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2014年9月30日 (火)

国家のシロアリ・災害リスクは先進国の土地取引では重要事項「日本人の命を守る」と豪語している安倍首相は、広島の土砂災害の際、のんきにゴルフに興じていて、叩かれた。しかし、この問題は危機意識や緊張感の問題とはちょっと違う

引用

ハザードマップ


ハザードマップとは、自然災害による被害を予測し、その被害範囲を地図化したものである。予測される災害の発生地点、被害の拡大範囲および被害程度、さらには避難経路、避難場所などの情報が既存の地図上に図示されている

http://disapotal.gsi.go.jp/viewer/index.html?code=6

13:34 2014/09/30



嘉田前滋賀県知事が告発 「広島土砂災害は自民政権の人災」 2014年9月16日

滋賀県に全国初の「安全度マップ」を導入した/(C)日刊ゲンダイ

 

災害リスクは先進国の土地取引では重要事項「日本人の命を守る」と豪語している安倍首相は、広島の土砂災害の際、のんきにゴルフに興じていて、叩かれた。しかし、この問題は危機意識や緊張感の問題とはちょっと違う。なぜ、日本ではかくも災害が多いのか。それは自民党政権による“人災”だという。前滋賀県知事が語る衝撃の“真相”――。

 

――広島土砂災害では73人の犠牲者が出ました。安倍首相は集団的自衛権や原発売り込みには熱心なのに、この時(8月20日)はゴルフをしていました。

安倍首相を含めて政権与党が「日本人の命、命」と言うのなら、まず、土砂災害や水害、そして「環境破壊災害」と位置づけられる原発事故から国民の命と財産を守るべきではないでしょうか。何度も安倍首相は「母親と子供が避難する米軍護送船を守り切れないので集団的自衛権が必要だ」とパネルを使って訴えていましたが、いま目の前の災害から国民を守れないことの方が切実です。災害リスクは先進国の土地取引では重要事項

――安倍首相は自分に都合がいい時にだけ「国民の命」を口にするんじゃないですか?

広島土砂災害は、まさに歴代の政権が戦後一貫して続けてきた「土地持ち階層優遇政策」が招いた人災の側面があると思います。戦後の政権与党の政治と行政の責任といえます。

――どういうことでしょうか? 

日本では、政府が国民に自然災害を受けるリスクを十分知らせず、危険な場所に住宅や福祉施設を拡大してきたのです。私は環境社会学者として滋賀県内や近畿圏の過去の水害被災地を調査しました。その結果、水害は社会現象の側面が強いということがよくわかりました。旧住民が経験で知っている水害リスクなどを新住民に知らせることなく、土地を売却して新しい宅地開発などをしているのです。海外の先進国との決定的な違いにも愕然とし、それが2006年、知事選に立候補した動機でもあるのです。――海外は違うのですか?

先進国では災害危険区域を地図に示した「ハザードマップ」が当たり前になっていました。アメリカではハザードマップを参考にして水害保険が運用されていますし、フランスでは「それぞれの土地で過去100年間、どういう水害があったのか」ということを反映したハザードマップが作成され、不動産取引における重要事項説明になっています。ところが、日本はハザードマップを持っていない。大きな河川のハザードマップは平成10年代にようやくでき始めました。しかし、一部の大河川だけで、小河川や農業用水や下水道などがあふれるリスク、あるいは土地が低い場合のリスクをも織り込んだ統合的リスクマップはなかった。滋賀県では流域治水条例を成立させ、「地先の安全度マップ」を作りましたが、これが全国で初めてでした。

 

――2期8年の嘉田県政の総決算ですね。当初、流域治水条例に多くの自民党県議が反対していました。実はハザードマップは、地価が下がるので土地所有者には不都合なのです。大量の土地を持っている人たちは、どちらかというと古くから住んでいる地主側です。この人たちは水害リスクの高いところは経験的に知っている。知っていて宅地開発業者などに売る。最近は福祉施設などが、リスクが高い地域にできる傾向にあり、大きな問題をはらんでいます。水害のリスクがあるのに知らされずに土地を買わされるというのは、不良品をつかまされるようなものです。行政としても責任を持って安全管理をしないといけない。それで、フランスでは当たり前の「土地取引でのリスクマップの提示」を流域治水条例に盛り込みました。土地取引時には「地先の安全度マップ」を提示する。これを宅地建物業者に努力義務化したのです。9月1日から施行しています。

▽かだ・ゆきこ 1950年5月18日生まれ、京大大学院、米ウィスコンシン大大学院修了。農学博士。滋賀県立琵琶湖博物館総括学芸員、京都精華大学人文学部教授を歴任し、2006年7月2日の滋賀県知事選に当選。10年再選。12年の衆院選では「日本未来の党」をつくったが、翌年代表を辞任。びわこ成蹊スポーツ大学長就任予定。

――地主の代弁者が自民党という構図ですか?

政治的にはそのような傾向にあります。そもそもサラリーマン、被雇用者層は、議員になれない、なりにくいのが今の日本の政治体制です。土地持ちの古い保守層は自営業などが多く、政権与党の代弁者という傾向が強いですね。水が氾濫しやすい、水害を受けやすい場には新住民が住む傾向があり、その土地の成り立ちを知らず、水害に遭う。そんな例が日本各地にありました。私は土地を持てるものと持たざるものの間の社会的不正義が許せなかった。それがいまだに構造的に続いている。この不公平が世代を超えて継承される恐れがある。社会的正義感からして許されないことです。

 

――しかし、条例には反対が多かったのでしょう?

「地先の安全度マップ」を公表しようとした時に「地価が下がる。人心を混乱に陥れるのはいかがなものか!」と徹底反対した市長さんたちが、滋賀県内にも何人かおられました。土地を持っている地主側の人が多かったですね。それぞれに利害をもって判断をされたようで、悲しいことです。――それでも滋賀県はマップができましたが、日本全国を見回せば、マップがない地域ばかりです。

ハザードマップが十分に活用されていない日本の実情はあまりにひどい。これは地主や不動産開発業者ら利害集団に対する迎合政策としか言いようがありません。歴代の政権与党は危険地域に人が住むのを野放しにする一方、リスクが高まった水害対策としてダム建設などハード整備を訴えてきました。確かにある一定規模の水害まではダムは防げますけれども、巨額の税金をつぎ込む必要があり、効果が出るまでに何十年も時間がかかり、自然破壊や集落移転の弊害が伴う。先進国では常識のハザードマップを使って「ここは危ないところですよ」と住民に知らせ、また行政としても土地利用規制や建物規制をした方がはるかに有効なのに、ハザードマップの活用を十分に進めてこなかった。歴代の政権与党は、支持者である地主と業界団体のために人命軽視で非効率な防災政策を続けてきたとさえいえます。そもそも今、人口減少社会になってしまったわけですから、「危ないところには家を造らない。造るのだったら、かさ上げをするとか災害対策をして造る」という合理的な土地利用にすることが重要なのです。――災害危険区域に家が立ってしまっている場合でも、正直に「ここは危険ですよ」と伝えればいい。それをやっていないのが歴代政権であり、となると、「人災」といえる?

