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2014年6月

2014年6月 3日 (火)

消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! [新書]植草一秀 (著)

引用

消費増税亡国論 三つの政治ペテンを糺す! [新書]植草一秀 (著)   5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (26件のカスタマーレビュー)

 

シロアリ退治なき消費増税強行の先にあるのは、負担は北欧並み、給付はアメリカ並みの悲惨な未来

 

「シロアリ退治なき消費増税」こそギリシャ化への道だ 巨大消費増税を推進する財務省の裏を知り抜く最も危険なインサイダーが命懸けの徹底告発民主主義を踏みにじる野田政権、許されざる三つの過ち

1.マニフェスト違反の官僚利権(天下り)擁護

2.日本財政は真正危機にあるとの風説の流布

3.社会保障制度改革なき「単なる増税」の推進 迫りくる総選挙で主権者国民が審判を下すための必読書

新書: 368ページ出版社: 飛鳥新社 (2012/4/18)言語: 日本語発売日: 2012/4/18

目次

はじめに・・5頁・

2010年3月28日未明、民主党の前原政調会長は消え入るような声で「政調会長への一任」を申し出た。かすかに拍手の音が響いたが、圧倒的な怒号にかき消された。「議論はまだ終わっていない」、「多数決採決しろ」。

「シロアリ退治なき消費増税の実現」の政府原案はこうして、非民主的な手続きを経て決定された。3月30日には閣議が開かれた。消費増税案を閣議決定するためである。政権の連立パートナーは既に、国民新党だけになっていた。2010年5月末の普天間飛行場の辺野古移設日米合意を受け入れられないとして、社会民主党が連立政権から離脱していたからだ。連立政権最後のパートナーとなった国民新党の亀井氏静香代表は、国民と交わした約束を破るわけにはいかないとして連立解消を申し入れた。筋の通った決団である。

2009年9月に樹立された鳩山由紀夫政権が掲げた方針は「シロアリ退治なき消費増税の阻止」だった。阻止と実現という正反対の方針が、同じ2009年8月総選挙を正統性の根拠とする二つの政権の政策であることは、二重の驚きを与えるが、これで民主党は終わったと感じたものが多い。

6頁・

2011年11月にハワイ・ホノルルで開催されたAPEC首脳会議。この会議で野田佳彦氏は、「TPP交渉参加に向けて関係国との協議に入る」ことを表明した。TPP交渉に参加するには、まず関係国と協議し、関係国が了承する必要がある。従って、関係国との協議に入るとの意思表明は、TPP交渉への参加意思表明にほかならないが、その点を問われると野田氏は言葉を濁した「関係国との協議に入る。それ以上でも以下でもない」を繰り返すばかりだった。

その背景には、民主党内の反対意見多数という事情があった。野田佳彦氏がTPP交渉への参加是非についての議論を民主党に求めたのは2010年10月11日だ。日本の未来を根本から変えてしまうかもしれない、強烈な潜在的起爆力を秘めるTPP。その枠組みに日本が加わるのかどうかは、文字通り日本の命運を左右する問題である。国民的論議を喚起して、慎重に決論を得なければならない問題である。

それを野田氏は、APEC総会のわずか一ヶ月前になってから、党の論議を求めたのである。党内論議は沸騰した。結果として、党内では反対意見多数の状況に至った。それにもかかわらず、野田氏は対外的に、実質的なTPP交渉への参加意思表明を独断で勝手に実行してしまった。

7頁・

もちろん、反対意見多数の現実を知った上である。理由はただ一つ。米国のオバマ大統領から参加意思を表明しろと命じられたからである。この正統性を欠くTPP交渉への参加意思表明を取り繕うために、国内に向けては、参加意思表明とは言わず、回りくどい言い方をして「これ以上でもこれ以下でもない」と嘯いたのである。

日本国憲法が定める民主主義の仕組みはこれと違う。確かに内閣総理大臣の権限は大きいし、政党党首の権限も大きい。しかし、その根本にある定めはより絶対的なものである。国民主権、国民がすべてのことがらについて、最終的な決定権を持つ仕組みなのだ。

