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2015年3月18日 (水)

なぜ小渕優子前経産相は「収支がわからない」のか?国会議員事務所のお財布事情と政治家の“哀しい性”――松井雅博・現役国会議員政策担当秘書・NPO政党政治・大前さん。

引用 


なぜ小渕優子前経産相は「収支がわからない」のか?国会議員事務所のお財布事情と政治家の“哀しい性”――松井雅博・現役国会議員政策担当秘書

 松井雅博[現役国会議員政策担当秘書]

 2014年10月21日 著者・コラム紹介バックナンバー

 初歩的ミスで辞任した安倍政権の華、小渕優子議員

女性初の首相候補とも言われていた小渕氏だったが―― Photo:Natsuki Sakai/AFLO

10月20日、小渕優子・経済産業大臣が辞表を提出した。34歳で初入閣を果たし、40歳で二度目の入閣。将来は女性初の総理大臣も夢ではないと目されていただけに、衝撃は大きい。自身の資金管理団体から高級ブランドなどへの多額の支払いが見つかっただけでなく、有権者に対する「利益供与」とも見られる不明瞭な会計も発覚し、「世論を納得させられない」と辞任を判断した。

一方、同日、松島みどり・法務大臣も辞意を表明した。自らの選挙区で「うちわ」を配布したことを国会で野党から追及され、公選法違反を指摘された。その後の失言もマスコミを賑わせ、事態をさらに悪化させてしまった。

この相次ぐ2人の女性大臣の辞任の理由は、実は同じである。「有権者への利益供与」だ。あまり知られていないことだが、政治家は「モノをもらう」ことよりも「モノをあげる」ことの方が厳しく律せられている。

それにしても、小渕優子議員は、小渕恵三総理大臣の娘であり、自身もTBSの記者を務めていた経験を持つ。若いとは言え、政治の「素人」では全くないはずである。松島みどり大臣も東京大学経済学部を卒業後、朝日新聞で政治部の記者として活躍しており、それくらいの見識が無かったはずはない。そんな彼女たちでさえ、「初歩的」とも言えるような過ちで辞任騒動を引き起こしてしまう。一体、政治の世界にはどのような魔物が潜んでいるのか。よほど制度が複雑なのか、強いしがらみがあるのか。

筆者はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、国会議員政策担当秘書として政治の世界へ飛び込んだ。与野党の国会議員事務所で働き始めて2年以上が経った。普段は国会事務所で委員会質疑資料作成や陳情処理などを担当しつつ、地元で選対本部長として選挙をマネジメントした経験も持つ。カネ勘定も含めた国政の「実務」を知る立場から、国会議員事務所のお財布事情と、有権者からは見えづらい、政治家の生態を解説する。

国会議員のカネの入りを解説! 年間活動費は約2500万円

国会議員本人および事務所でのカネの出入りは、多くの人にとってわかりにくいものだろう。まず、カネの「入」の方から解説しよう。

国会議員が「所得」として報告するものには、歳費(月額129万4000円〈注1〉)と期末手当(553万5085円〈注2〉)がある。したがって、一般の国会議員の税引き後の年収は、手取りでおよそ1400万円程度となり、毎年公開されている所得・資産公開の数字〈注3〉)を見ても、多くの議員はこの程度の金額が所得の欄に並んでいる。

加えて、議会の役職についている議員には、議会雑費(非課税)として日額6000円が支払われる。200日議会が開かれていれば、単純計算で120万円がもらえることになる。また、入閣すれば年収の額が変わる。ただし、日本の場合、大臣になったからといって、大幅に給料が跳ね上がるわけではない。

一方、議員個人の年収としてではなく、活動費として支払われるカネとして文書通信費(非課税)が月額100万円、年額で1200万円支払われる。また、政党を介して政党交付金・立法事務費が支払われる。党を介するため、政党によって事情が違うが、議員個人にも年間1000万円以上の金額が支払われることが一般的である。

これ以外で活動費が必要な場合は、政治資金パーティを開催してみたり、寄附を募ってみたりするわけだが、正直、このご時世、パーティやら寄附やらで多額のお金を集められる議員はごくわずかだと思う。

ほとんどの議員は、文書通信費と政党からの助成金の年間合計2500万円程度で活動しているのが一般的と言えるだろう。こうした議員の活動をする際に使うカネはすべて「資金管理団体」に登録した一つの会計口座で管理することが義務付けられている。

 

注1:議長は月額217万円。副議長は158万4000円。

 注2:期末手当については、12月10日に支払われる金額290万8265円が公務員給与の引き上げに伴って増額されることが現在検討されている。

 注3:実際の所得・資産公開では税引き前、税額控除(245万円)後の数字が掲載されている。

議員の雑務は多岐にわたる公設秘書三人でも手は足りない

年収が手取りで1400万円、活動費は2500万円。それに加えて交通費は無料(JRのみ)、飛行機はクーポンがもらえ、公設秘書は3人公費で雇うことができる。これだけを聞くと、「国会議員はいい待遇だな」と思う人もいるかもしれない。

しかし、こんな多額のカネ(もちろん原資は税金)は、具体的にいったい何に使われているのだろうか。カネの「出」について、具体的に説明しよう。

まず、最もカネがかかるのは「人件費」だ。これは民間企業でも同じことだろう。人を1人雇うのに月給25万円を支払ったとしても、社会保険なども含めると年間300万円程度は必要になるだろう。地元で2人、国会事務所でアシスタントを1人雇えば、900万円かかる計算になる。

「税金で秘書を3人雇えるのに、私設秘書も必要なのか」と首を傾げる方もいるかもしれないが、政治家事務所の仕事は多岐にわたる。地元事務所であれば、チラシを配ったりポスターを貼ったりするような単純労務、さまざまな会合に参加して有権者や団体と直にコミュニケーションする仕事、車の運転や議員の随行、電話番やら資料作成と、時間をとられる仕事はいくらでもある。

有権者からしてみれば「年に一度の陳情」や「たまには一言、言ってやろう!」でも、政治家事務所からしてみれば、毎日のように電話が鳴り、激励やお叱りの言葉も含めて有権者の方々との対話に時間を使わねばならない。

国会事務所であれば、国会開会時には、当然議論の内容は常にウォッチしていなければならないし、事務所には訪問者も多い。官僚からのレクチャーや政策についての勉強会などへの参加を1人でこなそうとすると、事務所が留守になってしまう。

朝は8時前には出勤して会議に出席し、議員の代理で講演を任されることもあり、夜はパーティや会合に参加することも多い。何より、政策担当秘書の仕事は「考える」ことでもあるので、1人で考えを巡らせる時間も欲しい。そうなると、どうしてもアシスタントが必要になってしまうのである。

もちろん、私設秘書を雇うかどうかは議員本人の判断なので、選挙区が東京に近い議員は政策秘書にも地元まわりを兼務させたり、事務所を一本化してアシスタントを集約したりすることで人件費を抑制している例もある。

支援者に「割り勘で」と言えるか議員の職業病と“哀しき性”次にお金がかかる費目は、会合参加費・飲食費だろう。

国会議員の重要な仕事の一つに「国民の声を拾う」ことが挙げられる。しかし、駅前で演説していても国民の声など拾えるわけがない。さまざまな会合や勉強会などに参加したり、直接会って話をすることで、「今の有権者はこういう風に考えているんだ」と肌で知ることは極めて重要なことだ。

