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2016年1月26日 (火)

なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 単行本 – 2008・2 ケンジステファンスズキ (著) 5つ星のうち 4.4 12件のカスタマーレビュー

引用


引用下條村 自治体はこうやって運営する 河村市長も同意? 1/2 

effectmangt   effectmangt

https://www.youtube.com/watch?v=z8PwWydCDMQ

11:15 2016/01/29


なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 単行本  – 2008・2 ケンジステファンスズキ (著) 5つ星のうち 4.4   12件のカスタマーレビュー

 世界最高レベルの社会保障制度を整え、食料もエネルギーも自活、世界でもっとも民主主義が進んでいる国、デンマーク。「共生」の政策理念の基盤となる国の歴史と国民の姿を通して、年金・雇用・貧困・格差・「愛国心」・環境・エネルギー・食料など問題の山積する日本社会を見つめ直す。  

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より) 

ケンジ・ステファン・スズキ

旧姓、鈴木健司。S.R.A.デンマーク、「風のがっこう」代表。1944年、岩手県生まれ。1967年、青山学院大学中退後デンマークに渡り、翌年コペンハーゲン大学政治経済学部に入学。1971年から在デンマーク日本大使館に勤務し、その後農場経営をはじめる。1979年、デンマーク国籍を取得。1990年、中部ユトランド商科大学会計学部税法学科を卒業。同年、S.R.A.デンマークを設立。デンマークの風力発電機、バイオマスプラントを日本に普及させる事業を手掛ける。1997年、デンマーク・ウアンホイに「風のがっこう」を設立。環境政策などの視察でデンマークに訪れる日本人のための研修施設として運営を開始。2002年、京都府弥栄町に「風のがっこう京都」を町営の環境教育施設として開校。2004年、「風のがっこう栃木」と業務提携し、研修業務を支援。現在は、日本とデンマークを往復しながら、さまざまな事業を手掛けるほか、講演活動などを精力的におこなっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)  

登録情報 単行本: 189ページ出版社: 合同出版 (2008/02)

発売日: 2008/02

目次

まえがきにかえて・9頁・


私がデンマークに移り住んで、今年で41年目の春になります。本文にも書きましたが、デンマーク留学の目的はこの国の社会福祉政策を勉強することでした。大学4年、23歳の時でしたが、ユトランド半島の片田舎の農場にホームステイしてデンマーク語を聞きかじりながら、翌年1968年の9月、コペンハーゲン大学政治経済学部に入学しました。

本格的に北欧風の国家経済学を学び始めましたが、実は、短期留学の計画でした。デンマークで生活しているうちにこの国のあり方にすっかり魅了されて、12年後にはデンマーク国籍を取得することになってしまいました。今日、たくさんの学生や研究者、実務家の皆さんがこの国の社会福祉のありようを学びに訪れます。日本の国としてのあり方に欠けている何かが、この北の果ての小国にはあります。

デンマークの環境政策、とりわけ自然エネルギーに関しては前著「デンマークと言う国自然エネルギー先進国」(2003)に詳しく書きましたが、日本とデンマークを往復しながら、両国の実情を管見していると、国のあり方をもっと深く理解するために、歴史を振り返ってみたいと思う気持ちが募ってきました。9・


10頁・デンマークと言う国の成り立ちとその歴史のダイナミズム全体を叙辻することは、もちろん私の手に余るテーマですが、デンマークと言う国がなぜ、福祉国家・・・人間を大切にシステムをつくることに成功したのか、そんな国を実現した国民性はどのような形成過程をたどったのか、をまとめてみたいと思っていました。そのことが、第2の故郷である日本のあり方を考える手掛かりになうと考えたからです。

国家は結局、人々の集まりです。社会を形成した人々が、過去から継承した生活環境を基盤にして、それを改善しながら生活を営んでいます。今日の延長が明日であり、将来の社会は今日の生活から来た教訓を基に築かれていきます。

