 「植草一秀の『知られざる真実』」「日曜討論」政党要件充足政党排除を許すな 第1107号NHK日曜討論に「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表の山本太郎氏が出演した。

引用井上久男「ニュースの深層」 カテゴリーアイコン  「農業特区」に見切り? 農協不要論の「新鮮組」岡本社長が、愛知・田原市長選出馬の意味・・2015年03月28。。私が鳩山さんとクリミアを訪問した理由・高野 孟氏・ 反骨の市町村 国に頼るからバカを見る 単行本(ソフトカバー)  – 2015/3/19 相川 俊英 (著) 容紹介「腸内酵素力・

http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2015/03/20150328-201531-ce43.html



「植草一秀の『知られざる真実』」絶望の山に分け入り希望の石を切り出すということ 第1109号・

人に感動を与える生き方というものがある。人間は社会的な生き物である。社会のなかで生きることを強制される。その社会が、責任あるものかといえば、そうではない。多くの人が、社会の目を背に受けて生きてゆく。社会に認められたい。社会で名を挙げたい。多くの人が、社会の目を基軸に生きようとする。しかし、その結果として、いつの間にか、自分が不在になる。

自分が何をしたいのかではなく、自分が社会にどのような姿を見せたいのかが

主軸になってしまう。しかし、社会とは本当にそれほどの価値があるものなのか。社会的地位を獲得することが人間の価値を決めることなのか。

社会が決める価値とは別に、本当の価値というものがあるのではないか。しかし、人は弱い存在であるから、「社会」という得体の知れないものにすべてを委ねてしまう。そして、その「社会」の目にすべてを奪われてしまうのである。そのような「社会の目」、「世間の目」から超越して、自分を見つめ、自分の心に忠実に生きる人々がいる。b「社会」から注目されることも、「世間」から注目されることもない。しかし、そのような「些事」には囚われない。

 

自分の心に忠実に、自分の価値判断に忠実に、生き抜く人々がいる。ノーベル賞にしても、勲章にしても、賞をもらったから偉いのか。同じ人間が、賞をもらったら偉くなり、賞を取れなかったら偉くないのか。そんな「賞」にしても、しょせんは、同じ人間が選んでいるものに過ぎない。「勲章」にしても同じ。同じ人間が選んでいる。

 

「勲章」が欲しいがために行動する人が後を絶たない。その「勲章」をもらったとしても、自分が変わるわけではない。「社会の目」、「世間の目」を意識しているだけのことである。

昨日の中日新聞(東京新聞)『こちら特報部』が京大原子炉実験所を定年退職

する小出裕章氏を特集した。

2011年3月11日の東電福島第一原発の放射能事故が起きたために小出氏が脚光を浴びることになったが、小出氏は、そのようなことにまったく関知しない。自分の信念に沿った生きざまを描き、事故が起きたあとも、その生きざまをただひたすらに貫いている。

原子力の平和利用の言葉に夢を見て原子力研究の道を選んだ。しかし、大学3年のときに、「原子力の平和利用」が誤りであることに気付いた。爾来、原子力の利用を断念させるために力を注ぎ続けた。福島の事故が起きて脚光を浴びるが、そんなことにはまったく無関係に生きる。

 

自分の内面の声にだけ忠実に生きているのである。小出氏が原子力の平和利用を欺瞞だと断じるのは、原子力利用の構造が、本質的に差別構造を内包するからである。大都市の人口密集地に原発を立地しない。過疎地に立地するのは、原発が潜在的に危険極まりない存在であるからだ。

原発事故が起こる前も、起きたあとも、原発の間近で、危険を背負いながら働

くのは、底辺の労働者だけなのである。

 

原発を推進する政治家は、原発のなかで働こうとしない。戦争の構図とまったく同じである。戦争を推進する人々は自分の身を必ず安全な場に置く。戦場に送られるのは末端の名もなき兵士であり、戦争で犠牲になるのは罪のない市民なのである。

ものごとを評価する尺度を変えるべきである。今だけ、金だけ、自分だけの価値観と、社会的評価、経済的利得だけを追求する生きざまは、重なる部分が大きい。本当の価値はそこにはない。本当の価値とは、社会的栄達、経済的利得とは離れたところにある。

強者と弱者。現実に強者と弱者が存在するのは事実である。問題は強者と弱者が存在するなかで、それを放置するのか、それとも、共存を図ることを目指すのか、の選択である。

 

生物界にも強者と弱者が存在する。そして、弱肉強食の原理が支配する。しかし、その弱肉強食は、神の摂理とも言える、自然の法則によるものである。

この弱肉強食と人間界の弱肉強食とは異なる。人間界の弱肉強食には際限がない。

自然界の弱肉強食は、神の摂理によるものであって、生存の目的を超えて、強

者が富を蓄積し、弱者の生存そのものを追い詰めることがない。ひとつの調和のなかに弱肉強食が保たれている。これに対して、人間界の弱肉強食は、とどまるところを知らない。