政府が15年前に土砂災害防止法を作った時にも同じような議論があった。「警戒区域に指定されたら、地価が下がる」と。土地を利用目線ではなく、販売、商売目線で見る人にとっては、リスク開示は不都合なのです。私は過去30年以上、河川政策と環境社会学を学んで、徹底的に原因調査を行い、何冊も本も書いてきました。欧州やアメリカの河川政策も現地訪問し研究しました。その結果、ダム以外の方法による治水のほうが合理的な場合が多いことがわかってきました。滋賀県が施行した流域治水政策は世界標準では当然です。政治のリーダーは災害リスクを科学的に正しく知って、正しく伝え、正しく備える仕組みを国民運動とすることに旗を振ってほしい。国民、住民も住んでいる場所の自然災害リスクを、自ら知って備える覚悟を持っていただきたいですね。(聞き手・横田一)▽かだ・ゆきこ 1950年5月18日生まれ、京大大学院、米ウィスコンシン大大学院修了。農学博士。滋賀県立琵琶湖博物館総括学芸員、京都精華大学人文学部教授を歴任し、2006年7月2日の滋賀県知事選に当選。10年再選。12年の衆院選では「日本未来の党」をつくったが、翌年代表を辞任。びわこ成蹊スポーツ大学長就任予定。

9:41 2014/09/30

 


 

国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 単行本 – 2013/12/12

 

福場 ひとみ (著) なぜ復興予算が霞が関の庁舎や沖縄の道路に使われたのか―流用問題をスクープした記者が国家的犯罪の真相に迫る!小学館ノンフィクション大賞優秀賞受賞作。著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

 

福場/ひとみ・1976年、広島県生まれ。同志社大学法学部政治学科卒業、同大学院総合政策科学研究科博士前期課程(修士)修了。政策シンクタンクのスタッフ、経済誌の編集者などを経て、現在は『週刊ポスト』を中心にジャーナリスト活動を行なう(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです) 単行本: 216ページ出版社: 小学館 (2013/12/12)

言語: 日本語発売日: 2013/12/12

目次

第1章 問題の発覚

第2章 流用の実態

第3章 進まない復興

第4章 政局化

第5章 流用の真犯人

第6章 「変わらない国」

 

復興予算=復興した気分になるための予算!?, 2014/1/26

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

 

東日本大震災の復興予算が、遠い沖縄の道路整備に遣われている……このような驚くべき事実が詳細に書いてあります。

特に、核融合炉の開発実験への流用は、原発事故の被害者への侮辱と言えるでしょう。原発事故の収束にかかる費用を考えたら、実現可能性の低い「未来の原子力」に投じるお金などないはずです。

なぜ、これらの流用を行ってきた官僚や政治家に罪悪感がないのか、マスコミは問題視しなかったのか。

彼らにとっての「復興」が、戦後経済成長の夢の再現に酔い、被災地を忘れ去ることでしかなかったからでしょう。

本書が少しでも多くの人に読まれ、本当の復興とは何か考えるきっかけになったらと思います。

制度設計を再考しなくては, 2014/2/4

国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

官僚達の言い訳はこうだろう。

国家予算は、その効果を金額で評価しにくい。また、予算に景気対策的な要素も求められるのであれば、画一的な運用は難しい。そんなに簡単じゃないんですよ。

しかし、この復興予算の流用は酷い。納税者の意図がここまで歪曲して解釈されると、善管注意義義務を怠っているのではなく、悪意があると推定した方が常識的だ。地域外への支出もひどいけど、海外のイベントに支出したら景気浮揚効果もへったくれもない。

この件に関しては、筆者一人が追及していた時間が長いので多少ヒロイックに書かれていたとしても嫌味は感じない。物足りないとするならば、制度設計に関する提案だ。情報開示が重要なのは間違いないが、結局情報開示されていても(自戒を含めて)筆者以外だれも問題提起すらしなかったのだ。

 

オンブズマンも機能しなければ、会計監査院も機能していない。こうした中で、情報開示だけを進めても、改善されないことを本件が証明している。しかし、危機的な財政の中で、増税を打ち消すために景気対策を打とうとしている。財政を規律する枠組みがない中で、国家予算は増大していく。焦燥感だけが募ってしまった。

 

 

「権力の中心が不在であること。それが日本というシステムの本質である。」, 2014/2/17

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

復興予算流用をスクープした福場ひとみの著作で、衝撃的な内容の本である。

私は、流用問題はNHKスペシャルで見ていたし、その後の新聞やテレビでの報道も見ていたので、ある程度知っているつもりだった。流用の原因は、ズル賢い官僚と、官僚の言いなりになっている無能な民主党で、民主党が政権を陥落すれば解決する。自民党が政権を取れば、流用はなくなり、復興も早くなる、と思っていた。

しかし、実際は、まったく違った。

民主党や官僚だけでなくて、自民党も公明党も、そしてメディアも「共犯関係」だったのである。

すべては、幻想なのか。これまで私が観ていた震災後の政局の風景、民主党の陥落から安倍政権の誕生、これですべては良くなって行くというアベノミクス。例えば、野田総理が行った自爆テロ解散。不可思議な予告解散は、その裏で行われていた復興予算の新事業仕分けとタイミングをあわていたという。メディアの関心を逸らすために。

そして、解散。選挙は、原発、TPP、消費税、、、争点多き選挙といわれた。

 

脱原発か推進かが大きな議論となったが、復興や復興予算の扱いは相対的に小さくなっていった。

流用問題は薄められ霞んでしまった。その復興予算で核融合炉の開発予算が組まれていたというのに。

流用する側とって、最良のシナリオで政局は進んだのである。

復興から目を逸らすことは民主党だけでなく、自民党と公明党にとっても好都合だった。

復興を争点として、流用問題に切り込む議論となれば、「3党合意による一種の談合のような形で予算流用を推し進めてきた共犯関係だった」自民党や公明党は、返り血を浴びることになる。彼らは、うまく批判を逃れたのである。そして、本来は批判する立ち場のメディアも動かなかった。

復興予算は、メディアにも使われていたのだから。

 

流用問題は、あんなに騒がれたのだから、もうムダ使いはなくなったと思っていた私は、アマちゃんだ。復興予算は、国土強靭化のもとで、今も被災地以外の地域で使われている。もっと言えば流用問題が騒がれている最中に行われていた予算委員会で、次年度の流用予算が可決されていたという現実。そんなバカな話が、と思ってしまうがこれが本当なのである。読めば書いてある。

本書では、復興構想会議のスタートから、流用に至るまでの経緯が詳しく書かれている。財務官僚の増税ありき、流用ありきの会議運営や杜撰な識者たちの実態も描かれている。

「手続き的にはあくまで合法」な官僚的手法も暴かれている。

一般会計と特別会計の八方美人的いいわけ方法のやり口もぜんぶだ。

しかし、だれもが悪気があるわけではないような、完全に悪人ではないような印象も受ける。「権力者は多数いるが、この国は彼らによって押されたり、引き戻されたり漂わされることはあっても率いられることはない。」合法的に巨額を流用する、真面目な「働きアリ」が、いつの間にか「シロアリ」になってしまう不可思議なシステムの国、昔から変わらない日本の姿だ。

本書は、民主党も自民党も官僚も、強烈に批判している。文章は、平易で読みやすいし、内容も非常に分かりやすい。小難しいことは書いてない。

私は読んで怒り、憤り、そして最後には無関心な自分を反省もした。一応、国民が主権者の日本である。税の使い道に興味を持とうと思う。

私もわずかながらも税金を払っているから、というだけでなくて、本当に復興が必要な被災者が無視されないためにも。

ベストセラー1位にしよう, 2014/1/7

国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

 

3・11の後、日本人ならば、被災地に何かしたいと言う衝動に駆られたはず。

しかし、国家官僚はそうでは無かった様だ。

一個人で有る我々に出来る事は、この本をベストセラーの1位にするくらいか。

  シロアリは誰?, 2014/2/22

国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

 

復興予算の流用を、ネット検索で突き止めてしまった著者。その取材手法の新しさと比較して、流用を行ったシロアリたちのやり口の古めかしさたるや。この国の政治家や官僚は、いまだにこんな形で利権を温存し、マスコミもそれを黙殺しようとしている。しかし、少なくとも著者はこの本で、その権力構造の一角に風穴は開けたわけだ。この国は変われるのか、変われないのか。本書の問いかけは、重く鋭い。

  “税金を返せ”と叫びたくなる, 2014/5/11

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

とんでもない話の連続としか書きようがない。

詳細はほかの方が詳しいので、いわゆる復興増税について書いておく。

給与所得者の場合、税金は天引きで、残業代などがあれば毎月所得税額が違うために分かりにくいかもしれないが、原稿料などの収入を得ているとこの増税がよく分かる。例えば、原稿料が1万円の記事を書いた場合、今まではその10%である1000円が引かれて、9000円が振り込まれていた。しかし、復興特別所得税が導入されてから1021円が引かれている。これが2037年一杯まで継続する。