しかし、それにはどうしてもお金がかかってしまうのも現実なのだ。人と会って話をするのに、食事もお茶も無く向かい合って話をするということは、考えにくい。また、選挙で自分を支援し、国政に送り出してくれた有権者と話をしながら食事をした場合、「では、割り勘でお願いします」とはなかなか言えるものではない。これはビジネス界で活躍している方であれば、想像できるのではないだろうか。

また、冠婚葬祭への参加も多い。議員に対してよくある批判に「国会議員は呼ばれてもいない結婚式に参加して票を稼いでいる!」というものがある。

しかし、よく考えてみてほしい。呼ばれてもいないのに結婚式や葬式に参列することなどできるはずがない。国会議員は職業柄どうしても顔が広くなってしまう職業なので、応援してくれた人が結婚した、関係者が亡くなったとなると、必然的に電報を送ったり参加することになる。

結婚披露宴のご祝儀の相場は3万円と言われているが、「国会議員だし、3万円とはいかない」という心理が働くのも事実で、5万円、場合によっては10万円は包まざるを得なくなる。

これは人によって異なると思うが、真面目に活動すればするほど、毎日誰かと食事を共にしたり、会合に参加したりすることになるので、おそらく年間300~500万円程度は必要になってしまうのではなかろうか。

会合に出ること、有権者とのコミュニケーションは議員としての大事な仕事であり、それによって人脈が広がるのは“職業病”と表現できるだろう。そして、有権者との食事を含む会合などで「相手に払わせられない」という心理が働くことは、議員の“哀しい性”でもある。

ちなみに、筆者は政治家ではなく、単なる秘書であるが、すでに結婚式には100回以上出席し、300万円以上のお金を自腹で支払っている。これもまた議員同様、人脈が広くなってしまうことに起因する“職業病”なのである。

若者とお年寄りの将来に起こることとは? 議員と深い付き合いを持ちやすい年齢層 若者とお年寄りの将来に起こることとは?

また、政治家の周りに集まる人の層の特性も関係していると思う。選挙事務所に何日かいればわかることだが、国会議員の事務所に集う人の年齢層は、20代前半の若者か定年後の高齢者が多い。その2つの層の共通点は「時間に余裕がある」こと。そして、彼らと深い関係を築くということは、数年後に結婚式や葬式に出席する機会が生じる可能性が高いということでもある(不謹慎な言い方かもしれないが)。

小渕優子議員は会見の中でこう述べていた。

「ベビー用品を購入したのは県外の方の出産祝いや誕生祝いの社交儀礼、化粧品、服飾品は海外出張のお土産として購入しお渡ししたものでした。一部報道では関係者に品物を送るのはポケットマネーで行うべきとの指摘がありますが、会社や団体が経費で社交儀礼をするのと同じく、政治家が人脈を広げていくことは重要な政治活動であり政治活動の経費として認められるものと思う」

小渕議員は「女性の活躍」の代名詞とも言えるような存在だった。もし、100人の若い女性が小渕議員の支援をしていたと仮定しよう。その後、年ごろの彼女たちが続々と結婚・出産したならば、小渕議員が「何か贈り物をしなくちゃ」と考えるのも自然なことかもしれない。さらに、「一応大臣を務めた国会議員だし、安っぽいものを贈るのもなぁ」と5万円のベビーカーを贈ったとするならば、百万円単位での出費となる。

今回、問題となった金額は数千万円単位で、額の大きさが注目を集めたが、政策秘書として、国会議員のカネの出入りを見ている筆者からすれば、小渕優子議員ほどの大物議員になれば、ありえない数字ではない、と感じている。

他にも、チラシ・ポスターの印刷代・配布代(およそ200万円)、東京での議員宿舎の家賃(年間およそ120万円)、事務所の電気・水道・ガス・NHK、コピー機、新聞代などを合わせれば、年間500万円は下らない。

ベテラン議員が犯した初歩的なミスの背景にある3つの要因

国会議員のお財布は主に2つの法律によって明朗にされることが義務付けられている。

1つは、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」。これに基づき、国会議員は毎年、所得と資産を報告することになっている。春になると、新聞でも一覧が報道されている。

もう1つが、「政治資金規正法」。これに基づき、国会議員は収支報告書と政党交付金使途等報告書(注4)を作成し、公開することが義務付けられている。今回の小渕優子議員の事件も収支報告書で「公開された情報」から事実が発覚している。さらに、今国会において、維新の党は毎月入る文書通信費についても使い道を公開する方針を掲げており、議員立法で法案を提出する構えだ。

しかし、ここまでやってもなお「初歩的なミス」が生じるのはなぜなのか。政治家がカネがらみのスキャンダルで辞任するというニュースは、今に始まったことではない。

要因は3つ挙げられるのではないだろうか。まず、政治の世界に集まる人の質である。つまり、プロフェッショナルとして議員秘書を極めようという人材が、なかなかいないということである。

注4:収支報告書とは、国会議員事務所全体の損益計算書のようなもの。政党交付金使途等報告書とは、その中で政党交付金を何に使ったのか、という使い道を報告するもの。

二人の女性大臣の辞任から 学ばなければならないこと 高学歴者の多くが「サラリーマン」の道を選ぶ日本においては、政治の道に進もうとする人間は極めてレアである。国会議員を目指すならまだしも、秘書やスタッフとして働く人材となると、なかなか確保が難しいのが現状だ。

優秀な人がいても、自身も議員を目指している場合、選挙が近くなると事務所を辞めてしまうことになる。最近、地方議会議員のお粗末な事件が世間を騒がせたが、秘書やスタッフだけでなく、地方議会議員についても、人材の確保は非常に難しいのが現実で、鐘や太鼓を叩いて探してもよい候補者を見つけるのは難しい。日本全国の政治の現場は、深刻な人材不足に陥っているのだ。

次に、仕組みの問題だ。収支報告書の作成は主に秘書が行う。しかし、秘書は前述したようにその人自身が政治家を目指していたりするので、選挙になると辞めてしまい、人の入れ替わりが激しい。その上、人材難であり、しっかりと収支報告書の作成に関する過去の経緯が引き継がれない現状がある。

それゆえ、マスコミに過去の誤謬を発見されても、その時の担当者はもう事務所にいないためわからない、という事態は構造的に起きやすいのだ。

最後に、小渕優子議員のような世襲議員にはありがちかもしれないが、強固な後援会や支援組織がしっかりしていればしているほど、議員本人にとっては中身がブラックボックスになりやすいということだ。新人候補者はゼロから自分自身で積み上げていくので、すべてを把握しやすいが、すでにあるモノの上に立つと、なかなか中身は見えないものである。これはベンチャー企業をゼロから立ち上げた社長と、大企業の社長との違いにも似ているかもしれない。

2人の女性大臣の辞任から学ばなければならないこと

今回の事件を、「また政治家の金銭スキャンダルが起きたな」と他人事で終わらせてはいけない。まず、筆者は有権者への利益供与など言語道断だし、カネのかかる政治体質にメスを入れることが、優秀な人材を政治の世界へ流入させるためには必要不可欠であると認識している。それに「金銭的にクリーンであること」は政治家として当然であると考えている。

しかし、そうは言っても、政治家に対してそれをどこまで求めるか、また現状のルールが適当か、ということは、議論の余地があるのではないかと考えている。

上場している株式会社がIR情報を公開するのは、その内容によって投資判断がなされるからだ。そして、企業の最終目的が「利益」を産み出し、株主に配当することである以上、企業には「金銭的なクリーンさ」が強く求められることになる。

しかし、政治家の仕事は利益を生むことではないし、配当することでもない。政治家事務所の秘書やスタッフが、領収書を集めたり公開書類を作成することにばかり時間を使っているようでは、一体何のための政治活動なのか、わからなくなってしまう。