社会も国家も、繁栄と衰退、発生と滅亡を繰り返します。そのリズムや変動の要因は何なのか、その解明は歴史学の中心的な課題でしょうが、歴史家でない私は、デンマークでの生活を通じて体験したデンマークと言う国の理念・システムを手掛かりに歴史を掘り返す作業を繰り返しました。その過程で生まれたのがこの本です。

読者のみながんがデンマークと言う国のシステム、デンマーク人の国民性を理解する一助になれば幸いです。そして、そのことが同時に、日本と言う国のあり方を考え、現状を改善していくヒントのようなものが見つかれば望外の喜びです。

平成28年1月26日 火曜日・

 

第1章 デンマーク・私が「理想とする国家」に近い国

・1・億単位の医療費も税金から給付される・11頁・

・2・教育費はすべて国が負担する16・

・3・18歳からは国は扶養義務を持つ・22頁・

・4・食料自給率は300%を超えている・25頁・

・5・エネルギー自給率は156%を達成した・26頁・

第2章 なぜ、デンマーク人は国に愛情を持つようになったか

・1・民主主義と幸福度は比例する・31頁・

・2・デンマーク人の事業化は国境を越えて活躍する・34頁・

・3・バス・タクシーの運転手が女性なのは当たり前・39頁・

・4・国政選挙の投票率が80%を割り込んだことが無い・40頁・

・5・高額の税金に対してさしたる不満が無い・46頁・

・6・デンマークの田舎生活は快適・50頁・

第3章 氷河とバイキングがつくった北欧の小国

・1・狩猟民が南の方から移動してきた・53頁・

・2・バルト海がデンマークの農業を育てた・58頁・

・3・バイキングはヨーロッパの文化を攪拌した・60頁・

・4・バイキングの遺伝子がデンマーク人を鼓舞する・63頁・

・5・国民の85%がキリスト教徒・70頁・

・6・国際性は国土が狭く天然資源が無いからこそ育った・75頁・

第4章 デンマーク人が国を愛する心の原風景

なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか・第4章 デンマーク人が国を愛する心の原風景・平成28年1月26日・