たしかに、1万円の収入に対し、21円は大きな金額ではない。だからこそ、国民の多くは反対することがなかったのだ。そして、そこで集められたお金は被災地の復興に使われると信じていた。本書で書かれたようなことは、まさしく、国民への裏切り行為としかいいようがない。

そして、何よりも腹立たしいのは、そうやって集められた“血税”の転用に対し、ほとんどの政治家・官僚に罪悪感すらなく、それを真剣に追求しようというマスコミが少ないことである。

なお、被災地が完全に復興したとは思えないが、同時期に徴収され始めた復興特別法人税は、もともと3年間だけであったものが、1年間短縮されてしまった。

 

やっぱり、そうか, 2014/4/7

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

国会の予算審議のライブを見ていても、予算書を基に議論しているようには見えないのが不思議だったけど、なるほどこういうことかと、納得の内容。国会議員の不勉強が明白で悲しくなる。ズル賢さでは、国会議員を遥かに上回る官僚たち。一体あなた方の倫理はどこに?日本の政治と行政が病んでいることを、事例を示して暴いています。よく取材できたなと、感心しきりです。読みやすく、分かり易い一冊です。お勧めします。

  一部要約, 2014/3/25

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

2011年の震災復興予算の15兆円のうち、実際に予算が使われたのは6割に過ぎない。しかもこの使われた予算のうちの大半は、国会議事堂や霞が関のビルの耐震補強など、震災復興とは関係ないものが大半である。

2011年7月に策定された復興基本方針には、「全国防災対策費」という名目で、即効性のある防災や減災に該当すれば、被災地でない場所でも復興予算を使えるということになっている。

 

2012年度では、全国で被災地以外の道路建設だけで合計351億円もの復興予算が使われた。特に北海道には78億円という、ずば抜けて多い予算が使われた。しかし、実際に建設された道路はごく普通の道路で、国交省によれば「道路のない所に道路ができれば、防災に役立つ」というのが理由である。

 

省庁が行う海外のイベントにも、復興予算が使われていた。外務省の天下り法人である「独立行政法人 国際交流基金」には、2012年の復興予算から約1.2億円が渡っていた。外務省によれば、この予算によって日本の芸術家を海外に派遣して、文化交流をさせて、日本は元気だということを海外に伝えることができたとされる。このような予算の使われ方がされた理由は、復興基本方針に「世界に開かれた復興」という項目があったためである。

 

日本の調査捕鯨船の活動を妨害する海外のNGO「シーシェパード」を追い払う費用として、復興予算から23億円が使用された。

 

震災で発生した放射能が含まれている可能性がある瓦礫を受け入れた地方自治体には、瓦礫の受け入れ1トンにつき3~8万円の交付金を支払うことにしていた。しかし、実際には瓦礫の受け入れをせず、受け入れを「検討」しただけの自治体にも交付金が支払われた。

 

TBSテレビの番組「ひるおび!」では、復興予算の流用問題を報じていたが、そのTBSにも復興予算から約3000万円の補助金が支払われていた。これ以外にもTBSには補助金受給に関して「前科」があり、2009年にTBSは地産地消の普及イベントを行い、農水省から1億1500万円の補助金を受け取った。このうち、2900万円は水増し請求され、それを指摘した会計監査院からの指摘によって、その後にこの請求を返還した。さらにTBSは、2012年に被災地の漁港でおいしい魚を食べようという番組を制作して、萩本欽一やさかなクンらを出演させ、この番組の制作予算として復興予算から5250万円が支払われた。

 

日本の権力構造の分析で知られるカレル・ヴァン・ウォルフレン(アムステルダム大学名誉教授)

「日本にはシステムを構成する権力者たちが多数いるが、この国は彼らによって押されたり、引かれたり、漂わされることはあっても、率いられることはない。権力の中心が不在であることが、日本というシステムの本質である。この権力システムの代表が、官僚である。」

福場さんの執念と勇気に感動しました。, 2014/4/1

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

日本の社会は官僚に支配されてしまい、相当に歪められてきたことは分かってはいたが、このように具体的に示していただくと、本当に国家のために働くはずの「働きアリ」が国家を食いつぶす「シロアリ」になってしまってることが、良く分かる。日本中の国民に是非読んでもらいたい一冊である。

中身は良く、読み物風にしているが、もう少し筆致にシャープさが欲しい, 2014/4/9

: 国家のシロアリ: 復興予算流用の真相 (単行本)

筆者が本件を取り上げたのは、『週刊ポスト』12年7月30日号からだった。

10月には、決算行政監視委員会で、野田首相らは吊るし上げにあい、12月16日の衆院選で民主党は、復興予算流用と批判する自民に与党の座を明け渡すが、無論自民もその「公共事業」を、凍結された中央合同庁舎4号館の耐震政策など施設整備費17.5億の予算を復活させたように、発展させ利用する。

民主党政府は、11年7月29日に「東日本大震災からの復興の基本方針」として、集中復興期間の5年間で19兆と見積もり、一般財源・子ども手当て(4272億)・高速道路無料化(1200億)をやめ、10.5兆を復興債や所得税(2.1%/年を25年間)、住民税(県・市民税合わせて千円を10年間)、法人税(10%を3年間の予定が、14年3末に2年で終了)の増税で賄うと決めた。

老朽化や建て替え計画のあった国の施設は、財政難のあおりで歳出削減される傾向にあった為、改修計画があっても後回しにされていたが、復興特別会計という打ち出の小槌は、歳出に上限のある一般会計とは異なり、「防災」のキーワードに当てはめれば、被災地外でも予算が出るし、野田首相の青天井発言(9/20閣僚委員会)のお墨付きで、1年目で5年分の予算の約8割をいきなり使おうとし、国の施設を最優先して、復興予算に群がり、財務省主計官も特に11年度の3時補正では「中身を精査しなかった」としている。

後述するが、これは一般会計では景気対策を組める余裕がなく、19兆の復興財源の一部を使っても良いのではないかとの考えが加速した結果だ。

12年6月29日、3回の補正予算で、15兆拠出された復興予算だったが、執行率は6割に過ぎず、その大半は12年度から新設した復興特別会計に繰り入れられた。

執行率については、後述する復興と関係ない予算は、100%に近く、「被災失業者の離職転換給付金」のような被災地に必要な事業は4.4%と低く、被災自治体(11道府県222市町村)向け復興交付金を扱う復興庁の執行率も、発足が12年2月10日で交付金が自治体に届いたのが3月26日の年度末直前でもあり、恐ろしいことに「緊急性がない」と自治体申請の6割しか交付が認められなかった事から、1年目は16%と他省庁と比べて格段に低い。

これについては、平野達男・復興大臣が2/10の発足会見で、「自治体の負担がゼロになったということで、だからこそコスト意識を持たなくてはならない」としているが、宮城県内で国道には361億が認められたにもかかわらず、県道には要求の1/8の43億しか認められず、7/29には安住淳・財務大臣が、気仙沼市及び市内関係団体との意見交換会で、この国道・三陸沿岸道路の予算確保をアピールしている。

しかも使途は、「自由だと何に使われるかわからない。」(復興庁)と、文科省・厚労省・農水省・国交省・環境省の40事業に決められ、震災前の既存事業だけの1軒屋のかさ上げなど被災者に役立つものでなく(気仙沼では住宅地を漁港に1年かけて都市計画指定し直したが、そこには水産加工場などしか認められず、元の食料品店すら建てれなくなった)、窓口ですらも一元化されず、たらい回しとなり、国家補助金の方が良いと、村井嘉浩・宮城県知事がこぼすようなもので、12年末には自民党政権に使い勝手が悪いと、既存の補助金事業に戻されている。