そして、その弱肉強食を追求する主体が、「資本」なのである。

「資本」は資本の論理に従って、際限なく利得を追求する。そして、利得のためには、弱き者の生存そのものをも追い詰めるのである。これが現代社会の特徴である。

産業革命によって人類の生産水準は飛躍的に拡大した。自由放任による経済の運営は、「神の見えざる手」によって、調和につながると考えられた。

ところが現実には、自由放任の経済運営が貧富の格差の拡大、富める者と貧し

き者の格差を際限なく拡大させることが明らかになった。

20世紀に入って、この傾向が顕著になり、いくつかの恐慌の経験をも踏まえ

て、資本主義は本格的な修正の局面を迎えた。

この時期に、一時的にではあるが、貧富の格差が縮小、是正される局面を迎え

た。

20世紀的な価値観として、「生存権」なるものが提示され、結果における平

等という概念がクローズアップされることになったのである。

ところが、この流れは永続しなかった。

1980年頃を境に、経済の運営は、結果における平等重視から、再び、自由

放任の方向に大きく振り子を戻し始めたのである。

日本においては、2001年に発足した小泉純一郎政権がこの流れを前面に押

し立てた。その後のサブプライム危機不況、年越し派遣村の教訓から、2009年に鳩山政権が樹立されるととともに、この流れに対して、一時的に是正の動きが強まったが、その是正は一時的な現象にとどまった。

菅直人政権、野田佳彦政権を経て、安倍晋三政権に至って、完全に、資本の論

理だけが優先される状況に舞い戻ってしまったのである。

社会的な評価、経済的な利得だけで、ものごとの価値を判断する浅薄な風潮が

一段と強まりつつある。結果における平等を重視し、共に生きる、共生の哲学はいま、根底から否定されようとしている。

こうした時代にあって、社会的評価、経済的利害と一線を画して、自己の内面

に誠実に生きる生き方が、改めて見直されるべきだろう。

そうした生き方の価値が、改めて見直されることになる。

多くの民は、権力とカネの力に流されやすいが、こうした時代にあっても、その風潮に抗い、人間の内面を見つめ続ける生きざまを示す人物が少なからず現

れてくる。そこに、大きな救いと、潮流転換の契機が潜んでいることだろう。きれいごとを言っているのではない。本当に大切なものは何か。

人類の将来にとって、価値あるものとは何か。根源的な問いに対する答えが、そのなかから生まれ出てくるのである。さまざまな利害が錯綜し、利害得失がすべてを支配しつつあるなかで、これらを超克した、真に価値ある生きざま、価値観が人々の心を揺さぶるときが必ず訪れると確信する。

5:03 2015/03/25


 「植草一秀の『知られざる真実』」「日曜討論」政党要件充足政党排除を許すな 第1107号NHK日曜討論に「生活の党と山本太郎となかまたち」共同代表の山本太郎氏が出演した。

NHKは不当に山本氏の日曜討論出演を拒絶してきたが、これまでの番組運営との整合性が取れておらず、不正な分組運営を続けることが出来なくなった

め、討論番組への山本氏出演を実行した。しかし、この取り扱いを今後も継続するかどうかは不透明である。出演者が多くなり、十分な討論が出来ないことを理由に、再び、出演者を絞る不正な行動に進む可能性がある。

現在のNHKの問題は、「みなさまのNHK」という表向きの看板が偽物で、「あべさまのNHK」に成り下がっている点にある。

NHKの最高意思決定機関は経営委員会で、安倍政権は放送法の規定に反して、経営委員会委員の人選を恣意的に行なっていると見られている。

 

NHK経営委員会はNHK会長を選出する人事権を有しており、安倍政権は政

治権力がNHK放送を支配するためのNHK会長人事を実行していると推察される。NHK会長は経営員会の同意を得て、NHKの経営幹部である理事を選出できる。

放送法・第五十二条 会長は、経営委員会が任命する。

2 前項の任命に当たつては、経営委員会は、委員九人以上の多数による議決

によらなければならない。

3 副会長及び理事は、経営委員会の同意を得て、会長が任命する。

NHK放送の編集に責任を持つ理事を、政権の支配下に置くとによって、NH

K放送を実体として支配してしまうことができる。

昨年4月25日に編成局長から理事に就任した井上樹彦氏の人事には安倍政権官邸が深く関与していると見られている。

 

安倍政権は番組編成担当理事を押さえることによって、NHK放送を具体的に

支配していると見られるのである。

安倍政権はイスラム国が邦人を拘束した事件に対する対応で、大きな誤りを何

重にも犯したと判断される。

この問題について、正鵠を射た、厳しい指摘を示していたのが「生活の党となかまたち」の山本太郎氏である。

NHKは日曜討論に山本太郎氏を出演させなければならなかったが、不正な理

由を付けて、山本氏の番組出演を阻止した。

このことだけで、NHKに対する受信料支払い拒否の市民運動が急拡大しておかしくない、そのような蛮行であった。

NHKは安倍政権の「政治とカネ」スキャンダルが次々と明らかになる局面でも、ニュースでこの問題を扱う比重を著しく引き下げて、国民にとって、およそ重大とは言えない大塚家具の内紛問題などに報道時間を大きく割いてきた。このようなNHKの現状に対して、適正でないと考える主権者が圧倒的多数に

なっていると思われる。

主権者は、財産権を侵害する現行の放送法規定を改定するように、政治に圧力

をかけてゆかねばならない。

 

NHK放送にスクランブルをかければ、放送受信契約を締結した者だけが受信

料を支払い、NHK放送を視聴できる。

NHK放送を視聴する意思がなく、NHK放送を実際に視聴しない市民に対して、家にテレビがあるという理由だけで放送受信料支払いを強制するのは、財産権の侵害であり、また、「強要」にも該当すると考えられる。

NHK放送にスクランブルをかけることを求め、受信契約締結を「任意制」に

移行させるべきである。このために、市民は放送受信料支払い拒否活動を展開するべきであろう。

本日のNHK放送で、山本太郎氏は、「汚染水が港湾0.3平方キロ内で完全にブロックされている」との、安倍晋三氏のIOC総会での発言が虚偽であることを明確に指摘した。これは、安倍晋三氏の対外発言であり、国際的に大きな問題になる。

