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2014年5月12日 (月)

ビジネス新大陸の歩き方・台18回「新・生態系」企業研究第6弾!・ドイツの最強群を支える地方分権「州」の競争力・大前研一著

引用

ビジネス新大陸の歩き方・台18回「新・生態系」企業研究第6弾!・ドイツの最強群を支える地方分権「州」の競争力・大前研一著

前回まで、シリコンバレーを中心とするアメリカ西海岸の新しい「生態系8エコシステム」企業群」や、今後拡大していきそうな生態系について述べてきた。しかし、シリコンバレーの生態系が成長・繁栄しているのはアメリカに世界中から優秀な人材を吸い寄せる移民政策や企業家を様々な面から支援するシステムがあるからで、そういうものが全くない今の日本では、シリコンバレー的な生態系は生まれない。

 

そんな日本が参考にすべき国として筆頭に挙げられるのが、ドイツである。そして、ドイツ企業の強さは、ドイツの国と経済に支えられている。シリコンバレーなき国・日本は、今後どこに針路「しん‐ろ 【針路】船舶・航空機などの進む方向。コース。「南に―をとる」「―を外れる」2 目ざす方向。進路。「党の―」とるべきなのか」?

それを考えるため、今秋、私が主宰する企業経営者ネットワーク「向研会」のめんがー約70人とともにドイツを視察してきた。

ドイツに行ってみて、日本との際立った違いを痛感した点は大きく三つある。

一つ目は、国家の「統治機構」だ。連邦国家ドイツは、13の州とベルリン、ハンブルク、ブレーメンの3都市州を合わせた16の州で構成されている。いわばアメリカと同じ合衆国(合衆国)である。

そして、各州が強力な自治権を有し、立法・行政・司法の3権はもちろん、徴税権も持っている。企業誘致をはじめとする産業政策も、国と関係なく、それぞれの州が独自に展開している。実際、今回視察した各州の関係者は「邪魔者はベルリン(中央政府)だ。何か問題があったら、我々はブリュッセル(EU)と交渉する」と異口同音に話していた。ドイツの州は国家を超えてヨーロッパ全体、さらには世界中のマーケットを相手にしているのだ。そのため、州ごとに独自の産業や企業が発達し、高い競争力を誇っているのである。

 

地方分権の起源は敗戦後の占領政策

 

では、なぜ同じ第二次大戦の敗戦国でありながら、中央集権の日本とは180度異なる地方分権の統治機構がドイツにできたのか?シンクタンクでマーストリヒト条約制定などに携わったヴェルナー・ヴァイデンヴェルト教授の話によると、敗戦後の占領軍(進駐軍)の統治政策の違いが挙げられる。

 

つまり、ドイツでは占領軍がナチスを再興させないために中央集権を徹底的に忌避し、州が強い力を持つ地方分権の憲法を作ったのである。その後58回、時代の変化に合わせて憲法を改正しているが、地方分権の根幹は全く変えていない。

 

一方、日本の場合はGHQ(連合国最高司令官総司令部)がお粗末だったため、何が日本の本質的な問題点だったのかということついての洞察が全くなかった。だから、二度と武力を紛争解決の手段として使いません、といった表面的な表現しかないし、統治機構に関しては「地方政府」という概念は不在である。

しかも、ドイツの占領軍にはアメリカに亡命したユダヤ系ドイツ人が多く、憲法をドイツ語ですんなり起草できたが、日本の占領軍は日本人通訳を介して起草し、その通訳がかなり勝手な推測(たとえば天皇制を廃止すると統治不能になる、など)で解説したと思われる。

このため、最初はGHQは天皇の戦争責任を断罪しよとしていたのに、結局、現行の昭和憲法(日本国憲法)も天皇が統治権を総攬する絶対君主制を規定した明治憲法(大日本帝国憲法)を踏襲し、第1章に「天皇」を持ってきてしまった。しかも、第8章の「地方自治」では「地方公共団体」などという地方自治・地方政府とは程遠い概念の言葉まで出てくる。

 

つまり、江戸時代から続いている悪しき中央集権が全体主義に至ったという洞察のないまま、文章に何となくアメリカ的な民主主義の匂いをちりばめて中央集権システムを維持したのが昭和憲法なのである。

今、自民党は憲法改正草案を発表している。しかし、その中身は第1章が「天皇」のままになっているのをはじめ(私自身は、天皇は憲法に書くのではなく、自然法で2000年続いたのだから、そのままで護持できるという意見だ)、第8章の「地方公共団体」を「地方自治体」に言い換えるなど、昭和憲法の字句修正程度のものでしかない。

ドイツに比べてみれば、日本が停滞・低迷している原因は中央集権の統治機構にあることは明々白々なのに、その基本認識が欠如しているのだ。

ただ、日本の急速な戦後復興と高度経済成長の局面では、中央集権が功を奏した面もある。しかし、ドイツも地方分権の連邦国家で日本と遜色のない復興と成長を成し遂げ、今はドイツ経済のほうが好調を持続しているのだから、日本もある程度の成長を遂げた時点で地方分権にシフトすべきだったと私は思う。

企業経営の視点から見て、日本よりドイツの憲法・統治機能のほうがよかったと思われる理由は何か?

 

一つは、企業が簡単に国境を越えられるということだ。日本の場合、地方は国がコーディネートしなければ何もできないが、ドイツの場合は各州に外務大臣や産業大臣がいて、企業のグローバルな活動を州が全面的に支援しているのだ。

もう一つ、ドイツが優れている点は、16の州が国際化、産業誘致、教育レベルなどのあらゆる面で互いに熾烈な競争を繰り広げていることだ。

 

国が助けてくれないから自分たちで他の州との差別化を図り、戦略的な思考で産業政策を展開している。地方自治体が中央の予算の分捕り合戦に終始している日本とは異なり、州が富の創出や企業のグローバル化の推進役になっているわけだ。

たとえば今回、バイエルン州では産業大臣に会ってプレゼンテーションを聞いたが、日本の地方自治体に比べると格段にレベルが高かった。バイエルン州には、航空宇宙・防衛のエアバス・グループ、自動車のBMWとアウディ、保険のアリアンツ、製造コングロマリットのシーメンス、スポーツ用品のアディダスとプーマ、バス・トラック・機械のMANなど、世界に名だたる超優良企業がひしめき合い、国とは関係なく自由にグローバルなビジネスを展開している。

また、バイエルン州からドイツ企業約100社が日本に進出し、日本企業も約330社がバイエルン州に進出している。バイエルン州と日本の公益額は年間約7000億円に達し、同州にとって日本は最も大切な国に一つになっている・・・。

要するに、ドイツは州が国から完全に自立し、地元企業を後押しすることで繁栄しているのだ。残る二つのドイツと日本の違いについては、次号で詳述する。

平成25年12月8日

平成26年5月12日




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