関係のない使途では、金融庁職員の基本給5205万、国立大学運営交付金56億5484万、アジア大洋州地域外交4382万、小笠原諸島の振興開発事業費6億8千万、北海道開発事業費118億8150万、防衛省の航空機購入費25億484万など、復興とは関係のない細目が並ぶ。

元財務官僚の桜内文城代議士(維新)は、「一般会計の新発債44兆の枠を守るために、復興特別会計の方に、一般会計で拠出すべき予算を寄せたのではないか? 各省庁からすれば、美味しいボーナスだったわけ。」と、著者に解説する。

 彼は現在、吉見教授の論をヘイト呼ばわりした件で名誉毀損として訴えられている、ろくでもない「日本だけが善」史観主義者だが、12年3月27日の復興特別委員会で質問するなど、ここでは良い仕事をしている。

とは言え、後述する堺市の86億の不正流用疑惑では、環境省との間に松井知事を経由しており、維新の会としては疑惑があるのだが。

 使いみち 全国防災対策費名目とされているが、その解釈は遠く、被災地外で使える全国防災対策費の利用条件に「緊急性」があるが、それも拡大解釈されている。

スタートは、11年度第1次法制予算からで、文科省の施設費災害復旧等(4160億)内の、全国が対象となった公立学校の耐震化(340億)が公明党の強い主張で盛り込まれた(09年に自公政権でまとめた、10年度の予算概算要求での2775億が、事業仕分けで1700億カットされたのを再要求したもので、公明党は今もHPで手柄のように書いている)。

 12年度の被災地以外の道路建設だけで、合計351億、特に北海道では78億と突出している。

通常の道路でも避難に使うこともあるとのロジックで、「防災」名目と解釈されている。沖縄の行動58号線かさ上げ整備の22億は、台風対策だが、津波名目とされる。両地域が目立っているのは、北海道局・沖縄振興局と地域名を挙げて独立記載されているので目立っているだけで、全国でも同様の運用がなされている。

前述した中央合同庁舎4号館を含む12年度の官庁営繕費では、36億中4.5億は石巻港湾合同庁舎整備費だが、残りは4号館に12億のほか、和歌山の田辺合同庁舎、名古屋や釧路など全国の港湾合同庁舎の改修費用。

 4号館は09~17年度までの建て替え計画があったが、民主党政権で廃止になったもの。

 東京の荒川税務署など3税務署に5億。しかも緊急性の高さでなく、「着手しやすいものから」(国税庁会計課)。

国会議事堂のLED照明に1億2000万を含めて、総額7億。

都心3区(千代田・港・中央区)の公務員宿舎は、原則、廃止・売却の方針だが、11年12月1日付「国家公務員宿舎の削減計画」で、永田町から近い千代田区の三・四番町住宅の2ケ所は、危機管理用住宅として存続されることになっている。

 しかも防災担当職員が住んでいるのかは、不明だ。

外務省出身者が役員を務める天下り法人、独行・国際交流基金では、約1.2億で120人の芸術家を派遣し、文化交流で日本の元気さをアピールするとしている(翌年は3億要求しようとしていたが、12年度限りとなったようだ)。

米谷光司・広報文化外交戦略課長製作の復興関連事業説明シートでも、11年に3.2億(電通8千万、国際交流基金2.4億)の情報発信が行われているが、その中身は、米仏中巡回公演や、海外配布用DVD「ロック わんこの島」・NHKドキュメンタリーの多言語版DVDの購入に使われている。

72億で海外から青少年を招待、日本の努力や活力を印象づけるものでは、「被災地の学校に受け入れニーズがあることは確認済み」だそうだが、その学校はどこなのかと尋ねると、「それは分からない」(外務省担当者)。

WHO拠出金(7158万)との、元々の必要経費に復興予算を当てたものもある。

農水省は、反捕鯨団体「シーシェパード」の妨害活動の対策費を23億計上(11年度3回目の補正予算)。

しかし、調査捕鯨船は震災前の2月18日に切り上げているし、母船は広島、採集船は下関2隻・塩釜(宮城)1隻から出発で、石巻復興のためと担当者は言うが、何の関係もなく、復興予算はもはや“なんでもあり”の様相を呈している。 流用の弁明 野田佳彦首相は、12年9/19『報道ステーション』で、古舘伊知郎氏の質問に答えて、「関係省庁による復興予算の横流しと言う面はなくもないですが。全部ではない。」と、横流しを認めている。

 番組中ではその後、阪神大震災でも同様だとしたが、全国で使われた95年の1次補正予算の「緊急防災対策費」は、復興予算とは別会計で、流用ではない。

閣内他の大臣も、10月18日の参議予算委員会で、「第3次補正予算を組んだ時には自民党から5000億上乗せしろと言われており、一緒に進めてきた。」と開き直る(平野復興相、枝野幸男経済産業相、蓮舫元行政刷新相)。

阪神・淡路大震災後の復興事業費を検証した塩崎賢明、増田紘両氏によれば、当時も総事業費16兆3000億円のうち、震災とは直接関係しない“便乗事業”に23%が投じられた。 

それらがすべてムダだったとは言わないが、少なくとも被災地や地元住民のためには使われなかった、としている。

また、阪神大震災では、復旧以外に使えない制約もあり、今回はかさ上げや、山を切り開いての更地作りに5年から10年かかることなどから、「復旧・復興」として、範囲を広げた。

被災地への使途 12年度の石巻市庁舎改修予算は2900万で、しかも加湿器と駐車場のLED設置費。

 同じ石巻市でも、国交省の港湾合同庁舎には、今年4億円の改修費用が計上されている。

被災した岩手県大船渡税務署職員は、「税務署の建物は津波で浸水したため、現在は法務庁舎の敷地に仮事務所を設けています。プレハブ造りの簡素なものなので、空調の効きが悪く、場所もかつてに比べ手狭ですが、もとあった建物が整備されてから移転となるので、移転はしばらく先になりそうです。」と嘆く。

同じ大船渡の例では、1933年の津波の教訓から、以来沿岸部の低地は農地にして、人は住んでおらず、吉浜地区という沿岸地域は、大津波に襲われ、堤防も壊されたものの被災者はわずか1人だった。

一方、防潮堤と呼ばれる“スーパー堤防”のあった宮古市田老地区の堤防も破壊され、161名の死者が出て、壊滅状態。

“ハコモノ”に投じても経済効果はない例として、北海道南西沖地震後の奥尻町には、財政規模の数十倍に上る約860億円を費やしたが、漁業再興のための集落環境整備や防潮堤を作りながら、漁業従事者は400人から200人へと半減している。

仙台市内の宅地災害普及関連事業対象となる、400世帯の被災世帯では、12年3月交付まで1年待たされ、秋から事業スタートしたが、梅雨台風で2次被害の土砂崩れが起き、対象世帯数が増えてしまった。

被災地への無駄金 大船渡市の総務省は8億円強を投じ、コンテンツ不足に悩むNHKの海外放送子会社「NHKワールド」に震災関連番組の制作を依頼するが、NHKの意向を受けた総務省が「番組の充実を図りたいだけ」(政府関係者)だという。

 外務省も競争入札で、米CNNに30分のドキュメンタリー番組の製作を依頼。

石巻の石ノ森萬画館では、文部科学省が教育施設復旧費として出す6億を含む7.5億の再建予算組み。 国交省が検討を始めているメモリアルパーク(祈念公園)の建設計画では、12年1月時点で復興計画を策定した66自治体のうち、祈念公園や祈念施設の整備を盛り込んだ沿岸部の自治体は、27で、宮城県だけでも東京ドーム約52個分(約245ha)に及ぶ。

原発関連

 19年までに仏で運転開始を目指す、国際熱核融合実験炉に41億(実験を行う日本原子力研究開発機構が、被災地の青森と茨城にあるとの理由)。

 瓦礫広域処理

 7府県、14団体が受けいれを検討。実際には受け入れなかったが、340億が交付された。

 当初は処理場の建設費・改修費を交付、受け入れ量に応じ3~8万/tを焼却費として支払う手厚い条件で、12都道府県・21団体が受け入れ検討表明したが、被災地の瓦礫量が見積もりよりもかなり少ないと判明し、14団体は候補地からはずされた。