安倍氏は、「アンダーコントロール」と述べたが、現実は、「アウトオブコントロール」である。雨水を通じても放射能汚染水が港湾外の大洋に直接垂れ流されている。安倍氏が虚偽発言を行ったことについて、今後、海外から厳しい批判が殺到することは間違いないと思われる。

NHKの日曜討論には、一回の発言を1分以内にするという「ルール」がある。しかし、与党出席者がしばしばこのルールを無視する。問題は、そのときに、司会者が与党出席者のルール違反は容認して、政治権力に批判的な意見を述べる出席者に対しては発言を封じることが多いことである。

およそ、中立公正からは遠くかけ離れた運営を行うのが、NHKなのである。政治権力に対して、事実に即して厳しい指摘を堂々と展開する山本太郎氏のような出演者がいて、日曜討論は初めて活性化する。与野党がテーブルの下で手を握って、予定調和の会話をしたところで、視聴者が得るものは何もない。今後も政党討論は、政党要件を満たすすべての政党の代表者を出演させて行うべきである。

私は日曜討論に数十回出演したが、討論の方式は司会者によって規定される。

私が出演したての90年代後半には、山本孝氏が司会を担当した。

このころが、もっとも適正な運営が行われていた。司会者自身が、政権与党に対しても厳しい指摘をしつつ、意義ある討論が演出されていた。ところが、小泉政権が発足したころから、NHKの姿勢が急激に委縮し始めた。裏を返せば、政治権力がメディアに対する締め付けを急激に強化し始めたということである。

小泉政権で秘書官に就任した飯島勲氏が、メディア対策に積極的であったと伝

えられている。このころから、メディア側の対応が一変した。NHKだけではない。読売テレビの対応が変わり、テレビ東京の対応が変わり、日本経済新聞の対応が激変した。NHK日曜討論では、影山日出夫氏が司会進行を担当するようになり、極端に変更した番組進行を行うようになった。その延長上で、まさに「偏向」をあからさまに展開しているのが島田敏男氏である。


島田氏は政治権力者と会食することさえ、厭わない、筋金入りの「偏向司会者」であると評価されるのではないか。日曜討論に、「一回の発言は1分以内」というルールが設定されているのは、番組の「偏向」を防ぐためのものであるが、島田氏の司会進行では、与党出席者に対しては、野党出席者の2倍の発言回数を付与するのが常になっている。

日本政治では、安倍政権与党が圧倒的な強さをが強調されるが、これは、あく

までも国会の議席数の話である。

 

衆議院では安倍政権与党が68%の議席を占有した。だから、安倍首相の「やりたい放題」が野放しにされている。しかし、昨年12月の選挙(比例代表)で、安倍政権与党に投票した有権者は、全体の24.7%に過ぎない。

全体の4分の1の支持しか得ていないのが安倍政権の実体である。

残りの4分の3はどうしたのかというと、4分の2、つまり、全有権者の半分

が選挙に行かなかった。選挙に行った半分の半分が安倍政権与党に、残りの半分が野党勢力に投票した。

野党に投じられた投票は、分散したため議席に結びつかない死票になった。

こうして見ると、安倍政権与党の繁栄は、まさに「砂上の楼閣」である。有権者の半分が選挙に行かなかったのは、行ったところで結果が大きくは変わらないと諦めたからである。

 

何が問題なのか。それは、野党がバラバラでいることが問題なのだ。安倍政権に対決する、安倍政権に正面から対峙する勢力が、ひとつにまとまり、力を結集して立ち向かえば、状況が一変する。

 

選挙に行かなかった人々も参集すれば、一気に形成を逆転できるのだ。野党の対応、人々の対応が変われば、日本政治の現状が一変するのである。

これを実行してゆかねばならない。

山本太郎氏は参議院選挙に、無所属で出馬した。組織も持たず、組織の支援をも得ず、たったひとりで、果敢に挑戦した。その山本氏を市民が支援して、東京選挙区で、堂々の当選を勝ち取ったのである。やればできるのである。

 

山本氏のケースは、一人の国会議員を生み出すプロセスだが、これを、大きく拡張して、市民が連帯して大きな政治運動を生み出すことが必要だ。

主権者の25%が結集すれば日本政治を変えられる。25%運動を展開しなければならない。日本政治を刷新するには、市民が主体的に行動しなければならないのである。

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7:46 2015/03/23


2015年3月29日 (日)

井上久男「ニュースの深層」 カテゴリーアイコン 「農業特区」に見切り? 農協不要論の「新鮮組」岡本社長が、愛知・田原市長選出馬の意味・・2015年03月28。。私が鳩山さんとクリミアを訪問した理由・高野 孟氏・ 反骨の市町村 国に頼るからバカを見る 単行本(ソフトカバー) – 2015/3/19 相川 俊英 (著) 容紹介「腸内酵素力・

引用


改革逆行国会

『週刊現代』古賀茂明「官々愕々」より

2月20日、「株式会社日本政策投資銀行法改正案」と「株式会社商工組合中央金庫法等の改正案」が国会に提出された。その前夜、ある居酒屋で経済産業省の若手官僚が、私にこう嘆いた。

「今国会での財務省と経産省の最重要案件ですからね」  「天下り。要するに天下りですよ」

日本政策投資銀行は財務省、商工中金は経産省の政策金融機関だ。建て前上は、民間の金融機関ができないことをやることになっているのだが、実際には業務が民間と重複する。また国の丸抱えなので、本来は市場で淘汰されるべき企業にまで融資ができる。その結果、税金投入が常態化するなど日本の経済構造改革を阻害してきた。おまけに官僚や族議員の利権の温床でもある。

