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2014年10月29日 (水)

国会は「定数100の大選挙区」「一院制で国民投票導入」を目指せ・212頁・

引用

最強国家ニッポンの設計図 単行本 – 2009529 大前 研一 (著) シンガポールやマレーシア、台湾の国家アドバイザーとして国家建設に携わった大前研一氏が・

「日本立て直しプランの集大成」と位置づける一冊。


一院制と国民投票を導入する政治システム、産業発展と地方復活を実現する道州制、所得税、住民税、相続税・贈与税をすべてゼロにする全く新しい税制、アクティブで安心できる老後を可能にする新・2階建て方式の年金など、既存の政党や政府、論客とは全く異なる国家ビジョンは斬新さが際立つ。

さらに本書では、政策の細目をまとめる新しい国家シンクタンク設立も提唱する。


http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2014/10/2009529-0d97.html


国会は「定数100の大選挙区」「一院制で国民投票導入」を目指せ・212頁・

14/10/29 4時32分7秒・


重要なのは「何のための国会改革か」

政治と行政は、国家の統治機構を形づける支柱である。今日本では様々な弊害を生んできた国会、行政、官僚制度の見直し論議が盛んだ。しかし、例によって利権と人気取りとごまかしが横行し、国民の利益は後回しになっている。ここでは、真にあるべき議会と行政の設計図を示す。

政権交代が現実味を帯びてから、永田町では国会議員の「歳出カット」や「定数削減」「一院制」「世襲禁止」の論議がかまびすしくなった。しかし、選挙を意識した時節に騒ぐ政治家の動機は極めて不純である。ご都合主義のパフォーマンスと目くらましでしかない。自民党内で盛り上がった一院制にいたったは、ねじれ国会になっているのは参議院があるからだ、一院制にして有権者に究極の選択を迫れば自民党が勝つ、という浅薄な発想の産物だった。

213・

かつて自民党が小選挙区を導入したときに、1人区にすれば選挙区ごとに究極の選択を迫るので自民党は安泰と考えた(それは間違っていたわけだが)のと同じである。

国会を改革するというなら、そもそも何のための改革なのか、ということが明確でなければならない。これからの日本にふさわしい国会の制度や国会議員の定数を考えるためには、その大前提となる新たな「統治機構」の枠組みが必要なのだ。

本書が目指す「最強国家」は、すでに第1章の税制改革や前節で述べたように「道州制」を導入し、11の道州をつくりその中に30万人規模のコミュニティを配する2段階の統治機構を採用する。

そして国家は外交、防衛、通貨発行などの「国事」だけを行う。従って、国会議員は「国のためだけに働く」人間でなければならず、現在のように地方の代表・・利益誘導型ではだめだ。ズバリ、国会は「一院制で11の道州の大選挙区」「定数は100人」が良い。各選挙区の定数は、基本的には人口比で割り振るのがフェアだろう。

各道州から選出された議員たちは、アメリカの上院議員のような存在として日本全体に関する法律を作る。選挙区が広く、そもそも前述の「国事」に関する問題しか扱わないから、地元に利益誘導はできない。道州制のことは道州議会が決めるので、国会議員は道州を超えて「国家ビジョン」を語ることができる見識を持った者でなければ務まらない。したがって、そのレベルとクオリティは、おのずと格段に向上するはずだ。

214・

現在の二院制は、衆議院と参議院の選挙制度が非常に似てきているため、意味がなくなっている。特に衆議院に小選挙区を導入したことは大間違いだった。当時から私は大選挙区制を提唱していたため、「守旧派」のレッテル貼られたが、私が小選挙区に反対した理由は30万~50万人の単位で1人の国会議員を選ぶと、選挙の実態は市長選と変わりなくなり、我田引水の利権政治が加速して腐敗が進むと考えたからだ。

案の定、今や国会議員はどんどん小粒になり、天下国家を本気で論じる者は極めて少なくなった。そこ日本の政治の根本的な問題がある。だからこそ道州単位の大選挙区・一院制に改革すべきなのだ。

ただし、大前試案の一院制では、国会は「下院」の位置づけになる。「上院」は国民投票だ。つまり、重要案件については国会の議決をそのまま法律にはせず、それを承認するか否かを国民が直接投票で決定する。国会の「チェック機能」を国民投票によって担保するわけだ。

それは投票のIT化によって十分可能である。たとえば、電話と音声認識技術を組み合わせ、声紋認識により本人同定を行ったうえで「イエス」なら一、「ノー」なら二、のボタンを押すという方式ならば、いつでも、世界のどこからでも投票できる。

