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2016年1月 2日 (土)

第4章 求められる空港会社の効率化・163頁・羽田空港の上物(ターミナルビルなど建物施設)と下物(滑走路など基本施設)はまったくの別個の組織で運営されている。下物は国が整備・運営しているが、上物は民間企業等が国からスペースを借りて整備・運営している。従って、上物は典型的な権益事業なのだが、権益はいくつにも分割されており、上物の利益は下物の整備に寄与しない構図になっている。

引用


2016年1月 2日 (土)杉浦/一機 航空アナリスト。首都大学東京客員教授。世界の空港、エアラインのサービスや経営について造詣が深く、利用者サイドに立った航空の評論がモットー。1947年生まれ・利益が利用者に還元されない羽田・164頁・隠れた優良企業・空港ビルにも多くの子会社・天下り先の空港環境整備協会・権益だけで生きる空港施設。

http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/1947-a188.html

15:42 2016/01/02

2016年1月 4日 (月)ところが、そんな経営の一大転機を迎えている国内空港において、唯一の優等生と評価されている地方空港がある。石川県の能登空港だ。
http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/post-8c5f.html
16:45 2016/01/04


第4章 求められる空港会社の効率化・163頁・


利益が利用者に還元されない羽田・164頁・


隠れた優良企業・

羽田空港の上物(ターミナルビルなど建物施設)と下物(滑走路など基本施設)はまったくの別個の組織で運営されている。下物は国が整備・運営しているが、上物は民間企業等が国からスペースを借りて整備・運営している。従って、上物は典型的な権益事業なのだが、権益はいくつにも分割されており、上物の利益は下物の整備に寄与しない構図になっている。

上物を運営する最大企業は日本空港ビルデングで、1953年に民間資本で設立されたわが国初のターミナルビル会社だ。同社の売り上げは、エアラインやテナントなどにスペースを提供する家賃収入、駐車場収入、自らが営む土産物などの物販、レストラン収入、保険代理業などで構成される。一般的にはあまり知られていない企業だが、経営は順調で90年には東証2部に、91年には同1部に上場された。

同社が設立されたのは、国に上物を整備する予算がなかったので、エアライン、鉄道会社などから1億5千万円の資本を募り、55年に10億円の予算で旅客ターミナルビルを完成さえた。羽田は日本の玄関口で旅客が多いうえ、都心に近いために送迎客や修学旅行客も多く、売店やレストランは繁盛を極めた。63年にはジェット機の登場と東京オリンピックへの対応に35億円を注ぎ込んで大規模な増築工事を行ったほか、70年にはジャンボ機に対応するために32億円を投じるなど投資が嵩んだが、旺盛な売り上げに支えられて事業は順調に推移した。165頁・


165頁・同社にとって社運を賭ける大規模投資となったのは、空港の沖合展開に伴うターミナルビルの全面移転だった。93年に完成沙汰第18にしターミナル=ビッグバード)に130,000,000,000円、04年に完成した第2(東ターミナル)670億円と地方空港の建設費を上回る巨費を投じたが、日ごろの収益性が評価され、資金はスムーズに調達することができた。ちなみに、投資がピークを迎えた2000年代前半でも収益利益は65億~75億円(経常利益率は10%近い)にのぼり、1株当たりの純資産が約1千円を超える優良経営を維持している。

ビッグバードの整備では、テナントには集客力のある店を積極的に勧誘し、人気商業施設並みの集客を目指した。165頁・


166頁・その結果、航空旅客以外のショッピング客などが大勢訪れるようになったほか、旅客も早めに空港に到着してショッピングや話題店で食事を楽しむ風潮が生まれ、駅弁ならぬ空便などのヒット商品も誕生した。

これらの収益は高い配当で株主に還元されるから株価も高い数順で維持されているが、97年には欧州の投資会社マッコーリー・エアポートが収益性に目を付け、大量の株式を取得したことから、注目を浴びている。

平成28年1月2日・


表4・1・日本空港ビルデング

の小会社と孫会社

業種

社名

主な業務

施設の管理保守

日本空港テクノ(子)

ターミナル施設などの保守管理

桜商会(孫)

清掃・廃棄物処理

物販

国際協(子)

全国空港店などへの一般品・免税品の卸売及び小売

日本航空ロジテム(子)

商品の運送・検品

アイテイエス(孫)

ゲーム機・遊具機などの娯楽機械の設置

飲食業

東京エアポートレストラン(子)

羽田・成田空港における飲食店業及び軽食の製造販売

コスモ企業(子)