こうした批判に応えて、小泉政権は両行の政府保有株式を全て売却し、完全民営化することにした。ちなみに、完全民営化しても、いざというときは、その都度政府が利子補給したり、緊急出資したりする仕組みさえ整えておけば、何の問題もない。

しかし、官僚と族議員たちは、リーマンショック、さらには、東日本大震災などを理由に政府が両行に随時出資できるようにするとともに、当初は「平成20年10月から5~7年後を目途」とされていた株式の完全売却期限を「平成27年4月から5~7年後を目途」と7年も先送りすることに成功していた。

政投銀も商工中金も両省にとって最重要天下り機関だ。改革のあおりを受けて、他の政府系金融機関とともに一時民間人にトップの天下りポストを明け渡してしまったが、その後、官僚に甘い安倍政権は、商工中金社長に杉山秀二元経済産業次官、日本政策金融公庫総裁に細川興一元財務次官、国際協力銀行総裁に渡辺博史元財務官を就任させた。残る政投銀も時間の問題と見られている。

しかし、官僚から見ると、これでも不安だ。何故なら、現行法のままだと、遅くとも両行は平成34年には完全民営化されてしまうからだ。

そこで、今回の法案には、政府に対して「当分の間」株式を「保有する」義務を課すと書いた。この結果、完全民営化の時期は全くわからなくなってしまった。

一方、この法案には、株式保有の必要性がなくなったら「速やかに」売却するとも書いてある。「速やかに」だから、かえって売却時期が早まるかもしれないなどという両省の言い訳を安倍政権は目をつぶって了解した。もちろん、政府が「必要だ」といい続ける限り、無期限に民営化を先送りできるから何の意味もない。

両省の事務次官にとって、天下り先確保は最優先課題だ。冒頭の経産官僚によれば、同省では、電力自由化の法案よりもこの法案の方が優先度が高いという。これほどまでに官僚の思い通りの法案が出せるとは、両省とも最初は考えていなかったかもしれない。しかし、経産省と財務省の幹部が鉄壁の協力態勢を敷けば、安倍政権も全く太刀打ちできなかった。しかも、現在の国会では与党が衆参で過半数を占めるから法案は通ったも同然。官僚側の完全勝利だ。

安倍総理は、今国会を「改革断行国会」と名づけ、施政方針演説で、「知と行は二つにして一つ」という吉田松陰の言葉を引用し、「求められていることは・・・・・・『改革の断行』であります」と声高らかに謳いあげた。

しかし、今回の民営化先送りは、改革とは正反対の動きだ。引用された吉田松陰先生もさぞかし迷惑なことだろう。安倍総理は、今国会を「改革断行国会」から「改革逆行国会」に改名すべきだ。

『週刊現代』2015年3月28日号より

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/42543 9:14 2015/03/29



井上久男「ニュースの深層」 カテゴリーアイコン  「農業特区」に見切り? 農協不要論の「新鮮組」岡本社長が、愛知・田原市長選出馬の意味・・2015年03月28日(土) 井上 久男

 井上久男「ニュースの深層」著者紹介

売上高で日本最大の農協はどこかと聞かれ、農協関係者以外で答えられる人はおそらくいないだろう。正解は愛知県田原市にある「JA愛知みなみ」だ。

 

田原市は、先端に伊良湖岬がある渥美半島に位置する。温暖な気候で、ブロッコリーやキャベツなどの日本有数の産地だ。菊の栽培も盛んだ。当地の「電照菊」(温室内で電灯の光を当てながら促成栽培する菊)は社会科の教科書で紹介されたこともある。菊は葬儀で用いられることなどから年中需要がある。

 

この田原市には、トヨタ自動車本体で国内最大の田原工場もある。同社の最高級ブランド「レクサス」のマザー工場だ。

 

「農協職員のための農協は不要」が持論の市長候補

 

裕福な農家が多いことと、「トヨタ効果」によって、田原市はとても豊かな地域である。一方、裕福な田舎にありがちな排他的、保守的な土地柄でもある。筆者は、今から23年前、新聞記者としての初任地が田原市に隣接する豊橋支局だったご縁で、今でも農業関係の取材に出向くことがある。

岡本重明「新鮮組」社長

 

この保守的な土地柄で、約30年前から農協不要論を唱えてきたのが、有限会社「新鮮組」の岡本重明社長(53)だ。

 

野菜のほか大規模稲作を展開し、今ではタイやインドネシアでコシヒカリ栽培の指導もしている。

 

最近でこそ、安倍政権の農業改革によってJA全中の権限が剥奪されるなど、農協のあり方を巡って国民の注目が集まったが、こうした地域で30年近く前から農協不要論を正々堂々と唱えていたこと自体が珍しい。

 

岡本氏が唱える農協不要論のポイントは、「農家や地域の発展のための農協なら必要だが、農協職員のための農協なら不要」という点にある。

 

農協は、専業農家ではない職員の安定的な就職先として、寄らば大樹あるいは公務員的な仕事をする組織であるならば不要ということでもある。この考え方は今でも首尾一貫している。

若いころから岡本氏は、販売増とコスト管理を意識して、農協に頼らず野菜の販売先を自分で開拓し、借り入れも農協ではなく事業計画書を書いて都市銀行などから借りてきた。

 

土の改良剤やトラクターの爪など、農協・メーカー経由で買えば高いものを回避するため、自らリスクを取って海外に出向き、品質は同等で価格が安い資材を仕入れてきた。そして、それを自分が使うだけではなく販売するビジネスも手掛けてきた。