このことは、日本憲法前文に明記されている。国政は国民の厳粛な信託によるものであり、その権限は国民に由来する。また、国民は正当に選挙された代表者を通じて行動するとも書かれている。さらに第九十九条には、国務大臣や国会議員の憲法擁護、尊重義務が定められている。

回りくどい言い方になってしまったが、与党党首、あるいは内閣総理大臣といえども、自分の好きなように行動することは認められていない。菅直人氏がかつて、議会制民主主義は期限を切った独裁制だと述べたが、これは大きな誤りである。このような考えを持つ人物が首相の座にあったことは、日本にとって最大のリスクであったと言わざるを得ない。

8頁・

与党党首や首相の権限が大きいことは事実なのだが、これらの職位にある者が民主主義のルールを逸脱して行動することは認められていない。民主主義政党を自認するなら、少なくとも党内の意思決定手続きは民主主義のルールに則ことが必要である。野田佳彦氏はTPPの方針決定や、社会保障・税一体改革の素案や大綱決定について国会で問われるたびに、「十分な時間をかけて、最後に誰かが拍手をするということを民主的プロセスとは言わない。意見対立がある場合、とことん議論を尽くして、それでも決定できないときは、最後に多数決で決する。これが民主主義のプロセスである。

消費増税の民主党事前協議の最後の場面で、野田民主党は本性を表してしまった。議論が対立したから、最後は多数決採決が不可欠だったのに、多数決を取らず、一方的に政調会長一人を宣言して論議を打ち切り、少数意見をとうの意見として決定してしまった。民主党が終わったという意味は、民主党がこの瞬間に、名実ともとに「非民主」党に変質してしまったことを意味する。民主主義の根本ルールを衆人環視の下で踏みにじった代償は重い。野田氏がその重みを骨身しみてかみしめる時が訪れるのに、長い時間は必要ないだろう。

9頁・民主党は多数決採決を実行すべきだった。結果は増税提案の否決で終わっただろう。しかし、それでいいのである。「身を捨ててこそ浮かぶ瀬もあれ」である。正当性のない増税法案を民主主義の根本ルールを踏みにじって押し通すことより、民主主義のルールに委ねて、仮に否決されたら、機を熟するのをじっくりと待つことが正道であった。

民主党は消費増税の前にシロアリ退治に全力を尽くすことを国民に約束した。私のブログによる情報拡散で全国に知れ渡った、大阪での2009年8月15日、野田克彦氏による「シロアリを退治しないで消費税を上げるというのはおかしいんです」演説にある「シロアリ退治」にはまだ、何一つ手をつけられていない。

社会保障・税一体改革との題名がつけられているのに、社会保障改革はほとんど具体案が提示されていない。また不安定な経済状況下で大増税政策を強行実施すれば、経済が崩壊してしまうことは、過去の事例で証明済みである。景気条項に数値基準を設けなかったのは、不況でも増税を実施するとこを宣言したのに等しい。民主主義のルールを踏みにじり、しかも、増税の前に実行すべきことには手をつけず、ひたすら増税に突き進む野田克彦氏は、財務省に宿るもののけに憑かれてしまったのではないかと、その身を案じてしまう。

誤解の内容に記述するが、私は日本の財政を健全化させるための構造改革は必要であると考えている。

10頁・急速に進展する高齢化を踏まえれば、年金制度の改革を避けて通れない。ある程度の水準の社会保障制度を維持するには、負担の増加も避けられないと思う。

だが、資金が不足するから直ちに増税に直行するとの行動には問題がある。官僚利権を中心に、政府支出には強大なムダが含まれているからだ。

欧州で政府債務危機が発生したとこを誰よりも喜んだのは財務省である。財務相は、シロアリ退治なき消費増税の中央突破を図るうえで、この上なく使いやすい素材が提供されたと感じたに違いない。政府債務危機に見舞われた欧州諸国と日本の財政状況には決定的な差があるのに、その説明を一切行わず、ひたすら危機を煽る行動が示され、その延長上に増税の即時法制化が推進されている。