6また、政治とカネの話をやるなら、しかるべき場でやるべきだ。経済産業委員会や法務委員会でカネやウチワの話をされたのでは、有権者もガッカリだろう。

政策論争ではなく、カネのスキャンダルで政治家を追い落とす、というのは、かつては第四次伊藤博文内閣の星亨逓信大臣が辞任に追い込まれて以来、田中角栄、竹下登、細川護煕、小沢一郎と、近年までずっと続いている悪しき伝統である。原発再稼働や成年年齢の引き下げなど、極めて注目度の高い重要な国政課題を議論する場でカネのスキャンダルを議論するのは、上述した通り、政治の本筋ではないはずだ。やるなら「政治倫理の確立及び公職選挙法改正に関する特別委員会」という場があるわけなので、場を移すべきではないか。

そして、有権者もまた、こういったスキャンダルを一過的に騒ぎたてるのではなく、しっかりと公開された資料に目を通すべきである。単にヒステリーを起こすだけでは、「一人前の有権者」としては失格だろう。

繰り返しになるが、今回の事件は、決して許されるものではないし、批判されて然るべきものだ。本来議論すべき重要な国政課題を放置する原因をつくった小渕、松島両議員の責任は重い。

ただし、単に彼女たちを批判し、辞任に追い込めばよいわけではない。「金銭的クリーンさ」を議員にどこまで求め、またそれに対する規制はどの程度であるべきか、問題が起きたときに重要な国政課題が放置されないようにするには、どうしたら良いか、こうしたことを考えるべき時にきているのではないだろうか。

さて、ではそろそろ領収書の整理に戻るとしよう。

8:06 2015/03/18

 

 

安倍首相まで疑惑に苦しむ「企業献金」の知られざる闇事情――政治ジャーナリスト・松井雅博 2015年3月18日

 著者・コラム紹介バックナンバー

「違法性はない」「知らなかった」 続々と発覚する「政治とカネ」の疑惑

留まることを知らずに次々と噴出する「政治とカネ」問題。そもそも企業から献金を受けることは、どれほど悪いことなのかPhoto:Natsuki Sakai/AFLO再び、永田町に「政治とカネ」の嵐が吹き荒れている。

2月23日、西川公也農林水産大臣が辞任した。西川元大臣が代表を務める政党支部に対して、国の補助金の対象になっていた会社から寄附を受けていたことが判明したのだ。西川氏サイドは「違法性はない」と主張していたものの、最終的には辞任に追い込まれることとなった。

しかし、事態はそこでとどまらなかった。なんと、安倍晋三総理大臣、麻生太郎副総理兼財務大臣、菅官房長官に加えて、重要閣僚らにも続々と同様の疑惑が発覚しただけでなく、それを追及する立場であるはずの野党民主党のトップである岡田克也代表もまた、その政党支部が補助金支給企業の持ち株会社から献金を受けていたことがわかったのである。

挙句の果てに、下村博文文部科学大臣の「違法献金」疑惑に中川郁子農水政務官の不倫騒動などが加わり、政界はてんやわんやの大騒ぎである。

多くの重要課題を抱えていながら空転する国会。「もういい加減にしてくれよ」と嫌気がさしてる有権者の方々も少なくないだろう。政治家たちは口を揃えて「返金した」「違法性はない」「知らなかった」と主張しているが、政治不信は高まるばかりだろう。

事態が膠着状態に陥るなか、ちょっと立ち止まって、今何が起きているのかを整理してみたい。我々国民の多くは、政治献金の何が問題かを、実は詳しく知らないであろうからだ。

 ――そもそも、政治資金規正法って何だろうか?

――ちゃんとルールがあるにもかかわらず、なぜこんな問題が続々と明らかになるのだろうか?

――いったい、どこに問題があるのか。法の欠陥なのか、仕組みの問題なのか、それとも議員の質の問題なのか?

――そして、政治家たちの言い訳はホントなんだろうか?

筆者はマッキンゼーでコンサルタントとして働いた後、国会議員政策担当秘書として政治の世界へ飛び込んだ。与野党の国会議員事務所で2年半働いた後、自身も兵庫県第10区(加古川市、高砂市、稲美町、播磨町)から、前回の衆議院議員選挙に出馬した。政治の現場や裏側を「民間の目」で見てきた経験から、こうした有権者からの素朴な問いに答えつつ、本件の本質に迫りたい。

そもそも何が悪なのか。政治資金規正法の抜け穴 そもそも企業献金は悪なのか? 政治資金規正法はやはり「ザル法」

第一に、そもそも政治資金規正法とは何か。

国会議員のお財布は、主に2つの法律によって明確にすることが義務付けられている。1つは、「政治倫理の確立のための国会議員の資産等の公開等に関する法律」。これに基づき、国会議員は毎年、所得と資産を報告することになっている。春になると、新聞でも一覧が報道されている。

もう1つが、「政治資金規正法」。これに基づき、国会議員には収支報告書と政党交付金使途等報告書(注)を作成し、公開することが義務付けられている。こちらは、国会議員個人ではなく、国会議員が代表を務める政治団体のお金の使い道を明らかにしようとするものである。

つまり、政治資金規正法とは、政治団体のお金の流れについてルールを定め、しっかりと公開することによって不正を防止しようという趣旨の法律である。ちなみに、巷で使われている「政治献金」という文言は法律には使われておらず、正確には「寄附」という。

あまり知られていないことだが、基本的に政治家は有権者に金品を「与える」ことに対して厳しい制約を受けているが(昨年、松島みどり元法務大臣が辞任したウチワ問題はこれにあたる)、金品を「もらう」ことに対しては比較的制約は少ない。もちろん上限は定められているものの、きちんと公開さえしていれば、もらうのは問題ないケースがほとんどである。

これは、有権者が特定の政治家を「応援したい」と思うのは自由であるし、具体的な行動をとるのも自由なはず、という思想に基づいている。政治家を応援すること自体を敬遠する人が増えてしまったら、とても残念なことだ。

しかし、1970年代半ば、ロッキード事件という大規模な汚職事件で田中角栄内閣が退陣した際、初めて寄附に対して制限が導入された。その後、1990年代前半に起きたリクルート事件をきっかけに、政治改革の旗印の下、様々な規制がつくられることとなった。

注 収支報告書とは、国会議員事務所全体の損益計算書のようなもの。政党交付金使途等報告書とは、その中で「政党交付金」の使い道を報告するもの。

 

企業が「寄附」で補助金を還流させる思惑と仕組み そして1994年、細川護煕政権時代に、企業・団体からの寄附は政治家個人に対しては全面禁止され、政党(政党支部を含む)、政治資金団体、資金管理団体(のちに禁止)に限定されることとなった。これは、企業・団体からの献金については、しっかりと見える口座で管理し、公開を徹底することで、贈収賄を防ぐという意図であった。

今回、次々と大物政治家から疑惑が発覚しているが、ほとんどの議員は「闇献金」をもらっていたわけではなく、公開情報から問題が明るみになっている。ただし、下村博文文部科学大臣の「裏金」疑惑は、要は政治資金管理団体に集約して報告すべきところを怠っていたのではないか、という疑惑である。きちんと報告さえしておけば、政治資金を集めるために講演を行ったり、寄附を募ること自体は何ら問題のない行為であることは、ご理解いただきたい。