 

たとえば、花き農家が農薬の効かないウィルスに悩んでいることを知ると、欧米では使用が求められている「二酸化塩素」を輸入して2009年から販売を始めた。これは耐性菌を生まない消毒薬で、日本でも滞留性が少ないとして食品添加物として認められている。岡本氏は農水省に農薬として登録が必要な農薬ではなく、水を殺菌する資材として販売に踏み切った。病気に苦しむキク農家から高い評価を受けた。

 

営利事業だけではなく、岡本氏は自分が持つ水耕栽培の特許技術を地元で障害者を雇用しているNPOや山口県内の福祉法人に貸している。この水耕栽培で作った野菜を販売することで身障者らの自立に少しでも貢献したい考えだった。

 

 コメ1俵が「コンビニおにぎり」にもたらす付加価値

 

岡本氏の行動は、「変人農家」とみなされ、また「村の和」を乱すものとして、家族までもがいじめにあったり、岡本氏の事業を邪魔するための「嫌がらせ訴訟」なども受けてきたりしたが、最近では「岡本のやっていることは意外と正しいぞ」といった声も地元でも起こり始めていた。

 

この5、6年で大きく世の中の流れも大きく変化した。裕福な農業地帯でも資材の高騰や販売の低迷、高齢化による後継者難などによって、「棄農」が出始めた。こうした変化を背景に、密かに岡本氏に経営ノウハウを聞きにくる農協職員や農家も現れ始めたのである。

 

また、岡本氏の著書『農協との「30年戦争」』(文春新書)を読んだ菅義偉官房長官が知人を経由して、岡本氏と接触、農業改革のブレーンの一人として活用してきた。

昨年5月に国家戦略特区(農業特区)に指定された兵庫県養父市に「新鮮組」が進出する構想もある。

 

その岡本氏が4月26日に投開票される田原市長選挙に立候補することが決まった。岡本氏らしく破天荒でユニークな選挙戦略で挑んでおり、興味深い。また、この選挙戦からは、日本が抱える構造的な課題も垣間見える。詳細は後述するが、それは、「中央vs.地方」である。

 

「地方の既得権を壊したい。今回の選挙は、私の政策vs.地方の大組織だと思っています」。2月12日に立候補表明した岡本氏はこう語った。

岡本氏が表明した政策の中心には、渥美半島内に「産直広場兼バスステーション」を置くことが掲げられている。

 

これは、田原市内の個人商店や農業・漁業従事者が販売方法を幅広く選択できるために設ける施設で、イメージとしては「道の駅」のようなものだ。そして、その販売施設を巡回し、主要駅にまでつながる新たなバス網を第三セクターで構築する考えだ。販売施設で上がった収益を、バス運営の資金に充てる戦略でもある。

一見、この政策は陳腐なようにも見えるが、実は多くの課題を解決する「秘策」が含まれている。岡本氏は農業政策を語る時によく「米1俵(60㎏)から、コンビニのおにぎり何個取れるか知っていますか?」と尋ねる。

 

ほとんど答えられる人はいないが、答えは約1400個。1個100円程度で売られているので、コンビニが得る売上高は米1俵から約14万円である。これに対して米農家が1俵売って得られるのは今の相場では1万円にも満たない。この差額「13万円」の付加価値が農業以外に流れていることに注目すべき、と岡本氏は言いたいのだ。

 

渥美半島ではあさりも獲れて、あさりご飯の弁当が高く売られているが、地元以外の業者にその付加価値が流れているそうだ。そうした付加価値を地元で取り戻していくための販売施設でもある。冷凍技術が発達した現在では、お節料理でも輸出できる。

 

そうしたノウハウを生かして、地元食材を使った弁当を輸出する構想もある。岡本氏はこれを「ふるさと弁当構想」と呼び、これによって新たな雇用なども地元で創出できると見ている。

 

トヨタ依存からの構造転換も目指す

 

施設とバス網を関連付ける狙いは、地方の公共交通網の維持整備のためだ。渥美半島でも過疎化が進み、限界集落のようなところも出始めている。交通網がなければ、学生は通学できず、運転できない高齢者ら住人は買い物にも行けないので、ますます人が住まなくなる。これでは「故郷が破壊されてしまう」と岡本氏は危機感を募らせている。この危機感も市長選出馬への大きな動機となった。

 

こうした課題に対して現在の田原市政は「コンパクトシティー構想」を掲げて、街の中心部に施設などを集約して効率的な街づくりを目指す考えだ。岡本氏はこれではますます、「地方での一極集中」が進むと見る。

 

トヨタに依存する市の財政からの構造転換も岡本氏は訴える。企業誘致で地方を繁栄させる考えは時代遅れと岡本氏は考えている。グローバル経済の中で活動するトヨタの経営にはリスクが付き物。パナソニックですらサムスンなどとの競争に敗れて、行政からの補助金も受けて新たに投資して建設したばかりの大阪尼崎工場(プラズマ)や兵庫姫路工場(液晶)から撤退し、償却してしまった。

 

「田原市の財源は渥美半島にある農産物などの豊かな資源を活用して、事業を興し、自ら賄っていく考えが重要になる」と、岡本氏は訴え、国を支えながらも、国に頼らない地方自治体をつくりたい考えだ。

しかし、こうした政策に取り組もうとすると、既存のバス網を持つ地方のバス会社などが反対に出る。農家が新たな販売網を持つことに農協も協力しない。こうした企業や農協は自民党の有力支持者である。地方の既得権の多くは自民党の支持者。こうした人たちは、同じく立候補を表明している元田原市議会副議長の北野谷一樹氏や元同市教育部長の山下政良氏を推すと見られる。