たしか日本の経営収支黒字の縮小が見込まれ、同時に急速な高齢化が進行している。財政構造改革を実行するための時間的猶予は徐々に狭まりつつある。しかし、財政構造改革には適正な順序がある。その順序に従って問題解決を進めて行かないと、負担は増えるたのに社会保障は手厚くならないという根源的な問題が必ず浮上してしまう。国民の血税がシロアリに吸い尽くされるからである。

2010年4月から5月にかけて、法務省と最高裁OBに関係する金銭スキャンダルが表面化した。

11頁・ところが、このスキャンダルが一ヶ月も経たないうちにうやむやになって消えた。これと引き換えるかのように実行されたのが、東京地検特捜部による、にせの調査報告書を使った小沢一郎氏強制起訴誘導という謀略的行為だった。裏側で何が起きていたのか、戦慄の強大ミステリーの輪郭が少しずつ浮かび上がり始めている。

法務省OBの金銭スキャンダルとは、ある天下りの法人の実質私物化の疑惑である。理事長は天下り法人から無理し無担保の融資を受け、天下り法人が賃貸しているオフィスを、理事長個人の法律事務所に又貸ししていた。問答無用の不祥事であるが、こうした天下り法人が数え切れないほど存在している。

高速道路料金の土日割引を得ようと、普段は高速道路など使うことのない人まで競って購入したETC。車一台がETCを取り付けるたびに、セットアップ料525円+カード発行料94円50戦が、天下り組織の「道路システム高度化推進機構(ORSE)」に振込まれる。ORSEの常勤役員五人のうち二人は国交省OB、一人は警察庁OBだ。

海外のETC類似のシステムには、ゲートにバーがほとんど使われていない。監視カメラでチェックできるからバーは不要なのだ。それなのに日本ではバーが使われている。その最大の理由は、天下り会社にバーのメンテナンスをやらせることにある。業者選定に入札はない。

12頁・随意契約で天下り会社に巨額の資金が流れる。

福島で起こしてはならない原発事故を引き起こしてしまった東京電力。原発のある地域の自治体には年間1200億円以上の国費がばら撒かれてきた。これに、電力会社が寄付金として流し込んできた金額が上乗せになる。これらの費用は税金で国民が負担するか、電力料金の中に上乗せされて国民が負担してきた。

挙げればきりがないのだが、どれほど重税を課したとしても、途中でシロアリに吸い取られるなら、社会保障が充実するわけがない。このまま進めば日本は、負担は北欧並み、給付は米国並みという、世界最悪の非福祉国家になってしまう。その時、政治が依然として非民主党に仕切られていたら、もはや地獄である。

日本の財政事情を正確に確認した上で、財政構造改革の適正な手順を考える。同時に、サブプライム危機後、福島原発事故後の新しい時代の経済のあり方を考察する。政治は主権者国民の幸福のために存在するものだ。

本書を通じて一人でも多くの人にこの大事な問題を考えていただければ幸いである。大事な問題の最後の結論は国民が出さなくてはならいことを、読者が正しく認識してくださることを願う。

平成26年6月3日 火曜日

 

 

第一章  シロアリ退治なき消費増税・・13頁・

2009年8月15日大阪街頭演説・・14頁・

チャーチルの演説は「ネバーギブイン、ネバー、ネバー、ネバー」・19頁・

ネババネバ官民癒着岡田克也副総理の起用・24頁・

・新ユニット・「天下り決死隊」の結成・29頁・

・真なくば立たず・・34頁・・

第二章  一体改革という名の単なる増税・37頁・

経済下方屈折時の社会保障制度拡充がもたらした矛盾・・38頁・

高齢化社会を支える有力な財源候補としての消費税・・42頁・

消費税を検討するための三つの前提条件・・48頁・

インセンティブ・コンパーティビリティ・・55頁・

年金損失を高齢者消費税で穴埋めさせるという論理・・66頁・

霞ヶ関文学の教本「社会保障・税一体改革大綱」・71頁・

野田街頭演説の核心を改ざんしたNHK・・76頁・

 