この法律によって、確かに「透明性」は担保されたものの、結局「個人からの献金」にしてしまえばお金を渡すことは可能であることや、政党支部に堂々と献金すれば問題にならないこと、公開したところで大臣級にでもならない限り、チェックされることもほとんどないことなどから、この政治資金規正法は「ザル法」だと批判する人も多いのが実態である。

 

なぜ企業は「寄附」をするのか?補助金を還流させる思惑と仕組み

さて、「金品を『もらう』ことに対しては比較的制約は少ない」と述べたが、実は政治資金規正法は、国から補助金などを受け取る企業については一定の制限を設けている。まずは、法文を読んでみてほしい。

 

◆政治資金規正法

第二十二条の三  国から補助金、負担金、利子補給金その他の給付金(試験研究、調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないもの及び政党助成法第三条第一項の規定による政党交付金を除く。第四項において同じ)の交付の決定を受けた会社その他の法人は、当該給付金の交付の決定の通知を受けた日から同日後一年を経過する日までの間、政治活動に関する寄附をしてはならない。

2 国から資本金、基本金その他これらに準ずるものの全部又は一部の出資又は拠出を受けている会社その他の法人は、政治活動に関する寄附をしてはならない。

補助金だけでなく公共事業でも「政治とカネ問題」が

5 何人も、第一項又は第二項の規定の適用を受ける者であることを知りながら、その者に対して、政治活動に関する寄附をすることを勧誘し、又は要求してはならない。

6 何人も、第一項又は第二項の規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない。

ここに書いてある通り、補助金をもらった企業は、そこから1年以内については政治活動への寄附は制限されている。これはなぜか。

簡単に言えば、「補助金」というのは、その名の通り「補助」である。「『お金が足りないから不足分を税金で補填しますよ』というのが補助金であるにもかかわらず、『寄附』をするのは変ですよね」ということである。その意味では、1年以内に限定している点も「ザル法」な気がする。

さらに踏み込んで言えば、「そもそも利益を求めるのが至上命令であるはずの民間企業が、なぜ政治家に寄附をするのだろう」という疑問を持つ人も多いのではないだろうか。もちろん、CSR(企業の社会的責任)という言葉が普及しつつある今、民間企業だって寄附することはあるだろう。しかし、特定の政治家への寄附が一般の社会貢献活動への寄附と同じであると感じる人は少ないだろう。

「何か見返りを期待しているのではないか」――正直、そう疑われても仕方がないのは事実だと思う。

すなわち、政治家が「顧問」として補助金の情報を民間企業に教える。企業はその情報を素早く得ることによって、役所に迅速に申請を行い、補助金を得ることができる。その見返りとして政治家に寄附をする……という構図である。

 

補助金だけでなく公共事業絡みも選挙の公示日にカネを受領した元閣僚

これは補助金だけではなく、公共事業にも同じことが言える。 2007年10月2日、福田康夫政権の閣僚、渡海紀三朗・文部科学大臣(当時)は、閣議後の記者会見で、自身が代表を務める自民党政党支部が国の公共事業を受注している県内の建設会社から2000年衆院選前後に計478万円を受領していたことを明らかにした。2003年と2005年の衆院選でも、公示日などに国の公共工事を受注していた建設会社から、同支部に計200万円の寄付があったことも判明した。

渡海紀三朗元文科大臣は、「疑義が生じるのは不本意なので返金する」としたが、選挙の公示日に何度もカネを受領していたのでは、疑惑の目を向けられても仕方がない。

政治家は「知らなかった」で済まされるのか 筆者も国会事務所で働いていたからわかることだが、実は国会議員は公共事業の未発表の計画などを事前に知ることができる。その情報があれば、その開発される予定地の近くの土地などの物件は値上がりすることが容易に予測できるわけで、たとえばその情報を事前に知ることができれば、企業は土地を転がして儲けることだってできるかもしれない。

政治家は、常に選挙を意識している。自分を応援してくれる人、支持者をより強くしたいと願ってしまう生き物である。逆に、もし補助金や公共事業などの計画が自分と対立する政敵にとって有利に働きそうな場合、その計画を潰したいと願ってしまうということも意味している。

こうした問題を根源から断つことを目的として、維新の党は2月22日に大阪で開催された党大会において、企業からの献金については全面的に禁止する方針を発表した。企業献金を全面的に禁止する政治資金規正法改正案も国会に提出し、改革姿勢を有権者に示そうとしている。しかし、その維新の党の幹部である柿沢未途政調会長と片山虎之助総務会長にも、補助金支給企業からの献金が発覚してしまい、いかにこの問題の根が深いかを浮き彫りにする結果となった。

「知らなかった」で済まされるのか?「政治とカネ」の問題はエンドレス

「違法性はない」「知らなかった」と答える政治家が多いが、この言葉が本当かどうかは別として、こう答えるのが「模範解答」なのである。

よく法文を読んでみてほしい。まず、「違法性」に関して言えば、政治資金規正法第二十二条の三の1項では、かっこ書きで例外規定が記載されている。

(試験研究、調査又は災害復旧に係るものその他性質上利益を伴わないもの及び政党助成法第三条第一項の規定による政党交付金を除く。第四項において同じ)

「補助金を受けている企業と言っても、その補助金は利益を伴わないものに対する補助金だから、この例外規定にあたりますよ」と説明しているわけである。しかし、利益を出すことが至上命令である民間企業に「利益を伴わないもの」などあるのだろうか。たとえば、地震などの災害から復旧するための補助金だとしても、政治家に寄附をする余裕があるのなら復旧の方にお金を充てるべきだし、その先にはやはり「利益を求める」という目標があるはずではないか。

たとえば、赤字が見込まれるものの、ブランド力をアップさせるために、あえて国から委託を受けて行う事業など、利益を求めない活動を民間企業が行うこともあるかもしれないが、だからと言って、特定の政治家に寄附をする合理的な理由は特に思いつかない。

もはやここまで来たら、ルールの在り方を問い直せ 一方、「知らなかった」という答えについては、政治資金規正法第二十二条の三の5項、6項に、「知りながら」という条件文があることに注目してほしい。

5 何人も、第一項又は第二項の規定の適用を受ける者であることを知りながら、その者に対して、政治活動に関する寄附をすることを勧誘し、又は要求してはならない。

6 何人も、第一項又は第二項の規定に違反してされる寄附であることを知りながら、これを受けてはならない。

つまり、知らなければこの規定に反することにはならないのである。だからこそ、疑惑を追及された政治家は「知らなかった」と言い張るのだ。

元政策秘書から見て仕方ない側面も もはやルールの在り方を問い直すべき

ただし、「法を知らず」が言い訳にならないことは言うまでもないが、「補助金を受けている企業だということを知らなかった」というのは、実務を経験した立場から正直に言うと、確かに起こり得る出来事だと思う。

補助金を受けているかどうかもそうだが、第二十二条の五の1項が禁止している外国人からの寄附も、実際には判別するのが難しいケースもある。寄附をいただいた際に、「あなた本当に日本人ですか?」とパスポートを確認するということをせず、素直に「ありがとうございます!」と受け取ってしまうことは確かにあり得る。この外国人からの献金問題で、かつて前原誠司衆議院議員が民主党代表を辞任したことがある。

こうした同情的にも聞こえる発言をすると「政治家を擁護するのか!」と読者に怒られてしまいそうだが、これらは法に違反しているのであり、許されないことであることは言うまでもない。

しかし、ここまで多くの政治家が叩かれている現実を見れば、そもそものルールのあり方を問い直さねばならないはずだと、むしろ筆者は思う。

政治にはお金がかかる。これは事実である。必要経費だけでも、それなりにかかってしまうのが現実だ。この現実から目をそらすことなく、政治にかかるお金をどのように捻出するのが妥当なのか、有権者も冷静な議論をすべきだろう。