検討だけで受け入れずとも交付金が受け取れると環境省が通知したので、堺市86億、河口市36億だけでなく、平塚市などは神奈川県に「受け入れない」と表明したにもかかわらず、160億が交付された(6市町3組合に交付)。

堺市の例では、10年度からの3年間で、180億かけて新工場の改修を着工しており、建設費の1/2は政府一般会計からの交付金を財源としていたが、3月に環境省から復興財源への切り替えを打診され、一般会計でと要望したものの、4月に「堺市はがれき処理を検討している」として、市が求めていた通常枠の交付金ではなく、新たに設けた復旧・復興枠などでの措置を市に打診。

 約40億円に加え、地元負担の約46億円分も復興財源を充てられたもので、大阪府が受け入れを表明していたため、受け入れ可能な施設を建設中の堺市に交付される運びとなった。

 

 13年2/25本会議で、田中丈悦市議の「(復興予算として受け取ることは)堺市にも道義的責任がある。 国にお願いして、(復興予算ではない)一般財源に組み替えてもらうか、できないのであれば、堺市が負担しなければならない分に関しては、国に返還するか、被災地に義援金として送るべきだ。」との提案に、竹山修身市長は「ありがたくいただきたい」と答えた。

 

 この発言には、批判が殺到し、 

竹山市長はその後、3/13市議会委員会で「(復興予算は)被災地の復興に直接活用されるべきものである、という住民の声は重たい。」と述べ、被災地に対し、何らかの支援策を行うことを表明。

 4/16には、12年度の余剰金約5億を充て、復興を支援する基金の創設を発表した。

 

 瓦礫の広域処理は必要だったか?

 環境省資料(11年12/6付)では、瓦礫総量は476万t、このうち広域処理希望量は57万tで、岩手県内処理量は、419万t。

 

 下方修正1、その後下方修正され、がれき処理データサイト(12年11月付 環境省HP)では、瓦礫総量が395万tに大幅に下方修正され、広域処理必要量も45万t、県内処理量は、350万tとなった。 

下方修正2、東日本大震災に係る災害廃棄物処理進捗状況・加速化の取組(13年1/25付 環境省)では、瓦礫総量が366万t、広域処理必要量は30万t、県内処理量は、336万tに。

広域処理の瓦礫が減った理由について、番組中で岩手県災害廃棄物対策課の松本課長は「岩手県内で処理できる量が増えていて広域処理をお願いする量が減っている」とコメントしているが、上記検証の通り、岩手県は県内処理量を増やすどころか逆に419万t→350万t→336万tと減らして広域処理が必要なガレキを無理矢理作り出している(13年3/7付 テレビ東京 『Newsアンサー』内のコーナー、特命Dが行く! “不可解”な復興予算の使い道)。

 番組の最後では、こうしたウソまで付いてガレキの広域処理を進めたい理由を、「このスキームを作った環境省、お金を配る口実に復興を使っていたんじゃないか?」と、指摘している。

 

 瓦礫処理が進まないと12年頃盛んに言われていたが、12年2/28付ブログで、武田邦彦・中部大学教授は、瓦礫総量の内8割が現地処理(前述岩手の場合も1~2割)で、「瓦礫の処理が5%しか進んでいない。これは瓦礫の引き受けが進んでいないから。」と、細野豪志環境大臣は2月21日、閣議後の記者会見で発表したが、もともと被災地外で処理するのはたったの20%だから、割合の大きい被災地内処理が進んでいないことの誤魔化しとしている。

 

 それを裏付けるものとして、3/20付 東京新聞では、県内最大の100万tの瓦礫推計量であった陸前高田市の戸羽太市長が、震災直後に瓦礫専用の焼却炉の建設を、具体的計画をもって県に提案したが、「環境アセスメントの手続きなどで、2、3年はかかる。」と言われる。

 更に戸羽市長は、「何がしかの動きがあると思ったが、県に問い合わせれば『環境省はやる気がない』環境省にきけば、『県から正式な話は来ていない。話があれば当然検討する』という始末だった。」とあきれ、米軍から大型破砕機を借り受ける計画を県に持ちかけたが、これも「前例がない」と断られたと報道。

 

 国や県に頼らず独自で対応できたので、現地処理が進んだ唯一の例外と言われる、政令市の仙台市では、11年10月に2基、12月に1基の焼却炉が稼働し、当初推計値265万tより多い272万tをリサイクルも含めて13年12月27日に完了し、搬入場の原状復旧も14年3月15日に完了している。

岩手では、環境省によると、震災がれきの推計量は414万tで、仮設焼却炉2基も含め、14年3月末に処理を完了したが、可燃物の多くをセメント会社などで処理していることから、もともと宮城県に比べると可燃物の広域処理希望量は大幅に少ない量となっているのと同時に、内約300万tは、コンクリートがらや津波堆積物で、広域処理の必要性にそもそも欠ける。

 

 費用についても、通常の産業廃棄物は1.8~3万円/t程度だが、今回の広域処理では、最高6.8万円/t(運送費含む)や、北九州市では試験焼却用の瓦礫の運搬費に17万円超/tとの例もあったり、中には、業務の再委託などで地方自治法、地方財政法に違反する可能性がある事案も見受けられ、環境省とスーパーゼネコンによる利益誘導の可能性が高い!と、環境行政改革フォーラム特別調査チームはしている。

 

 メディアの報道  復興予算流用問題は、筆者の指摘によって火がつき、12年10月頃は各メディアがこぞって報道合戦を繰り広げた。

 それ以前から、3/12付日経で「『全国防災対策費』5752億円など被災地外へ流れたお金が含まれている」、「(3次)補正予算は財務省の査定も国会のチェックも甘い。」と指摘していたが、問題視していないものであったのだが。

このからくりについても筆者は言及する。 

 それは、¥4600万の政府広報予算による読売・朝日・産経の11年4/29付「復興アクションで応援しよう」、の全国紙や各地方紙の8/30付「減災特集」(¥2億4641万)などの広告記事や、TBSへ農産物消費拡大事業として、イベントに¥525万・『ひるおび!』に¥2500万、殆どのキー局への「食べて応援」CM(首都圏で800回¥7860万、12年春には全国で1200回¥8700万のスポットCM)などの「美味しいボーナス」があり、自民党政権になって更に広がっているにもかかわらず、13年度の当初予定の19兆をオーバーする22兆規模へ拡大する復興予算への追跡報道はない。

 

 そこには、軍用機軍用輸送機C-130Rと戦闘機F-16の米国での教育訓練演習費として、それぞれ¥2725万、¥10億2972万を「米国委託教育」として予算計上したり、内閣府宇宙戦略室が「災害時に有効な衛星通信ネットワークの研究開発」として、小型衛星地上局を全国に置くためとして¥15億4800万を計上しているのだが・・・

 

 流用の種明かし

 '@ 東日本大震災復興構想会議

 11年4月14日に、第1回の会議が首相官邸で開催されたが、そこで菅直人首相から五百旗頭真・議長宛てに出された諮問書内に「今般の大震災は単に被災地域のみならず、我が国の産業・経済基盤にも計り知れない影響を与えており、こうした点も重視する必要がある。 被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。」

「被災地のみならず我が国の再生を図っていくためには、幅広い見地から復興に向けた指針策定のための復興構想について検討する必要がある。」

と書かれている。

 

 そして、5/10の第4回会議で、議長は自身が用意した「復興構想7原則(案)」を持ち出すが、そこには「原則5:被災地域の復興なくして日本経済の再生はない。日本経済の再生なくして被災地域の真の復興はない。この認識に立ち、大震災からの復興と日本再生の同時進行を目指す。」と示されている。

 