第三章  民主主義の命はデュー・プロセスにあり・・82頁・

そもそも国政は国民の厳粛な信託によるもの・・84頁・

マニフェストにはルールがある・・89頁・・

小沢民主党の躍進と激化した小沢氏攻撃・・93頁・

2009年5月民主党代表選における暗闘・・98頁・

「シロアリ退治しないで消費税上げるのはおかしい」公言したの誰だ・・101頁・

鳩山由紀夫政権が激しいメディア攻撃を受けて続けた理由・・104頁・

米国は対米隷属を誓わぬ政権を許さない・・108頁・

財務省にとっての悪夢でしかなかった鳩山由紀夫政権の誕生・・114頁・

菅直人氏の強硬発言の裏側にあった巨大な政治謀略・・118頁・

「菅敗の終わった2010年7月参院選・・121頁・

民主主義の適正手続きを踏まない非民主的な野田佳彦氏・・124頁・

 

第四章 特権官僚が蝕むこの国の骨組み・131頁・

公務員は全体の奉仕者である・・132頁・

特権官僚の何が問題か・・135頁・

財務官僚の日銀幹部への天下り・・140頁・

官官天下り・・・148頁・

官民天下り・・・152頁・

低くない公務員の処遇・・・158頁・

嫉妬や羨望からではなく民主主義実現のために必要な天下り根絶・・163頁・

巨悪の存在を小悪で隠そうとする財務省・・166頁・

このまま進む到達点は「負担は北欧並み、給付はアメリカ並み」・・169頁・

 

第五章 増税の前にやるべきことがある・・173頁・

政権転覆までを視野に入れる財務省の横暴・・174頁・

どうしても必要な天下り根絶宝生の整備・・180頁・

「マニフェスト選挙」を宣伝した世紀臨調の沈黙・・182頁・

TPRという名の巨大な言論統制プロジェクト・・186頁・

TPR言論統制に風穴を開ける草の根ネットからの情報発信・・189頁・

一段と偏向の度合いを強めるNHK政治報道・・193頁・

放送法を抜本改正してNHKの解体的改革を断行せよ・・196頁・

天下り廃止がむだな政府支出を切る特効薬になる・・202頁・

プロパー人材の登用・・・204頁・

小沢一郎氏が巻き込まれた政治謀略の概要・・205頁・

小沢一郎氏裁判の九つの最重要点・・210頁・

人物破壊工作・・・215頁・

国際比較では少ない日本の国会議員定数・・222頁・

二院制には意義がある・・・225頁・

政治にカネをかけてはいけない・・228頁・

地方政治の抜本改革・廃県置藩の断行・・231頁・

 

第六章 日本財政が危機にあるというデマゴギー・・235頁・

膨張したデリバティブ金融商品バブルの崩壊・・236頁・

金融市場混乱に責任を負うべき無責任体質の格付け機関・・241頁・

ギリシャ政府債務危機を増税推進に利用するざいむしょう・・246頁・

フローベースでは悪化した日本の財政収支・・249頁・

経常収支黒字国に財政危機は発生しない・・254頁・

日本政府資産超過の状況下で財政危機は発生しない・・258頁・

中曽根政権の増税なき財政再建の成功・・264頁・

財政再建の要諦は「北風と太陽」にあり・・269頁・

金融危機と大震災がもたらした赤字拡大・・274頁・

財政再建実現に向け万全の基礎工事が不可欠・・278頁・

 

第七章 日本再生の方策と国民の政治選択・・283頁・

経済政策の目標は国民生活の安定にあり・・284頁・

景気回復なくして財政再建なし・・292頁・

財政再建に向けての適正なプロセス・・297頁・

外貨準備50兆円損失の衝撃・・303頁・

日本経済再生50兆円特別枠の一石五鳥・・309頁・

東電福島第一原子力発電所放射能事故と今後のエネルギー政策・・316頁・

物質文明追求から精神文明文化追求への回帰・・323頁・

公的資金で東電が救済される本当の理由・・326頁・

東の時代、日本の時代、地方の時代・・332頁・

日本がTPPに参加すべきでない理由・・337頁・

「私」を優先する政治家は対米隷属の路線を選ぶ・・345頁・

次回総選挙と政治の対立軸のねじれ・・350頁・

最後に決論を下すのは主権者である国民・・354頁・

おわりに・・・米・官・業利権複合体と闘うことは命をかけるということ・・・360頁・

平成26年6月3日 火曜日

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