 

特区「養父市」からの撤退に政府筋もあわてて

 

また、岡本氏の政策には規制緩和も必要になる。それがないと、施設での販売が難しいケースも想定される。たとえば、農家が自家製の野菜を使って屋外の窯で焼いた焼きたてのピザを売る場合、愛知県ではピザの窯は防火施設のある屋内にしか設置できない条例がある。まず、こうしたことから規制緩和しなければならないが、岡本氏によると、愛知県は前向きではないという。バス路線の新設にも許認可が必要だ。

 

前述したが、岡本氏は農業特区の養父市に進出、そこでまず「ふるさと弁当構想」を展開して、そのノウハウを田原市に持ち帰る計画だった。

 

しかし、特区に認定されたものの、当の養父市にやる気と能力がなく、まったく計画が進まない状況に追い込まれた。岡本氏は業を煮やしていったんは養父市からの撤退を検討、田原市長選挙への出馬を優先させた。慌てた政府筋から引き留められた経緯がある。

 

こうしたことからも分かるように、安倍政権の目玉政策でありながら、地方自治体はそれをやる力がなく、今のままでは中央政府による「絵に描いた餅」に終わりかねない。

 

今年1月に投開票された佐賀県知事選挙でも、安倍政権が推す規制改革などを重視している候補が、地元農協や地元自民党が支持する候補に敗れた。結局は、「安倍自民党」と地方利権は「同床異夢」であることが分かった。

 

岡本氏が考える田原市政改革も、安倍政権が進める規制緩和や、各地域で特色ある経営ができる農業の推進などともマッチしているが、佐賀県知事選挙と同様に自民党支持者であるはずの地方組織や地方の利権団体がその前に立ちはだかっている構図だ。

 

地方経済の再生、地方の自立を成し遂げていくためには、安倍政権は自助努力を怠った地方の既得権を潰すことにも注力すべではないか。岡本氏の活動から見えてきた課題だ。

8:46 2015/03/29  

山形屋ポイント


私が鳩山さんとクリミアを訪問した理由・高野 孟氏(ジャーナリスト).マル激トーク・オン・ディマンド 第729回.

「国賊!」「売国奴!」クリミアを訪問した鳩山由紀夫元首相が、メディアから罵詈雑言を浴びる激しいバッシングに遭っている。鳩山氏のクリミア訪問については実弟の鳩山邦夫氏までが「宇宙人になった」と酷評するなど、まさに日本ではフルぼっこ状態だが、何が問題だったのかと言えば、要するに「けしからん罪」ということのようだ。

日本政府はロシアによるクリミアの編入を認めていない。そのクリミアにロシアのビザを取得して入国すれば、ロシアの「力による現状変更」を追認することになり、それは中国との間に尖閣問題を抱える日本にとっても他人事では済まされない。ましてや、元首相が政府の方針に反する行動を取るとは何事か、というわけだ。

一国のリーダーの退任後の身の処し方についてはいろいろ意見もあろう。小泉純一郎元首相のように公然と政府の原発政策に反旗を翻すケースもあるだろうし、森喜朗元首相のように、政府の意を受けて、対露外交やオリンピックの招致などで政権を援護射撃する場合もあり得るだろう。アメリカのカーター元大統領も、政府とは一線を画した立場から民間外交に奔走したことで知られる。

しかし、今回の鳩山元首相のクリミア訪問には少なくとも一つ、重要かつ正当な目的があった。そして、それはその訪問自体が正しいことなのかどうかを判断するための情報を得ることだったと言っていいだろう。

クリミアの現状を知るためには、現在クリミアを実効支配するロシアが発行するビザが必要になる。しかし、ロシアのビザを取得すれば現状を追認することになるからダメだということになると、そもそも「現状」がどうなっているかを知ることが事実上不可能になってしまう。

 鳩山氏は日本で広く報道されているように、クリミアが軍事力によって強制的にロシアに編入され、クリミアの人々は自分たちの意思に反してロシアの支配下に置かれているのかどうかを、実際に現地に入り、自身の目で確かめに行ったのだということだった。

 クリミアのロシア編入に際して、ロシアの後ろ盾を受けたクリミア自治共和国政府は昨年3月にロシアへの編入を問う住民投票を実施し、97%の賛成を得た上で、自主的にロシアへの編入を決めていた。しかし、アメリカやEU諸国は、この投票にはタタール人などの少数民族が参加していなかったほか、投票に参加した人たちも、ロシア系の武装勢力の監視下に置かれていたため、真に民主的な住民投票ではなかったと主張し、その結果を認めていなかった。

 日本政府もまたアメリカに追随する形で、クリミアのロシア編入を「力による現状変更」であり国際法違反であるとの立場を取り、対露制裁に加わっていた。

 今回の鳩山氏のクリミア訪問に同行したジャーナリストの高野孟氏は、これまで日本で伝えられてきたウクライナの政変、とりわけクリミア情勢についての情報は、そのほとんどが欧米、特にアメリカの視点からの情報に限定されていると言う。それはクリミア問題では全面的にロシアが悪であり、ロシアの行為は国際社会では容認できない不法行為だという視点だ。

 しかし、実際に対露制裁に参加している国は、ウクライナに隣接し、ウクライナ情勢から直接の影響を受けるEU諸国の他、アメリカ、カナダ、オーストラリアなど、一部のアメリカの同盟国に限られており、世界がこぞってロシアを批判しているというわけではない。中国は無論のこと、北朝鮮問題を抱え、対米関係で日本と似たような微妙な立場にある韓国も、制裁には加わっていない。