 会議自体は、11/10の第13回まで続くのであるから、橋本五郎氏の「問題は、今、このタイミングでこの原則を打ち出すことの意味は何なのか。 といいますのは、この原則で最初から議論をやっていたのだろう、ということになりはしないか。」との指摘も当然だし、「原則7:今を生きる私たち全てがこの大災害を自らのことと受けとめ、国民全体の分かち合いと連帯によって復興を推進するものとする」についても、増税の暗示として、玄侑宗久氏は「これは、誤解のもとだと思うんですよ。もしおっしゃるようなことならば、余りにも当たり前の内容ですし、入れておかないほうがいい。税金のことではないんだとすれば、これは言う必要のないことだと思います。」、

内館牧子氏も「私も、この7番は短絡的に増税の暗示と勘繰られる危険があるなということは感じます。 現時点では誤解を招きかねない気がしている。」としたが、なし崩し的に全会一致で決まってしまった。

 しかし被災地をどうするかの具体的提言はない。

 

 更に 6/25付「復興への提言~悲惨のなかの希望~」では、15人の委員の意見などは殆ど取り入れられないままに、「経済社会の再生」、「世界に開かれた復興」などの「流用用語」の数々が使われている。

 

 つまり、会議は増税のお墨付きと、復興予算の被災地外流用の為の口実として使われたのだ。

 

'A 修正案

 11年5/13に民主党政府は、玄場光一郎氏など被災地議員が中心にいた民主党政調を中心に被災地を前提としてつくられた、東日本大震災復興の基本法案を提出するが、ねじれ国会の中、自民党が撤回を要求し、5日後には復興再生院の設立を求めた、東日本大震災復興再生基本法案を代替案として提出。

 修正案は、6/20には民自公の3党合意で成立。

 そこでは自民党の要望として、復興再生院ではなく、「被災地域の」とされていた部分が「東日本大震災からの復興」へと変更され、「被災地限定」を意味する表現が全て破棄され、被災地外への流用が盛り込まれていた。

 

 このような意図は、前述した菅首相の諮問書、6/25付復興会議の最終結論とも重なっており、官邸と野党の共通目標だったとわかる。

 そこに民主党議員が被災地限定にさせようとしたが、自民党が官邸の援軍となり、被災地を助ける趣旨と別の法が成立してしまい、7/29復興基本方針が策定される(おかしな話だが、民主党政権下での話だと再度確認しておかねば、自民党下と勘違いしてしまいそうだ)。

 

 3つの基本方針は、

(イ)被災地域の復旧・復興及び被災者の暮らしの再生のための施策

(ロ)被災者の避難先となっている地域や震災による著しい悪影響が社会経済に及んでいる地域など、「被災地域と密接に関連する地域において」、被災地域の復旧・復興のために一体不可分のものとして緊急に実施すべき施策

(ハ)上記と同様の施策のうち、東日本大震災を教訓として、「全国的に」緊急に実施する必要性が高く、即効性のある防災、減災等のための施策

で、被災地が3つのうちの一つでしかなくなり、「」で示したように、残りの二つは被災地外向けとなっている。

 

 執行停止

 野田内閣は、解散選挙中の11/27に、11府省35事業、168億分の執行を止め、「今後の復興関連予算に関する基本的な考え方(案)」で新基準を作成するが、例外として既に契約が済んでいるものと、全国の津波対策や学校の防災事業への流用は認めるもので、凍結は中央合同庁舎4号館の耐震改修など168億で、0.1%に過ぎない。

 

 マニュフェストでも、民自公の3党とも、復興予算流用の共犯者として、復興から関心をそらすため、具体的な復興策には積極的に触れず、メディアも追従し、国民の関心も薄れる。

 

 結果、安倍政権では、13年1月に閣議決定した12年度補正予算案と13年度当初予算案で、「復興・防災対策」との言葉を都合よく利用し、7.7兆の公共事業を含む13兆もの補正予算が組まれる。

予算の大半は、流用問題で、復興特別会計から一般会計に戻されるが、一般会計のシーリング(天井)を外したので、見方によっては余計悪質になったと言える。

巻末で、国民が情報公開で関心を持ち続け、問題を見抜く力を持てば、問題の核心は必ず浮き上がると、著者は展望を持たせるような記述をするが、最終では、国家のシロアリを生む最大の要因は国民の無関心かもしれないとも書く。

 私自身も堺市で86億の監査請求を行っているが、84万人の政令市でありながら、請求人はたった7人というお寒い状況にある。

14:53 2014/09/30

 

 

 


全国「いい川・いい川づくりワークショップ」で流域治水政策室が「広松伝賞」を、せせらぎの郷(野洲市須原)が「“いい川”技術賞」を受賞しました。県政eしんぶん報道資料公開日:2014年9月24日

全国「いい川・いい川づくりワークショップ」で流域治水政策室が「広松伝賞」を、せせらぎの郷(野洲市須原)が「“いい川”技術賞」を受賞しました。

土木交通部流域政策局流域治水政策室と、野洲市須原地区のみなさんが中心に活動する「せせらぎの郷」は、2014年9月20日、21日に東京・国立オリンピック記念青少年総合センターで行われた「第7回いい川・いい川づくりワークショップ」(「いい川・いい川づくり実行委員会」主催、国土交通省後援)に参加しました。

 

それぞれ下記のとおり入賞するとともに、特別賞も受賞しました。

発表内容 入賞 特別賞

流域治水政策室 流域治水条例 一歩踏み出す勇気はいのちとくらしを守りいけてる河川技術者を育てるで賞広松伝賞

せせらぎの郷 魚のゆりかご水田 「魚の卵育成」最優秀賞 “いい川”技術賞

いい川・いい川づくりワークショップとは

 

この大会は、毎年1回、全国各地で川や水環境に関わる活動・事業をしている市民、NPO、行政等が集い、事例発表と公開討論を通じて、「“いい川”“いい川づくり”とは何か」を探るため行われている、コンテスト形式のワークショップで、今年で17回目(10回目までは「川の日ワークショップ」との名称で開催)となります。今回は全国から28件の事例が発表されました。

 

「公開審査」という手法で、審査員・発表者・傍聴者が対等の立場で、お互いに褒めあい高めあう審査が特徴的な大会です。

 

流域治水政策室の受賞理由等

 

流域治水政策室は、滋賀県流域治水条例について発表し、勇気をもって水害リスクを住民に伝え、条例として制度化した取り組みを高く評価された結果、「役人、公務員でありながら、市民・住民の視点や立場で川や水辺の保全、回復に貢献するなど、市民のために働いた人」に贈られる「広松伝賞」を受賞しました。流域治水政策室は、平成23年の第4回大会において、地先の安全度マップの取り組みを発表し準グランプリを受賞して以来2回目の受賞となりました。

 

せせらぎの郷の受賞理由等

 

せせらぎの郷は、野洲市須原の魚のゆりかご水田の取組について発表し、農業者だけでなく、都市住民や学生など、多様な人たちと交流し、ブランド米やお酒づくりなど、「生きもの」をキーワードに経済的な自立を目指して取り組んでいること、この活動は琵琶湖の保全を考えたものであるが、全国的にも田んぼと川とのつながりに活用できるなど、広がりを見せていくことなどが高く評価された結果、「ユニークな発想、アイデアなど優れた技術の開発と応用」に贈られる「“いい川”技術賞」を受賞しました。

 

発表の様子

 

流域治水政策室

 

流域治水政策室発表風景

 

せせらぎの郷

 

せせらぎの郷発表風景

 

参考いい川・いい川づくりワークショップホームページ(外部サイトへリンク)広松伝とは

福岡県柳川市において、市民と共に荒廃した掘割の再生を成し遂げた柳川市職員として知られる。

同市の掘割は昭和40年代、生活排水やごみ投棄などで荒廃し、水草が水面を覆い、悪臭がひどかった。市は掘割にふたをして下水道に変える計画を立てたが、担当係長の広松さんが当時、市長に直談判して計画は見直しとなった。住民懇談会を100回以上開き、1978年から住民参加による河川浄化事業に取り組んだ。