筆者としては、企業・団体献金は全面的に禁止してしまい、個人献金のみにしてしまった方がわかりやすいのではないか、と考えている。寄附というのは、1人ひとりの有権者が自らの意思と判断によって行うべきものであって、企業や団体が行うものではないと思う。スキャンダルを騒ぎ立て、呆れているだけでは、政治とカネ問題は永遠に終わることはない。

ちなみに筆者も、前向きな意味での「個人献金」はいつでも受け付け中。むろん補助金、公共事業、開発計画などの未公開情報は教えられないが、こうした政治に関する解説なら、いつでもお話しさせていただきたい。

7:41 2015/03/18

 

 

 

言論NPO メールマガジン■■■■ 2015年3月13日■■■■ 発行:認定NPO法人言論NPO<

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【Topics】【報告記事・アンケート結果公開】言論スタジオ「日本の民主主義制度のどこに問題があるのか~ドイツと比較しながら検証する~」━━━━━平素より言論NPOの活動に、ご理解とご協力を賜りまして、誠にありがとうございます。本日放送した言論スタジオ「日本の民主主義制度のどこに問題があるのか~ドイツと比較しながら検証する~」の報告記事をホームページで掲載いたしました。

2月に行った言論スタジオの際に、にアンケートを行ったところ、現在の日本で民主主義は「機能していない」との回答が半数を超えるという結果となりました。そこで民主主義シリーズ第2弾は日本の民主主義とドイツの民主主義と比較しながら、民主主義を機能させるために必要なことは何かについて議論しました。ぜひ報告記事をご覧ください。

また、先日、本テーマに関するアンケートにご回答いただいた皆様、ありがとうございました。本日放送した言論スタジオ内で使用いたしました。アンケート結果も同時に公開していますので、報告記事と合わせてご覧ください。

 言論スタジオ「日本の民主主義制度のどこに問題があるのか~ドイツと比較しながら検証する~」─報告記事と動画がご覧いただけます─

2月に行った日本の政党政治についての議論を一歩進めて、日本の民主主義を考えていきたいと思います。そこで今回の企画では、ドイツの民主主義と日本の民主主義を比べながら、新しい視点で日本の民主主義を見てみます。

 

<言論スタジオ概要>

テーマ:日本の民主主義制度のどこに問題があるのか ~ドイツと比較しながら検証する~参加者:網谷龍介(津田塾大学学芸学部国際関係学科教授)

     近藤正基(神戸大学大学院国際文化学研究科准教授)

     平島健司(東京大学社会科学研究所教授)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

 

 

▼報告記事と動画がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/03/0313.html

 

▼本テーマに関するアンケート結果はこちら

 http://www.genron-npo.net/politics/genre/cat300/post-498.html

  【本テーマに関連する言論スタジオ】

テーマ:日本の民主主義、政党政治はこのままでいいのか

参加者:岩井奉信(日本大学法学部教授)

     内山融(東京大学大学院総合文化研究科教授)

     牧原出(東京大学先端科学技術研究センター教授)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/post_21.html

 

▼アンケート結果はこちら

 http://www.genron-npo.net/politics/genre/cat300/-n-1.html

 【今後の言論スタジオ】

 

日 時:3月27日(金)18時30分~19時30分

テーマ:東日本大震災から4年、東北の復興は進んでいるのか

参加者:川崎興太(福島大学共生システム理工学類准教授) 新藤宗幸(後藤・安田記念東京都市研究所理事長)

     寺島英弥(河北新報社編集局編集委員)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

日 時:3月20日(金)14時30分~17時45分

      21日(土)13時30分~17時00分

内 容:国際シンポジウム

    「戦後70年 東アジアの『平和』と『民主主義』を考える」を中継予定

 

 

日 時:4月3日(金)18時30分~19時30分

テーマ:原発再稼働を含めた日本のエネルギー政策を考える

参加者:橘川武郎(一橋大学商学研究科教授)

     澤昭裕(21世紀政策研究所研究主幹)

     山地憲治(地球環境産業技術研究機構研究所長)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼放送URLはこちら

 http://www.ustream.tv/channel/genron-npo-live

          【過去の言論スタジオ】

 

テーマ:2015年度予算を検証する

出演者:小黒一正(法政大学経済学部准教授)

     亀井善太郎(東京財団ディレクター(政策研究)・研究員)

     矢嶋康次(ニッセイ基礎研究所経済研究部 チーフエコノミスト)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事と動画がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/03/150306.html

 

▼本テーマに関するアンケート結果はこちら

 http://www.genron-npo.net/politics/genre/cat300/2015-1.html

 

============================

 

テーマ:農協改革で日本の農業は強くなるのか

出演者:大泉一貫(宮城大学名誉教授)

     山下一仁(キヤノングローバル戦略研究所研究主幹)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事と動画がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/150227.html

 

▼本テーマに関するアンケート結果はこちら

 

http://www.genron-npo.net/politics/genre/agriculture/post-497.html

テーマ:アベノミクスの成功と財政再建にどのようにめどをつけるのか

参加者:小幡績(慶應義塾大学大学院経営管理研究科准教授)      鈴木準(大和総研主席研究員)      山田久(日本総合研究所調査部長)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事とテキスト全文がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/post_20.html

テーマ:2015年の日本に何が問われているのか

参加者:明石康(国際文化会館理事長)

     川口順子(明治大学国際総合研究所特任教授)

     宮本雄二(宮本アジア研究所代表)

司会者:工藤泰志(言論NPO代表)

▼報告記事とテキスト全文がご覧いただけます

 http://www.genron-npo.net/studio/2015/02/2015_1.html

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17:24 2015/03/15

「植草一秀の『知られざる真実』」2015/03/16

米が露を悪と見るとき、露は米を悪と見る   第1103号

本日、3月16日の午後8時から、UIチャンネル

http://live.nicovideo.jp/gate/lv213321643

で、鳩山友紀夫元首相孫崎享氏高野孟氏による鼎談「クリミアの現状と日本外交の在り方」が生放送される。番組紹介では、「鳩山氏がクリミアを訪れ、大騒動になっているが、その真相を同行した高野氏と共に語り、さらに孫崎氏を交えて日本外交の在り方を考える。」

 

とある。

 

鳩山元首相のクリミア訪問に賛成の人も反対の人も、ぜひ番組をご覧いただ

き、鳩山氏の真意を知るべきである。

 

メディアの多くが鳩山氏の行動に批判的な報道を展開し、現在の腐敗した民主

党の幹部も鳩山氏を批判しているが、的外れの批判をしている者が、実は日本

の国益を損なっていることを、賢明な市民であるなら洞察できるだろう。

 

この問題に焦点が当たることにより、

 

本当のところ、誰が正しく、誰が間違っているのかが、浮き彫りになる。

 

鳩山元首相は、そこまで読み抜いて行動しているのだと推察される。

 

 

 

クリミアの問題も、その端緒となったウクライナの問題も、見方は当初から二

分されているのだ。

 

米国を中心とする西側の国は、西側の利害からこの問題を捉えて論評してい

る。

 

一方で、ロシアを中心とする東側の国は、東側の利害からこの問題を捉えて論

評している。

 

立場が変われば評価が変わる。

 

どちらが正義でどちらが悪魔であるのかは、自分の立ち位置、価値尺度によっ

て全面的に変化する。

 

しかし、日本では米国が主導する情報だけが流布される。

 