エアラインへの機内食のケータリング、冷凍食品の製造

会館開発(孫)

飲食施設の運営

小売業

羽田エアポートエンタープライズ(子)

羽田空港での店舗運営

成田エアポートエンタープライズ(子)

成田空港での店舗運営

サービス

ビッグウイング(子)

公告・イベントの企画運営

羽田旅客サービス(子)

旅客サービス・案内業

ヒロインターナショナル(孫)

羽田空港内における優良待合室・会議室の運営

警備

羽田エアポートセキュリティー(子)

羽田空港における警備

(子)=子会社、(孫)=孫会社

1/3/2016 5:10:11 AM


 ・空港ビルにも多くの子会社・166頁・

だが、利用者からすると納得がいかないのは、ターミナルビルとして高収益を挙げているにもかかわらず、ビッグバードのオープン以降は旅客のサービス施設利用料(PSFC)が新たに設けられ、国内旅客から1人100円、国際旅客から2,040円(成田と同額)を徴収されるようになったことだ。

空港ビルとしては、乗降施設の規模が拡大して投資額がけた違いに大きくなったこと、商業施設の盛況は企業努力によるものと考えているが、多額の利益が利用者に還元されずに関連の子会社や孫会社(表4・1)に流れており、釈然としない。しかも、グループ会社は国土交通省や大株主であるエヤラインOBの天下りの主要な受け皿となっている。

また、国際線の旅客ターミナルビルと貨物ターミナルビルは異なる企業が運営しているため、国際線のPSFCは別会計となる。従って、空港ビルの商業施設がいくら繁盛しようとも、PSFCが減額されたり、滑走路建設費の償還が早まることはなく、空港ビルの内部留保と株主への配当だけが増える構図だ。

平成28年1月2日


天下り先の空港環境整備協会・167頁・16/1/2 14時27分34秒・

羽田空港など第1種空港は国有地で、企業が土地を購入することができないため、施設を建てる場合には国からスペースを借りることになる。本来であれば、希望する企業が入札で権利を取得し、施設を建てるべきなのだが、羽田には国交省直轄の天下り会社や教会等がいくつも存在し、指名で事業を展開する構図になっている。

その一つが財団法人空港環境整備協会だ。68年に設立され、北海道から宮崎まで、国が管理する21空港で26の駐車場を運営している。羽田ではP2とP3を運営し、売り上げは年間約90億円(07年度。同協会のホームページより)、利益は30億円近く(03年度。05年4月13日付読売新聞「公費の行方」に達する。167頁・


168頁・公益法人である所似は、駐車場の運営だけでなく、空港周辺の環境

対策の一部を担っているからだ。だが、騒音対策となる民家の防音工事や移転保証などは国や成田空港会社が行っており同協会は周辺自治体の要望を受けて、公民館などにカラオケセットやスポーツ用品を寄付したりテニスコートやパークゴルフ場の整備など、細々とした対応を行っている(前掲の読売新聞)。


問題は同協会が天下りの人事の温床になっていることで、350名の職員のうち、国家公務員の再就職者が180名に達し(08年4日の第169通常国会の国土交通委員会における鈴木航空局長の答弁)、常勤役員7人のうち5人が天下りで占められている。ちなみに、会長は元東京航空局長、理事長は元大臣官房審議官、専務理事は航空大学理事長、常務理事は元東京航空局次長だ。


06年度に同協会が国から交付された金額は2億2600万円にすぎず、本来の設立目的である環境対策の業務だけでは大勢の国家公務員の再就職の受け入れや、役員に過大な給与を支払うことができないが、副業の駐車場経営で多大な利益を上げている。もっとも協会としては、駐車場を整備することによって空港の環境整備を行っていると説明するが、協会には正味財産が年間売上高を上回る95億4600万円もプールされている。


駐車場の建物は国の空港整備特別会計で建設され、同協会が運営を委託する。02年度末時点で全国26ヵ所に建設されたが、23ヵ所は同協会が無競争で運営を任された。空港内は独占なので競争にさらされるリスクもなく、駐車場の運営は場所と需給関係で決まるので、大したノウハウも不要だ。 

会計検査院は03年度に国交省に対して「駐車場料金の適正化の検証と運営者を複数の業者から選ぶ仕組みの導入」を求めたが、国交省は東京と大阪の航空局長に通達を出して「料金の見直しと、新たに整備する駐車場の業者の選定に公募制を導入する」指示を出したものの、既存の駐車場の業者選定に関しては改善しなかった。168頁・