 一方で今回日本が対露制裁に加わったことで、これまで安倍首相自らが積み上げてきたロシアとの友好関係に少なからずひびが入ったことは間違いない。クリミア情勢はこれまで日本が積み上げてきたロシアとの友好関係を危険に晒し、北方領土問題解決の機運に水を差してまで、どうしても日本が対露制裁に加わらなければならないほど緊迫した状態にあるのか。それを確認することが、鳩山氏らのクリミア訪問の目的だった。

 高野氏はそもそもクリミアは歴史的にロシアの領土であり、住民の6割近くをロシア系住民が占めていることから、拙速に行われた住民投票の正当性に多少の疑義があるとしても、クリミアがロシアに帰属すること自体は自然な流れだと考えるべきだと言う。

 むしろ、遙かに深刻なのは、もっぱらアメリカに追随する形で、思考停止をしたまま対露制裁に加わる日本の外交的スタンスと、これに何の疑問も呈さないマスメディアや日本の言論空間だ。

 ロシアとアメリカの間にはもはや冷戦時代のようなイデオロギー上の対立は存在しない。アメリカの一部、とりわけネオコンと呼ばれる原理主義的保守勢力の間では、ロシア異質論が根強いが、アメリカの対ロシア、対ウクライナ政策はむしろ経済利権、エネルギー利権の動機付けによって突き動かされている面が強いと見られる。

 そのような状況の下で、日本が単にアメリカ追随を目的に、対露政策に加わることが、日本にとって得なのか損なのか。いや、損得以前に、そもそもそのような国益判断が行われたかどうかさえ疑わしい。

 クリミア情勢に対する日本の政治的な立場には、日本なりの合理的判断があるのか。そもそも世論の中に異論や少数意見を包摂できない日本に、合理的な外交や合理的な政策判断を下すだけの成熟した民度があるのか。クリミア情勢と鳩山叩きから見えてくる日本外交の問題点や言論空間の貧困さについて、宮台真司氏に代わり司会を務めた国際政治学者の廣瀬陽子氏とジャーナリストの神保哲生が、鳩山元首相に同行してクリミアを訪問したゲストの高野孟氏と考えた。

高野 孟たかの はじめ(ジャーナリスト)

 

1944年東京都生まれ。68年早稲田大学文学部卒業。通信社、広告会社勤務などを経て75年からフリー。80年インサイダーを設立し代表兼編集長に就任。オンラインで『東京万華鏡』、『ざ・こもんず』、『THE JOURNAL』などを主 宰。サイバー大学客員教授を兼任。著書に『沖縄に海兵隊はいらない!』、『原発ゼロ社会への道程』、共著に『ウクライナ危機の実相と日露関係』など。

廣瀬 陽子ひろせ ようこ(慶應義塾大学総合政策学部准教授)

 

1972年東京都生まれ。95年慶應義塾大学総合政策学部卒業。2001年東京大学大学院博士課程単位取得退学。日本学術振興会特別研究員、東京外国語大学大学院准教授、静岡県立大学国際関係学部准教授などを経て10年より現職。博士(政策・メディア)。著書に『未承認国家と覇権なき世界』、『ロシア 苦悩する大国、多極化する世界』など。

 2014年03月29日

20:17 2015/03/28  

弁護士ドットコム・


反骨の市町村 国に頼るからバカを見る 単行本(ソフトカバー)  – 2015/3/19 相川 俊英 (著) 容紹介

 アベノミクスの「地方創生」は画に描いた餅!

このままでは国土は強靭化どころか弱体化し、多くの市町村が破綻・消滅する!

出生率の低下、東京一極集中で、2040年には市町村が半減すると言われている。

これは地方自治体の多くが、中央官庁お仕着せの政策とばらまかれる補助金、すなわち「タリキ(他力)」に頼ってきたツケに他ならない。一方で、国に頼らず独自のアイディアと取り組み(「ジリキ(自力)」)で自治体の再生・活性化を成功させた「奇跡の市や村や町」がある。

過疎化から人口増に逆転させた村、シャッター商店街をよみがえらせた町……。

彼らはいかにして自分たちを守り、未来を切り開いたのか。その奇策とは!?

ローカルアベノミクスのまやかしに警鐘を鳴らす地方自治取材のスペシャリストが、地方再生の特効薬「ジリキ(自力)ノミクス」を提唱する!

「自律度」「豊かさ度」「税納付率」「投票率」ほか独自集計の市町村ランキングも多数掲載。

 お仕着せの政策とばらまかれる補助金では地方創生などできない!わが道を行く「ジリキ(自力)ノミクス」でよみがえった自治体、それぞれの奇策とは!? 単行本(ソフトカバー): 226ページ出版社: 講談社 (2015/3/19)

言語: 日本語発売日: 2015/3/19

目次

第1章 お任せ民主主義「タリキノミクス」が日本をダメにした(行政、住民、政治の「じゃんけん」自治体は「分譲マンション」タリキノミクスとジリキノミクス ほか)

第2章 納税者が知るべき「自律度」ランキング(独自に全市町村をランキング

「財政自律度」ランキング「住民1人当たりの借金残高」ランキング ほか)

第3章 後悔先に立たず「タリキノミクス」の落とし穴(「豊かな自治体」の顔ぶれ~「財政力指数」ランキングカネが溢れていても人が増えない~“「財政力指数」ベストワン”愛知県飛鳥村財政難から富裕村へと大変貌 ほか)