これにより、国民が政治関心を持つようにもなるだろう。国民投票に回ってくる議案を審議する国会は注目されるはずだし、国会審議も今より真剣なものになる。政党間の駆け引きや妥協、国対(国会対策)と称したなれ合いやイカサマは通用しなくなる。漢字を読めない総理大臣や、国際会議で酩酊会見するような大臣は淘汰されるだろう。

215頁・根深い「地方支配」「中央官僚厚遇」をぶち壊せ」

では、地方議会はどうするか。

 

 

実は、日本の憲法と法律には「都道府県」「市区町村」の定義はない。都と道と府と県で行政単位として与えられた権限や裁量に違いはなく、それは市区町村は町と村でも同じである。

例えば、東京都の一般会計の予算規模は6兆円以上で普通の国の国家予算に匹敵するが、権限や裁量は他の道府県と全く同格だ。つまり、都道府県や市町村には何をするための行政単位なのか、明確ではないのである。

こんな曖昧な行政単位は世界でも極めて特異だ。統治機構をつくるには、まず行政単位がどういう権限を持ち、どういう責任を担うのかを定義しなければならない。

私の設計図では、「道州は産業基盤」「コミュニティは生活基盤」を確立する責任を持つ、と役割が明確だ。産業基盤を作って雇用を創出するのは道州の責任。そのための財源には付加価値税を充てる。

一方、生活基盤である上下水道やごみ処理などのインフラと、警察、消防、病院などの安全・安心を確保するのはコミュニティの責任。財源氏は資産税を充てる。教育は、人格を形成する高校までがコミュニティ、職業能力(雇用)を形成する大学は道州の責任になる。

216頁・14/10/29 9時36分・

従って高校を卒業すると18歳を成人年齢とし、選挙権はもちろん、飲酒、喫煙、刑罰などすべてにおいて大人として扱う。当然、高校までは義務教育とし、コミュニティは大きな責任を負うことになる。なぜなら立派な成人を育成しなければ、そのコミュニティは大きな負担を背負うかことにもなるからだ。

このように役割分担を決めれば、道州議会は「経済発展の方策」をつくるため、コミュニティ議会は「生活基盤整備」のために働く。

ただし、議員はパートタイムで十分だ。日本では地方の議員もフルタイムが当たり前だが、世界では地方議会でフルタイムの議員など見たことがない。

別の職業を持っている人や主婦などが時給制のパートタイムで議員を務めている。それで行政に対するチェック機能は十分に果たせるし、行政コストを大幅に削減できる。

行政コストについていえば、地方行政に多くは全国どこでも同じことをやるのだから、全国一律に同じシステムでサイバー化してコストを大幅に削減すべきだ。

現在は各自治体のシステムがバラバラで、「サイバーゼネコン」と呼ばれる総合電機メーカーが、同じ中身のものを少しだけいじって高い値段で売っている。しかもシステムに互換性はなく、市町村の数が10年前の3,200余りから約1,780に減っても、行政の効率化は思うように進んでいない。

それどころか、日本の役所は業務を標準化せずに裁量行政の余地を残し、サイバー化をサボタージュしてきた。たとえば、建築基準には「基準」とは呼べない裁量による部分が多く、いちいち役所に図面を持っていって交渉しなければならない。

217頁・14/10/29 9時51分・

建築基準がきっちりとしているシンガポールでは、CADの図面をインターネットで送るだけで、すぐに認可や変更の指示が返ってくる。

オーストラリアなら建築の許認可は48時間でOKだ。日本もさっさと役所の業務を標準化してシステムを統合とサイバー化を推進し、役人と行政コストの削減を図るべきである。

日本の地方行政が機能しない理由は、権限、責任の不明確さや地方議会の形骸化もあるが、さらに問題なのは中央官庁が自治体を支配し、地方もそれに甘んじていることだ。

中央の地方支配を強固にしている陋習がある。自治体が中央官僚を重要な部課長ポストに受け入れてチヤホヤしていることだ。彼らを通じて中央とのパイプをつくることが、利益誘導においては非常に重要なのである。そしてさらに、しばたく地元で顔を売った中央官僚を地元の国会議員や知事、市長に担ぎ出すというパターンが定着している。

官僚も最近は天下りが厳しくなっているため、地方で国会議員や首長になれるチャンスがあるとなれば喜んで応じる。しかし、私が見てきたほとんどのケースに共通しているのは、そういう「ドサ回り中央官僚」はカネがかかるだけで能力はなく、地元に何の貢献もしない。これでは住民のため、地域のための政治や行政などできるはずがない。その正体は「中央の回し者」であり、自治体にとっては「獅子身中の虫」なのだ。

地方が自立したいというなら、こんな(昔の国司を派遣するような)バカバカしいシステムは即刻廃止すべきである。

10/29/2014 2:14:40 PM


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