掘割再生の経緯は、1987年製作のドキュメンタリー映画「柳川掘割物語」(宮崎駿制作・高畑勲監督)で紹介された。

魚のゆりかご水田とは

魚が水田まで自然に上がれるような魚道をつくり、魚に優しい農業を実践している水田。

お問い合わせ

滋賀県土木交通部流域政策局流域治水政策室

滋賀県農政水産部農村振興課地域資源活用推進室

13:13 2014/09/30

淡海の“いい川”づくり研修会-多自然川づくりの技術と推進の方策-を開催します。

県では、NPO法人瀬田川リバプレ隊・NPO法人全国水環境交流会と協力し、「淡海の“いい川”づくり研修会」を下記のとおり開催することとなりましたので、お知らせします。

1.テーマ

 

多自然川づくりの技術と推進の方策

 

2.日時・場所

 

日 時:2014年10月18日(土曜日)10時00分~16時40分(受付9時30分~)

 

会 場:滋賀県庁新館7F 大会議室(大津市京町四丁目1番1号)

 

3.内容等

平成18年10月に示された「多自然川づくり基本指針」を受け、「多自然川づくり研究会」(座長:九州大学大学院島谷幸宏教授)は、川づくりの考え方、計画、施工に関する技術等を示したポイントブック(1.~3.)を作成してきました。また、東京における公開型研修会を平成19年から24年まで年1回開催してきました。

その過程の中で、各地の河川特性を考慮した魅力ある川づくりを進めるため地域研修の要請が高まり、2012年より、NPOと行政との協働の下、各地で実施されています。

 

本研修会は、関西ではじめての開催となります。これまで推進されてきた滋賀での成果を踏まえ、さらなるスキルアップをめざし開催したいと思います。加えて、参加する機会の少なかった市民・住民の方々の参加も求め、議論しながら研修を行う公開型ワークショップ方式としたいと考えます。

プログラムの詳細についてはチラシ(PDF:366KB)をご覧ください。

13:15 2014/09/30

http://www.pref.shiga.lg.jp/h/ryuiki/

http://www.pref.shiga.lg.jp/h/ryuiki/

13:21 2014/09/30

http://www.pref.shiga.lg.jp/h/ryuiki/

センター研究概要

 

生産・消費活動の負の側面である廃棄物問題を解決し、資源の効率的な利用と健全な物質循環が確保された循環型社会への転換を進めることが、わが国のみなならず世界共通の課題であり、問題解決のための科学的、技術的課題の克服が求められています。そこで、社会経済活動に伴う物質の利用と付随する環境負荷の実態解明及び将来展望、資源性・有害性の両面からみた物質の評価・管理手法の構築、並びに資源の循環的利用、廃棄物・排水等の適正処理及び汚染された環境の修復・再生のための技術・システムの開発、評価及び社会実装に関する調査・研究を行います。

 

また、平成23年3月に発生した東日本大震災は被災地各地に大量の災害廃棄物をもたらし、さらに、原子力発電所の事故により放出された放射性物質に汚染された廃棄物や土壌等が広域かつ大量に発生し、その除染や適正処理処分が危急の課題となっています。これらの課題を取り巻く状況の変化に適応しながら各課題に迅速かつ適切に対応するため、所外の関係機関との連携を図りつつ、環境省及び地方自治体からの協力依頼・要請等に対応しながら、緊急的な調査研究を実施し、災害廃棄物及び放射性物質汚染廃棄物等の処理の推進に貢献します。

 

資源循環・廃棄物研究分野における研究の実施にあたっては、資源循環・廃棄物研究センターが主体となって以下の研究活動体系により研究を推進します。

 

•より大きな資源循環・廃棄物分野のパラダイムである循環型社会の構築に関する研究を『循環型社会研究プログラム』として柱立てし、日本とアジア諸国にまたがる国際的な資源循環、アジア新興国の廃棄物処理、日本国内の地域的な資源循環システムという3つの空間スケールに着目した課題解決型の研究プロジェクト(PJ)を機動的に推進します。

•国の資源循環・廃棄物管理政策に対応し、着実な実施が必要となる個別の研究課題を『政策対応型廃棄物管理研究』として進めるとともに、中長期視点も踏まえた基盤研究として、資源循環・廃棄物分野の新たな研究技法や概念に関する『萌芽的な基盤研究』及び環境研究の基盤となる情報・データ等の整備に関する『環境研究基盤の整備』を実施します。

•資源循環・廃棄物研究分野における横断的な取組として、今期より同研究センターに新設した「研究開発連携推進室」が中核となり、連携推進のテーマに応じて「災害・放射能汚染廃棄物等対策チーム」、「アジア等研究・技術開発推進基盤チーム」(循環型社会研究プログラムPJ2と連携)、「循環型社会地域再生チーム」(循環型社会研究プログラムPJ3と連携)を編成し、国内外の関係機関との協力・連携を図りながら、研究プログラムや政策対応型廃棄物管理研究との連動も意識しつつ、精力的に『研究開発連携の推進』活動を展開します。

•上記のうち、特に『災害・放射能汚染廃棄物等対策』については、当研究センター内の各研究室メンバーが組織横断的に「災害・放射能汚染廃棄物等対策チーム」に参画し、研究構成要素に応じて研究班を構成するとともに、出口指向の研究プロジェクトを各種設定し、行政(国・関係自治体)や外部機関(研究機関・関連学会・大学・廃棄物等関連団体・民間企業等)、関係研究者と連携しつつ、精力的かつ機動的に調査研究・行政政策支援活動を展開します。

http://www-cycle.nies.go.jp/jp/center/gaiyou.html

9:30 2014/09/30

 

 

二十一世紀に入り、世界における環境や資源・エネルギー制約の問題、日本においては新興国の台頭による産業の空洞化の進行、少子高齢化による人口減少時代への移行、情報化社会が進む一方で人のつながりの希薄化など、社会情勢は大きく変化してきています。そのような中で、私たちはどのような将来の「循環型社会」を目指せばよいのでしょうか。

 

資源循環・廃棄物研究センターでは、その問いかけに答えるべく、次の三つの主要課題に今後取り組んでいきたいと考えています。一つ目は、経済のグローバル化の下で廃棄物等はその資源的価値から国際的に移動、循環していることから、資源保全と環境リスク低減等の観点からその適正管理の枠組を提示します。二つ目は、アジアの新興国などにおいて廃棄物問題が顕在化していることから、日本との社会経済的な条件の違いを分析しつつ、日本が蓄積してきた技術や社会システムを参考にしながらアジア新興国などへの適用戦略を提示し国際貢献を行っていきます。三つ目は、日本の地域再生のために必要な持続可能な資源循環と経済の発展を支える社会関連共通資本の形成により、低炭素社会や自然共生社会と統合を考慮しながら循環型社会づくりを進めるための戦略を提示します。平成25年度は、以上の中長期的な課題に対して、当センター内の多様な専門性の深化と、センター内外の専門性の間の融合による新たな研究の価値創造を図り、研究の基盤となる研究技法確立と概念づくりを行いながら、より具体的な個別課題に取り組んでいきます。

 

また、引き続き、眼前にある東日本大震災・原発災害による放射能汚染廃棄物等への対処について、これまで当センターが蓄積してきた廃棄物管理研究の知見をベースに、放射性物質の挙動解明とそれを基にした適正処理技術システムの提示などの調査研究に取り組み、被災地の早期の環境回復に貢献することが使命だと考えています。

9:31 2014/09/30

 

 

 

軽自動車税 再来年引き上げで合意

12月11日 4時21分

 

軽自動車税 再来年引き上げで合意

 

自民・公明両党は、消費税率が10%に引き上げられる段階で地方税である自動車取得税を廃止した場合の代わりの財源を確保するため、再来年4月以降、新車に対象を限定して軽自動車税を引き上げることで合意したうえで、現在の1.5倍とする案を軸に調整しています。

 

政府・与党は、消費税率が10%に引き上げられる段階で、地方税の自動車取得税を廃止する方針で、廃止した場合には地方の税収が年間およそ1900億円減ることから、代わりの財源をどう確保するかが、年末の税制改正論議の焦点の1つになっています。