しかし、その見解、論評は絶対的なものではない。

 

多種多様な意見、見解があるなかで、米国が主張する見解、意見なのである。

 

したがって、それが絶対に正しいなどという保証はどこにもないし、それだけ

が唯一の真理などということはまったくありえないのである。

 

日本という国が、

 

「思想及び良心の自由」

 

を基本的人権として保障する国であるなら、クリミアのロシア編入についての

見解、主張についても、「自由」が認められる必要がある。

 

米国には米国の立場があり、米国の主張があるだろう。

 

それはそれでよい。

 

しかし、その見解があるからと言って、

 

「他の見解は悪だ」

 

「他の見解を述べることは国益に反する」

 

などと論評することは、あまりにも浅はかなことだ。

 

民主党の枝野幸男氏や岡田克也氏が、分別もなく鳩山友紀夫氏批判を展開して

いること自体が、これらの人物の底の浅さ、見識の低さを鮮明に物語ってい

る。

 

米国がロシアによるクリミア編入を認めないというだけで、なぜ、すべての日

本国民がその見解に同意しなければならないのか。

 

開いた口がふさがらない。

 

総理大臣まで経験した人物が、沈思黙考して、その結果として行動しているの

である。

 

鳩山氏の行動に賛成者がおり、反対者がいることは不思議でも何でもない。

 

しかし、反対だからといって、旅券を取り上げろなどと発言することは、良識

の欠如、品格の欠如、基本的判断能力の欠如を告白しているに等しい。

 

 

 

ウクライナは東西のせめぎ合いの核心地帯に立地する国であるる。

 

冷戦終焉後、東と西が、ウクライナをめぐって綱引きを演じ続けているのであ

る。

 

ヤヌコビッチ政権が倒され、ポロシェンコ政権が樹立されたが、この政権に正

統性があるのか否かについてさえ、見解は分かれるのである。

 

米国が背後で謀略を展開して、前政権を不正に倒し、ウクライナという国家を

乗っ取ったとの見立ても成り立ちうるのだ。

 

この見解に立てば、現在のウクライナ政権こそ、批判の対象にされるべきだと

いうことになる。

 

大事なことは、双方の主張に真摯に耳を傾けて、和解の道を探ること、平和解

決の道を探ることである。

 

鳩山元首相は、日本の現在の風潮が、対米隷属に偏り過ぎているとの判断に

立って、あえて、見解はただひとつではないのだということを、広く人々に知

らしめるために行動しているのだと思われる。

 

何も考えず、ひたすら米国にひれ伏し、米国が操る情報にただ流されるだけの

人物を、国会から追放することを考えることが、国民の利益、国益を増大させ

る方向に働くのではないか。

 

 

 

ウクライナは欧州における東西の対決点であると言って過言でない。

 

同時にウクライナは巨大な地下資源をも有しており、その利権を巡る争奪戦も

熾烈である。

 

2004年以来、ウクライナでは政治的な動揺が続いてきた。

 

親ロシアの主張を示すヤヌコヴィッチ氏と親西欧の主張を示すユシチェンコ氏

が大統領の座を争った。

 

選挙でヤヌコヴィッチ氏が大統領に選出されたが、

 

「不正選挙」

 

の批判が巻き起こり、首都キエフを中心に大規模な抗議行動が展開された。

 

この模様が世界のマスメディアを通じて大きく報道された。

 

西欧側の情報誘導が優勢となって再選挙が行われた結果、ユシチェンコ氏が大

統領に就任したのである。

 

この政治騒乱は「オレンジ革命」と呼ばれており、西側、東側で、問題の受け

止め方は正反対である。

 

米国が背後からユシチェンコを支え、ロシアが背後からヤヌコヴィッチを支え

る構図だったのである。

 

 

 

こうして親西欧政権が誕生したが、ユシチェンコ大統領は内部で盟友であった

ティモシェンコ女史などと対立するなどして国民の支持を失った。

 

その結果として、2010年の大統領選ではユシチェンコ氏と闘ったヤヌコ

ヴィッチ氏が大統領に選出され、ウクライナは親ロ政権に転換したのである。

 

このなかで、焦燥感に駆られたのが欧米陣営である。

 

2013年11月にヤヌコーヴィチ政権が欧州連合との政治・貿易協定の調印

を見送ったことを契機に、親欧米勢力および極右勢力である全ウクライナ連合

「自由」などによる反政府運動が勃発した。

 

デモ隊は暴徒化し、ウクライナは一種の内乱状態に陥り、ヤヌコヴィッチ大統

領が国外に脱出したことを名目に、一種のクーデター政権が樹立されたのであ

る。

 

西欧から見れば新政権が正統政権であるが、ロシアの側から見れば、新政権に

正統性を付与することはできない、との判断になるのは当然のことである。

 

ウクライナ政変の背後にはCIAの影が蠢いており、過去に米国が手掛けてき

た世界における卑劣な謀略工作の数々を見れば、今回のウクライナ政変も、米

国が主導した謀略であると推察することは正鵠を射ているようにも思われるの

 

 

 

こうしたことを踏まえれば、ものごとの判断は難しい。

 

すべての判断、主張は、依って立つ立場によって大きく変化する。

 

米国の利害を軸とするものの見方と、ロシアの利害を軸とするものの見方とで

は、判断は恐らく180度異なるものになるだろう。

 

米国の見立て、米国の主張に耳を傾けることは必要だが。大事なことは、それ

がすべてというわけではないことだ。

 

国会議員が、ウクライナ、ロシア、クリミアの歴史的背景をも理解せず、ただ

単純に米国の見解に絶対服従すべきだなどという浅はかな考えで行動する姿

は、日本政治の未熟さ、貧困を象徴するものである。

 

あまりにも恥ずかしい行為である。

 

 

 

米国にひれ伏す人々は、現地の実情をも知らずに、

 

「クリミアを併合したロシアは悪」

 

とだけコメントする。

 

そのような「論」がマスメディアを通じて垂れ流されているからだ。

 

しかし、クリミアに在住する人々が、ロシアへの帰属を本当に求めているな

ら、クリミアのロシアへの併合は正統性を持ち得ることになる。

 

クリミアに住む人々も多くが親ロシアの考えを有しているのかどうかは、実際

に現地で確かめなければ知りようのないことである。

 

「百聞は一見に如かず」

 

なのだ。

 

現地を訪問して、現地の実情を知ろうとすることは、決して無益の行為ではな

い。

 

大いなる意義のあることだと言ってよいだろう。

 

 

 

日本は一体いつから、一党独裁の国になったのか。

 

アメリカが好きで、アメリカに蹂躙されたい、ひれ伏したい、土下座したいと

思う人は、その嗜好に合わせて対米隷属の行動を示せばよいだろう。

 

しかし、そのような土下座外交ではダメだ、と考える人もいるだろう。

 

日本が自由主義の国であるなら、ひとりひとりの思想、良心の自由に土足で踏

み込むことは控えるべきだ。

 

人それぞれに、行動の流儀は異なる。

 

日本はロシアと領土問題を解決しなければならない関係にある。

 

鳩山友紀夫氏の祖父の尽力で、日ソの国交は回復し、シベリア抑留者の帰還が

実現した。

 

鳩山一郎首相も米国からは攻撃を受けた。

 

日本政治においては、米国にひれ伏す、米国に対して土下座外交を展開すれ

ば、米国からの覚えがめでたくなり、政権は支援を受ける。

 

しかし、米国に服従しない、米国に対しても主義主張を貫く人物は、ことごと

く激しい攻撃に晒されてきたのである。

 