第4章 実録「ジリキノミクス」で実現した豊かな暮らし(ジリキノミクスへの取り組み

村を蘇らせた「働く公務員」~“「崖っぷち型」ジリキノミクス”福島県泉崎村

「奇跡の村」の役場改角に学ぶ ほか)

第5章 「ローカル・アベノミクス」に騙されるな(これまでの公共事業ちこれからの公共事業なぜ「タリキノミクス型」が多いのか加速する土建政治の十倍返し ほか)

第6章 地方創生の特効薬とは何か(地域活性策の「失敗の歴史」地域活性化予算を虚しく消化スローガンで終わる地域活性 ほか)

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19:50 2015/03/28

 


「腸内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない (講談社+α新書) 新書  – 2015/2/20高畑 宗明 (著) 内容紹介

 アメリカで権威ある専門家が選ぶ「ベスト・オブ・サプリメント・アワード」を2008年から6回受賞するなど、腸内細菌の研究で活躍を期待される著者、高畑宗明さん。

近年ますます、日本人の腸内環境が悪化の一途をたどっていることに、高畑さんは大きな危惧を抱いています。たとえば大腸がんの場合、1955年の死亡率が今では約10倍となり、女性は大腸がんが死亡原因の第1位(男性は第3位)。

このほか、アレルギーやアトピー、骨粗鬆症、肥満、動脈硬化、全身のがん、そしてうつや認知症と、腸と関係のある病は数知れません。そのカギを握るのが腸内細菌、善玉菌の増加イコール病気にならない体になることだと本書でわかるでしょう。つまり、善玉菌が出す「酵素」が健康の大きなカギ。

ただ、今この「酵素」の間違った情報が蔓延しています。スムージーなど酵素食品も直接酵素になるわけではないなど、具体的な指摘も記すとともに、腸内環境を整え善玉菌を増やす習慣を具体的にご紹介しています。

内容(「BOOK」データベースより) 間違った酵素健康法にだまされるな!日々の習慣で「若さと長生き」を実現しよう!アメリカで権威ある専門家が選ぶ「ベスト・オブ・サプリメント・アワード」6度受賞!酵素研究の最先端をいく著者が、「腸内酵素力」の上げ方を伝授。

新書: 192ページ出版社: 講談社 (2015/2/20)

言語: 日本語・発売日: 2015/2/20

目次

第1章 若さと健康のカギは善玉菌の「酵素」にある

第2章 がんなどの病気も腸内環境の悪化が引き金だった

第3章 腸内酵素で根本から「アンチエイジング」

第4章 うつ、ボケも腸内酵素で改善できる

第5章 あなたの腸の問題を解決! タイプ別腸診断

第6章 酵素力の上げ方がまとめてわかるQ&A

 酵素は大事…だけど正しく理解しないと意味がないんだ, 2015/2/24

「腸内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない (講談社+α新書) (新書)  

酵素は人体で、しかも腸で圧倒的につくられる量が多い。だから酵素を飲んでも、体内の酵素が即増えるわけではない…

グリーンスムージーは、体には悪くないんですよ。便秘にもちろん効果的。

でもタンパク質を食べることと一緒だったのですって。

ショックですが、いろいろと目を覚まさせてもらった感じです。

だからこそ酵素は本当に健康に大切

そしてそのために腸内環境を整える必然性を学びました。

エセ科学にビシ!っと、書いてある側面があります。「○○を食べればすぐ解決!」という単純な解説書ではありません。でも小難しくなく、楽しく読めました。

5.0  「腸」と「酵素」を正しく理解するためのバイブル, 2015/3/1

レビュー対象商品: 「腸内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない (講談社+α新書) (新書)

先日、1年前まで健康そのものだった知人の父親が大腸がんで突然亡くなり、腸の健康について関心を持った時に出会ったのが本書でした。

とても読みやすくて、一気に読んでしまいました。

 

腸は体の免疫細胞の内70%が集中しているとても重要な臓器とのこと。

「口は門、腸は玄関のような関係」と例えてあり納得、

玄関でしっかりセキュリティしとかないと、悪いものが入ってきちゃいますもんね。

 

「便秘」により悪玉菌が増えることで、大腸がんや過敏性腸症候群などの様々な病気の原因になっていると知り、今まで便秘を軽く考えていた自分を反省。

今後は本書を教科書にして「腸内酵素力」をしっかりと考えた食生活を心がけたいと思います。 先ほど、健康に無頓着な両親にも1冊贈りました。

 (最近流行りのグリーンスムージや酵素ドリンクで酵素を直接摂り入れても意味が無いというのは衝撃でした・・・著者の高畑博士が研究されている酵素サプリが気になります)

 

 

   レビュー対象商品: ≪町内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない (講談社+α新書) (新書)

 タイトルには「ボケもがんも」とありますが、ボケやがんだけでなく、精神的なイライラやうつ、アトピーや花粉症に至るまで、腸内環境が関係していること、その上で、腸内環境を整えることが健康で美しく生きるためには重要である、ということがとても分かり易く書かれていました。

最近話題の「酵素」がどういったもので、身体の中でどんな役割をしてるのか初めてちゃんと理解できた気がします。

きちんと科学的根拠に基づいて書かれているのにも好感が持てました。

年配の方だけでなく、子育て中のお母さんや、美容に興味のある方も、読んでおいて損はないと思います!

: 「腸内酵素力」で、ボケもがんも寄りつかない (講談社+α新書) (新書)

 そんなに難しくもなく病院の待合室でサッと読めて、おもしろい本です。

20:09 2015/03/28

 


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