169頁・国交省の意識では、管轄している土地は「自らのもの」なのかも知れないが、国有財産は国家のものであり、国民のものである。個人の利益のために使うことは許されない。 


権益だけで生きる空港施設・169頁・

2つ目は、空港施設株式会社である。成田、伊丹、関空、鹿児島などの空港で、格納庫など空港関連施設60ヵ所も運営している。事業としては、エアラインなどからの要請を受けて、国から土地を借り受け、施設を建てて貸す利権ビジネスだ。

年間の売上高は220億円前後で、その68%が不動産賃貸事業、20%が熱供給事業(羽田での売上比率は86%)によるものだが、毎年50億円弱の経常利益を確保している超優良企業だ。東証1部に上場され、1株当たりの配当は航空業界では破格の16円を維持しているが、それでも利益余剰金は年間売上高を上回る267億円(08年3月期)に達する(表4・2)。 


主要株主は日本航空インターナショナルとANAが各19・16%、政府系事業ファンドのDBJ事業価値創造投資事業組合が12・60%で構成されている。空港施設なる利権企業が存在しなければ、エアラインは国(国交省と財務省)から直接土地を借り受け、賃貸料を支払えば済むので、同社の売り上げのほとんどは不要になる。169頁・


170頁・

表4・2・日本の航空と空港会社の収益性(2008年3月期、連結)

売上高

営業利益

利益率

1株当たり資産

JAL

2兆2,304億円

900億円

4%

110円

同(07年)

2兆3,015億円

229億円

1%

113円

ANA

1兆4,878億円

844億円

5,7%

234円

成田空港会社

1,999億円

329億円

16,4%

10万4,953円

日本空港ビル

1,394億円

77億円

5,5%

1,181円

空港施設

251億円

52億円

20,9%

775円

(出所・各社ホームページなどの資料を基に著者作成)

平成28年1月3日


空港世説は、ユーザーの要請に応じて開発を行うのでリスクはほとんどない。建設は大手ゼネコンが請け負うのでノウハウも必要ない。事業の要は国から借用権をスムーズに借り受けることだが、国交省が他には許可しないので、仕事は他に流れない。

この企業の異様さは役員構成に端的に表れている。従業員わずか127名しか在籍していないにもかかわらず、取締役12名(うち第取締役4名)、監査役5名(うち常勤3名)、執行役員9名という立派すぎる構成だ。執行役員はまったく重複していないことからしても、取締役は名目職になっていることが分かる。

会長は元運輸省海上保安庁長官、社長は元運輸省自動車交通局長、副社長はJAL、ANAのOBのほか、取締役のほとんどが運輸省のOB、またはエアラインのObで占められている。

彼らが気持ちの上でも腰掛である証拠には、自身の所有株式が極端に少なく、代表取締役では社長が4千株(4口)、1千株が2名(副社長を含む)でゼロが1名だ。経営自体に愛着などないのだ。

さらに、空港施設は東京空港冷暖房、アクアテクノサービス、AFC商事なる連結子会社(非上場)を持っており、10名前後の役員を抱えている。170頁


171頁・16/1/3 5時45分24秒・ここまで

空港施設は羽田空港内で水道を独占的に供給しているが、その価格は尋常ではない。空港施設は東京都水道局から1M3当たり800円で購入し、ユーザに1,400円で転売する。国交省が空港内に給水管などの設備を整備した費用の使用料として400円を国に払うが、同社には200円が落ちる(「週刊ポスト」03年4月11日号)。それでも「新千歳の3倍」よりはましと言うから驚く。水質検査はアクアテクノサービスに委託するので、要は口銭という訳だ。

国交省などの国は優良な天下りポストを大量に確保でき、エアラインには利益の一部を還元することで成り立っているが、膨大な利益は空港の下物整備に還元されることなく、わずかの特定株主と天下り役員の給料に消えていく。171頁・


子会社が多過ぎる成田空港会社・171頁・




コメント

会長は元運輸省海上保安庁長官、社長は元運輸省自動車交通局長、副社長はJAL、ANAのOBのほか、取締役のほとんどが運輸省のOB、またはエアラインのObで占められている。


彼らが気持ちの上でも腰掛である証拠には、自身の所有株式が極端に少なく、代表取締役では社長が4千株(4口)、1千株が2名(副社長を含む)でゼロが1名だ。経営自体に愛着などないのだ。


さらに、空港施設は東京空港冷暖房、アクアテクノサービス、AFC商事なる連結子会社(非上場)を持っており、10名前後の役員を抱えている。170頁

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