このために、鳩山友紀夫氏も、激しい攻撃を受け続けているのである。

 

 

 

米国にひれ伏し、ものごとをさまざまな角度、さまざまな立場から見ようとす

る努力を怠ることが、国の進路を誤るもとになる。

 

さまざまな立場がある。

 

さまざまな価値判断がある。

 

それらのすべてに真摯に耳を傾け、相互理解と相互尊重の関係を築くことが大

事なのであって、そこから「平和と繁栄」がもたらされるのだ。

 

「偏狭なナショナリズム」

 

は国民に幸福をもたらさない。

 

70年前に、私たち日本国民を痛いほど思い知らされたのではないのか。

 

偏狭なナショナリズムに走り、無益で無謀な戦争に突き進む愚を二度と繰り返

してはならないのである。

 

8:32 2015/03/16

 

 

「植草一秀の『知られざる真実』」財政健全性は資産と負債のバランスで判定する  第1102号

3月14日、北陸新幹線の長野-金沢間が開業した。高崎-長野間が開業したのが1997年10月1日。長野-金沢の距離は228キロメートル(営業距離)。この延伸に17年半の時間を要したことになる。これまで金沢-東京間は、鉄道利用の場合、新潟県上越市の犀潟駅(さいがたえき)と上越新幹線の越後湯沢を結ぶ北越鉄道を経由する特急はくたか号と越後湯沢-東京間を結ぶ上越新幹線を乗り継ぐルートが最短であった。

4時間20分ほどの時間を要していたが、北陸新幹線の開業で、金沢-東京間

が最短2時間28分に短縮された。北陸-首都圏が日帰り圏内になり、また首都圏から北陸への観光客が急増することが予想され、北陸三県ではその大きな経済効果に期待が寄せられている。

長野-金沢間は最短で65分で接続されることになったが、この1時間の路線開業に要した時間が18年ということになる。

日本有数の豪雪地帯を通過することから、積雪対策に多くの技術が必要であったし、また山岳地帯を通過する部分が多く、トンネル工事にも多大な費用と労力が求められた。

 

18年の歳月を経て、ようやく実現した金沢延伸であるが、時間がかかり過ぎたとの印象は否めない。中国では首都北京と最大都市上海とが京滬高速鉄道(けいここうそくてつどう)で結ばれている。全長1318キロメートルの距離は、長野-金沢間の228キロのちょうど5倍に該当する。この高速鉄道建設が着工されたのが2008年4月で、2011年6月には開業された。工事着工から開業までの期間が、わずか3年余りであった。

 

両者の時間の開きには改めて驚かされる。新幹線のようなインフラの特徴は、その社会資本=インフラが効用を発揮する期間が長期にわたる点にある。完成して実用に供されれば、長期にわたって価値を発揮するのである。道路も、港湾も、空港も、そして鉄道も、作るのは大変だが、作ってしまえば大きな価値を発揮し、しかも、その価値発揮の時間が非常に長い。

 

生活に関連した社会資本も同じだ。生活の利便性を飛躍的に高める、電気、ガス、水道などの、いわゆる「ライフライン」と呼ばれる社会資本も、敷設には時間と労力、そして財源を必要とするが、敷設されてしまえば大きな価値を発揮して、しかも、長期の利用を可能にするものである。

 

財政政策の運営を考える場合には、「投資」が持つ、こうした特性を十分に踏

まえることが大事なのである。

 

財政運営ではとかく「財政赤字」の問題だけが前面に出されやすい。

 

巨大な財政赤字を計上して、債務を累積させれば、財政破綻に対する懸念が拡

大するとともに、累積債務の利払い費などの経費が財政運営をさらに圧迫する

ことなどが警戒される。

 

このことから、緊縮財政が唱えられ、とりわけ、「公共投資」に対する抑制圧

力が強まるのである。しかし、例えば、新幹線のような「投資」を考えるときに、膨大な費用がかかるからと言って、毎年の投資支出を抑制すれば、投資が完了して、投資資産が実用に供される時期は大幅に先送りされる。日本はいま人口減少を加速しているが、完成したときには利用する国民がほとんどいなくなってしまうということも考えられる。家計における「実物投資」の最大のものは「住宅建設」だろう。

 

「家を買う」、「家を建てる」と言うのは、家計の支出行動のなかでの最大イ

ベントと言っても良いだろう。この住宅建設を考えるときに、「財政規律」だけを優先するとどのようなことが起こるだろう。「財政規律」の「原理主義的発想」は、「借金は良くない」というものである。「借金は不健全」「借金は悪」というのが財政規律重視の「原理主義」的な考え方である。

 

これを「家を買う」ことにあてはめると、「家を買う」時期は大幅に先送りさ

れる。「家を買う」費用を確保できるのは、恐らく退職直前、あるいは、退職して退職金を獲得したときに、初めて「家を買う」費用を確保できるということになるだろう。

そして、「家を買って」、まもなく死去するのである。これに対して、就職して間もない時期に住宅ローンを組んで家を買ってしまう。

退職時点で退職金を得て、ローンは完済される。

この人は、若年の時期から死去するまで、ローンで購入した「持家」に暮らす

ことができ、退職時点ではローンを完済して、負債を残さない。

 

どちらの行動が、より「賢明」と言えるだろうか。

先を見越して、「家を建てる」決断がある場合には、早い時期に借金をして

「投資」を行ってしまう方が、はるかに「賢明」であることが分かるのだ。

公共投資、インフラ建設、実物資産投資において大事なことは、長期の視野に

立ったときに、その「投資」を実行するのか、それともしないのか、の見極め

である。つまり、「どうしても必要と言える」ものなのか、それとも「最終的には絶対必要とは言えない」ものなのか。その見極めが大事である。

そして、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と判断できるものについては、

「出来るだけ早くに投資してしまう」「完成させてしまう」ことが賢明なのである。

たとえば、生活関連インフラである電気、ガス、水道、下水道これらが、長期的視点に立ったときに、「必ず必要」と考えらえれるなら、「出来るだけ早くに完成させてしまう」ことが賢明である。

 

その完成には「費用」がかかる。手元にそれだけの資金がなければどうするか。こういうときには、「借金」をするのが良いのだ。日本の財政法は、第4条で、このような場合の借金を認めている。財政法4条債と呼ばれるもので、「建設国債」と称されている。「投資的経費」については、国債を発行して支出を行なうことが許されているのである。

これは、住宅ローンと住宅の関係に似ている。家計が住宅ローンを組んで家を購入したとする。

 

家計には、住宅ローンという大きな借金が生まれるが、他方で、住宅という大

きな資産が形成される。「借金」はあるが、これと並行して「資産」が形成される。「借金」はあるが、見合いの「資産」が残存するから、この「借金」を「不健全」と見なさないのである。

国の場合も同じ。

「建設国債」という借金が残存するが、その借金に見合う「資産」が形成され、その資産が長期にわたって価値を発揮する。だから、この借金は「不健全」なものでないと評価できるわけだ。

長い目で見て、「これはどうしても必要と判断できるもの」、あるいは、「最終的には建設することを決定するもの」については、「どうせ作るなら、できるだけ早くに完成させること」が重要なのである。