これについて、自民・公明両党の税制調査会は10日夜の協議で、再来年4月以降に購入される新車に対象を限定して、軽自動車税を引き上げることで合意しました。そのうえで両党は、軽自動車税を現在の年7200円の1.5倍となる1万800円とする案を軸に調整しています。

また両党は、来年4月の消費税率の引き上げによる自動車販売の落ち込みを緩和するため、自動車取得税を、普通車は今よりも2%、軽自動車は1%引き下げる方向で調整を進めていて、12日取りまとめる来年度の税制改正大綱に盛り込む方針です。

 

13:09 2013/12/11

 

 

アイルランドの魅力は法人税率だけではない リンクトイン、ドロップボックスが進出するワケ、山田 俊浩 :東洋経済 記者 2013年12月10日

 

 

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アイルランドの魅力は法人税率だけではない

2010年、財政赤字に苦しむアイルランドは信用不安により資金調達をできない状況に陥り、IMF(国際通貨基金)やEU(欧州連合)に救済を申請。救済プログラムの元で緊縮財政を行い、財政再建を実施。2013年12月15日には救済プログラムから脱却できるところまで漕ぎ着けた。国際機関の後ろ盾なしで、市場から資金調達をできるようになるのだ。

 

アイルランドの財政再建を支えたのは2010年以降も衰えなかった海外からの直接投資。EU最低の12.5%という法人税を武器に多くの企業を呼び込むことに成功している。企業誘致の責任者である政府産業開発庁(IDA)のバリー・オリアリー長官に、アイルランドの魅力などを聞いた。

 

――アップル、グーグルなど米国の著名企業がアイルランドに進出している。アイルランドは「米国企業の欧州拠点」というイメージがある。

 

たしかに米国企業は現在、直接投資のおよそ70%を占めている。最近では欧州、アジアからも増えているが、それでも主体は米国企業だ。

 

その理由はアイルランド政府産業開発庁(IDA)が力を入れている分野では、米国企業がリーダーシップを発揮しているからだ。われわれが注力している分野は4つあり、その4分野だけで全投資の85%に及ぶ。1つ目がICT(情報通信テクノロジー)関連、2つ目がライフサイエンス関連で、製薬、医療機器などの分野だ。3つ目が金融関連の企業。それから4つ目がデジタルメディア、デジタルコンテンツ、ソーシャルメディアなどの新しい産業だ。

 

武田、アステラスなどが進出

 

もちろん米国企業だけではなく欧州の著名企業も進出している。いくつかの企業名をピックアップすると、ノバルティスファーマ、サノフィ、アリアンツ、SAPなどがアイルランドに投資をしている。

 

日本企業も多い。たとえばライフサイエンスの分野であれば武田薬品工業、アステラス工業、グッドマンが拠点を開設している。ICT関連で富士通、アルプス電気、NTTが進出しており、金融サービスセクターの中ではSMBC(三井住友銀行)が積極的だ。航空機のリーシング事業、国際金融サービス、IT関連の開発などを手がけている。ソーシャルメディア、デジタルメディア関連では楽天の子会社であるkobo(コボ)、リクルートが買収した米インディード、ガーラがアイルランドに拠点を設けた。

 

最近は中国、インドにも事務所を開設し、アイルランドへの進出をサポートしている。中国のファーウェイ、インドのウィプロなどが進出している。

 

 

関連記事――4分野に力点ということだが、そのうちICTが先行している、という理解でいいか。

 

そのとおり。今から20年前を振り返ると、最大の海外からの直接投資元というのは、Tシャツなどを生産していたフルートオブザルームという会社だった。ちょうど同じ時期に、インテルがアイルランドに徐々に工場の投資を始める時期だった。ここからICTの集積が始まっていったので、4分野のうち先行したのはICTだ。


1060社以上が進出

 

 

 

――アイルランドへ投資をする魅力とは?

 

どのような企業も進出国を決める際には多くの要素を勘案するが、アイルランドには、4つのT、4つのEという基本的な強みがあるとアピールしている。4つのTのうち最も優先順位が高いのがタレント(人材)。どの企業も、投資を検討する際にどのような人材レベルがあるのかを最優先課題として考える。2つめのTがトラックレコード(実績)。つまり、同業他社が過去にどのような投資をしたか、そしてその後の再投資を行っているのか、という点は投資判断をする上で重要だ。アイルランドにはすでに1060社以上の企業が進出しており、事例が豊富だ。3つめのTはタックス。12.5%の低い法人税は大きなポイントだ。4つめのTがテクノロジーだ。

 

――4つのEとは。

 

まず1点目がEU加盟国であるということ。2つ目のEは、英語を使用できること、三つ目のEは、Ease of businessということでビジネスのやりやすさ。4点目のEがエデュケーション(教育)だ。4つのEはいわばソフト面の魅力といえる。

 

さらにこうした基本の部分だけでなく、個別具体的に産業クラスターを作るための投資を行っている。たとえば製薬企業を助けるために、IDAは6000万ユーロを投資してリサーチとトレーニングのためのセンターを開設した。また豊富な電力、水を確保できる工場団地をアイルランド全国で6カ所整備した。

 

――魅力の中では法人税率が12.5%という点は大きい。財政危機の際にもこの税率を維持したが、引き上げるべきとの声も強かったのでは。

 

ここで手がかりになるのは、GDP(国内総生産)に占める法人税の割合だ。EU全体の平均値はGDPの2.6%。それに対して、アイルランドは2.8%だ。ちなみに英国は3.1%だ。法人税率が30.6%と高いフランスの場合は8~9%だ。われわれが適用する法人税率12.5%は低いものではあっても税収という点ではEUの平均値を上回っている。つまり妥当な水準であると考えている。低率の法人税により海外からその投資を呼び込み、その投資によって、国民が大きな便益を受けているという状況は、国民に理解されていると思う。

 

――雇用にも繋がっており、国民は支持していると。

 

そのとおりだ。企業を誘致することで、国内の経済活動は非常に活発化する。私どもの総人口は460万人相当と非常に小さいが、アップル、IBM、ヒューレット・パッカードなどの投資により多くの雇用が生まれている。

 

――例えばソーシャルメディアの企業誘致には、ルクセンブルクなどベネルクス諸国も力を入れている。ICT企業の誘致にはフィンランドも熱心だ。他国の動向は意識しているか。

 

確かに以前に比べると競争は高まっている。しかし、アイルランドは非常に強い優位性をもっている。何と言ってもトラックレコードをみてほしい。グーグル、ヤフー、アマゾンはすでに投資をしているが、最近になってリンクトイン、ドロップボックスもアイルランドを選んだ。これは先ほどの4つのT、4つのEといった点が強い優位性として評価されたためだ。

 

20の拠点で進出をサポート

 

――多くの著名企業が進出しているが、先方からIDAにアプローチがあるのか。それとも勧誘するのか。

 

先方からアプローチしてくれれば実に簡単だが、そうではない。私どもIDAは積極的なマーケティング活動を展開している。世界各地に20の拠点を設けており、そのうち米国には6つの拠点がある。専門性を持ったチームを構え、アイルランドの魅力をアピールすると同時にきめ細かいサポートをすることにより誘致を成功させている。

 

――IDAは多くのスタートアップと係わり合いを持っている。いっそのこと誘致だけでなく、出資もすれば相当な利益をもたらしそうだ。

 

いいアイデアだが私どもの任務は、投資を誘致するということ。プライベート・エクイティのようなことは行っていない。ベンチャーキャピタルはむしろ情報を仕入れるためのパートナー。一般的に、ベンチャーキャピタルはポートフォリオの中に20~100社の企業がある。ベンチャーキャピタルから得られる情報は、非常に重要なものだ。現地のニーズに合わせて適切なマーケティング活動を行うことの重要性は米国だけに限らない。それは東京事務所であっても同じだ。日本企業のニーズを把握することで、適切な提案をしていきたい。

  (撮影:今井康一)

 

12:59 2013/12/11


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