何よりも重要な見極めは、「最終的に作るのか、それとも、作らないのか」という点にある。

「作らないなら作らない」「作るのなら作る」のだから、「作るもの」については、「可能な限り早く作る」ことが大事になる。

なぜか、完成させないと利用できないからだ。

一生懸命に貯金をし続けて、ようやくお金が出来て、住宅建設を着工したら、

その工事中に亡くなってしまった、というのでは悲劇である。若いときに住宅ローンを組んで家を買ってしまえば、死ぬまでその家という資産がもたらす効用を享受できる。

この行動を取る方が、はるかに「賢明」であると言える。

電気、ガス、水道、下水道と同じように、「長期的に見てどうしても必要」と判断できるものについては、その投資をできるだけ前倒しで、集中して実行してしまうことが「賢明」な判断なのである。

国全体の基幹道路、基幹となる新幹線、基幹空港、基幹港湾、あるいは、基幹となる橋や学校、公共施設などの建設はできるだけ前倒しして、集中的に整備することが「賢明」なのである。

その代り、長期的に考えて、「どうしても必要とは言えない」ものへの投資は絶対に行わないことだ。豪華絢爛な役所の庁舎など、まったく必要ないだろう。コンサートのないコンサートホールも不必要だ。

車が通らない道路を作る必要もない。ひとつの県にひとつの空港というのも必要ない。無駄な投資は全廃するべきだ。

他方で、長期的に見て、どうしても必要、作るべきものについては、これを見極めて、出来るだけ早期に、集中投資を行って、できるだけ早くに完成させてしまう。

これが賢明な対応なのである。北陸新幹線が開業して大きな期待が寄せられているが、長野-金沢の228キロの開業に18年もの時間を費やしたことの意味を、私たちはしっかりと見つめるべきだ。

安全なものでなければならないから、中国を手放しで礼賛できないが、中国が

5倍の距離の建設・開業をたったの3年で実現したこととをよく比較する必要

がある。

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著者:植草一秀(政治経済学者)

ウェブサイト:http://www.uekusa-tri.co.jp/report/index.html

ブログ:http://uekusak.cocolog-nifty.com/

16:56 2015/03/15

 

 

差出人: 『大前研一ニュースの視点』メルマガ事務局

<OhmaeNews@bbt757.com>

送信日時:       2015年3月13日金曜日 8:20

宛先:   takita@po.synapse.ne.jp

件名:   KON559【シャープ・ジャパンディスプレイ・

ファミリーマート・ピジョン~プレーヤーの強

みを考える】大前研一ニュースの視点

 

 

◆━世の中どうなってんの…?大前さん!━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

『 大前研一 ニュースの視点 』

 

2015/3/13 #559

発行部数 178,727部(自社配信+まぐまぐ)

 

◆━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 

おはようございます。

ビジネス・ブレークスルー大学 オープンカレッジ

問題解決力トレーニングプログラム事務局の窪田です。

 

今週の「ニュースの視点」は、

シャープ・ジャパンディスプレイ・ファミリーマート・ピジョンの話題について大前研一が解説し

ます。

 

 

★index★

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【1】今週の ~大前研一ニュースの視点~>シャープ・ジャパンディスプレイ・ファミリーマート・ピジョン~プレーヤーの強みを考える

シャープ 連結最終赤字2000億円ジャパンディスプレイ スマホ用高精細液晶パネルファミリーマート ユニーグループHDピジョン 連結純利益89億円見通し

シャープ 連結最終赤字2000億円

ジャパンディスプレイ スマホ用高精細液晶パネル

ファミリーマート ユニーグループHD

ピジョン 連結純利益89億円見通し

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▼経営実態を失ったシャープ/再建に成功したジャパンディスプレイ

経営再建中のシャープの2015年3月期連結決算で、純損益の赤字額が2千億円近くに膨らむ見通しになっていると報道されました。広島にある電子部品の4工場を閉鎖するなどリストラの追加を検討しているとのことです。

また、主要取引銀行に協力を要請し、借入金を株式に振り替えてもらい、「債務の株式化」を実施するなどで、計1750億円の資本増強を目指す考えです。シャープの再建に関しては、ファンドからの出資、工場の閉鎖、銀行借入の株式化(デッド・エクイティ・スワップ)など、色々な情報が飛び交っています。さらには、三菱自動車の救済策と同様、銀行の傀儡ベンチャー企業を立ち上げて支援するという方法もあります。

シャープの業績推移を見ると、V字回復などと言われていましたが、報道されているように2000億円の赤字を出すとすれば致命的です。おそらく、すでに「経営の実態」はなく、自ら経営ができる状態ではなくなっているのでしょう。鴻海会長の郭台銘(テリー・ゴウ)が買収交渉を再開したとも言われていますが、正直、私は厳しいと感じています。

部分的に良いところはあるでしょうが、全体として経営が崩壊しているからです。

相当厳しいリストラを敢行し、ルネサスエレクトロニクスのようになれば良いですが、現状を見ていると、しばらくの間、上昇してくるのは難しいと私は見ています。シャープとは対照的に、上手に回復を果たしたのがジャパンディスプレイです。ジャパンディスプレイは6日、石川県白山市にスマートフォン(スマホ)用の高精細液晶パネルの新工場を建設すると発表しました。投資額は1700億円で、大半を主要な納入先である米アップルが負担するとみられ、2016年夏に稼働して全社的な生産能力を2割強増やす考えです。

整理するものをきちんと整理し終えたら、アップルから供給安定を求められ、

同時に資金まで提供してもらえる状況になりました。シャープもこのようなスタイルをとることができれば良かったのですが、中途半端な立場を取ってしまったのが致命的だったのでしょう。

▼セブン-イレブンが強い理由/ピジョンの将来性は有望

国内コンビニエンスストア3位のファミリーマートと、同4位のサークルKサンクスを傘下に持つユニーグループ・ホールディングス(GHD)は経営統合に向けて交渉に入るとのことです。実現すればコンビニ事業の売上高は首位のセブン-イレブン・ジャパンに次ぐ2位に浮上します。

と言っても、1店舗当たりで見ると、売上高ではセブン-イレブンが他社を圧倒しています。

セブン-イレブンの売上高は約3兆8000億円です。

ファミリーマートとサークルKサンクスを足しても約2兆8000億円で、約1兆円の開きがあります。

また、セブン-イレブンが四国に進出した際、他のコンビニからセブン-イレブンに切り替えた店舗の中には、売上が2倍近くになったところもあったそうです。重要なのは店舗数ではなく、個々の商品です。その商品力が勝負の鍵を握っています。セブン-イレブンは商品開発力が高く、おそらくメーカーにも厳しく指導しているはずです。店舗の数だけ合わせても、セブン-イレブンに追い付くのは難しいと思います。

ピジョンは2日、2016年1月期の連結純利益が前期比5%増の89億円になる見通しだと発表しました。中国向けの育児用品が貢献し、6期連続で最高益を更新するとのことです。2年以上前ですが、私はピジョンをケーススタディで取り上げ、中国への進出に可能性があることを示しました。

ここに来て、ようやく売上に利益がついてくるようになって、私の予想通りピジョンは非常に良い状況になっています。

中国では、国内製の哺乳瓶や粉ミルクよりも日本製のほうが、人気があるほどです。今後も中国市場は伸びていくでしょう。ピジョンはすでに国内の利益よりも海外のほうが大きくなっています。

 中国では一人っ子政策が緩和され、子供の数が増える傾向にあります。私が経営している大連の会社でも、1割近くの従業員が産休を活用しています。このような状況を見ても、ピジョンは非常に将来有望だと私は見ています。

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シャープ・ジャパンディスプレイ・ファミリーマート・ピジョン~プレーヤーの強みを考える

 

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★ホンダ・スカイマーク再生・雪国まいたけ~ホンダイズムの観点で考えるトップ交代

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平成27年3月16日


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