http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/4-28126-6e43.html


・1・何百年もドイツと国境をめぐって争ってきた・77頁・

・2・地方自治無くして民主主義国家はあり得ない・84頁・

・3・何百年も国土の争奪戦が繰り返された・94頁・

・4・北欧三国の王家は親戚関係にある・99頁・

第5章 農奴が下支えした中世のデンマーク社会

・1・デンマークを支えた穀物とニシン・103頁・

・2・北欧三国の連携が始まった・105頁・

・3・職人層が力を持ち始めた・109頁・

・4・中世社会の基本構造・118頁・

・5・宗教改革を潜り抜けたヨーロッパ社会・122頁・

第6章 神聖なる王権から国民の主権へ

・1・絶対王政から立憲君主国に・127頁・

・2・「生地帰属農民制度」の過酷・130頁・

・3・フレデリック6世の善性・133頁・

・4・近代憲法が誕生した・136頁・

・5・自分たちを守る仕組みとしての協同組合・140頁・

・1・デンマークの手工芸と産業の発展・142頁・

第7章 福祉制度をつくり出したデンマーク・福祉を考えなかった日本

・1・200年前の「貧困救済計画」の先進性・147頁・

・2・国家の倒産と社会福祉システムの崩壊・149頁・

・3・自治体が受け持つ3つのセイフティーネット・150頁・

・4・国民生活への最低限のセイフティーネット・152頁・

・5・日本では国民のための福祉政策が実施されたことが無い・153頁・

第8章 デンマークは「戦争」とどう闘ったか

・1・ドイツに占領されたデンマーク・157頁・

・2・ドイツ軍に抵抗した国王と若者・158頁・

・3・ユダヤ人を救ったデンマーク市民・161頁・

・4・戦争をしない決め手は食料とエネルギーの完全自給・163頁・

第9章 教育の目標は「国家運営」に参加する国民をつくること

・1・エネルギー自給政策に国民が参加している・165頁・

・2・環境教育の目標は行動する市民を育成すること・166頁・

・3・日本の学校教育は解決策を考えさせない・169頁・

・4・まだ、「国定教科書」が生きている国・170頁・

・5・新しいものを生むには現状の否定が必要・171頁・

第10章 借金を残さないデンマーク・つけを残す日本

・1・高福祉でも国家財政は黒字・173頁・

・2・引き継がれた悪癖・権力者の汚職文化・174頁・

・3・毎年借金が増えていく日本・176頁・

・4・納税額が少ない日本・177頁・

・5・米国の下請け国家になっていないか・178頁・

・6・故郷の里山を「産業廃棄物」の捨て場にする行政マン・179頁・

・7・「国民の福祉」はごく基本的な願い・182頁・

・8・この現状を変えていくいくつかの提案・184頁・

あとがきにかえて

資料・参考文献・

平成28年1月24日  商品の概要に戻る


間違いなく考えさせられます 

北欧の福祉モデルについて何冊か読んでみましたが,デンマーク入門ではこの本が一番かと思います。決して,専門的な本ではないのですが,今住んでいる人の目線だけでなく,日本人としての目線でも意見が述べられており,いろいろ考えさせられました。圧巻は,デンマークの歴史を説明しながら,現在の福祉政策や国民性のベースとなっている事柄を指摘しているところです。事実や実態の解説だけでなく,それらのバックグランウンドまで言及していることで,理解がぶれなくなります。


 それにしても,デンマークの現憲法が福音ルーテル教会の支持を明言していることや,バイキング船に甲板がなかったことがドイツの繁栄につながったことや,長きに渡りデンマーク国王がノルウェー国王/スウェーデン国王を兼務していたことなど,北欧については知らないことばかりだと思い知らされますね。

共生社会を考えたい

 

教育の成果は個人に恩恵をもたらすばかりでなく、デンマーク社会を豊かにする国政選挙の投票率の高さ 国を愛するがために行動することその国に住む国民が「競争社会」を選ぶのか「共生社会」選ぶのかなど医療・福祉・教育制度の充実ぶり、食料・エネルギー自給率の高さ、それらを支える国民の意識について考えさせられました。

ただ、それらを賞賛する文章が続き、その現状や課題についてはまったく記述がないので、すべて信じていいものかという疑念も生じました。デンマークに住んでいる方のブログなどを見ると「幸福な国」に否定的な文章も散見します。この本を書かれた方は風力発電機の事業をされているそうなので、デンマークで成功された方として、またはそのセールストーク的な面もあるのかと感じました。

共生社会を考えたい

 教育の成果は個人に恩恵をもたらすばかりでなく、デンマーク社会を豊かにする国政選挙の投票率の高さ 国を愛するがために行動することその国に住む国民が「競争社会」を選ぶのか「共生社会」選ぶのかなど医療・福祉・教育制度の充実ぶり、食料・エネルギー自給率の高さ、それらを支える国民の意識について考えさせられました。

ただ、それらを賞賛する文章が続き、その現状や課題についてはまったく記述がないので、すべて信じていいものかという疑念も生じました。デンマークに住んでいる方のブログなどを見ると「幸福な国」に否定的な文章も散見します。この本を書かれた方は風力発電機の事業をされているそうなので、デンマークで成功された方として、またはそのセールストーク的な面もあるのかと感じました。


間違いなく考えさせられます 

北欧の福祉モデルについて何冊か読んでみましたが,デンマーク入門ではこの本が一番かと思います。決して,専門的な本ではないのですが,今住んでいる人の目線だけでなく,日本人としての目線でも意見が述べられており,いろいろ考えさせられました。圧巻は,デンマークの歴史を説明しながら,現在の福祉政策や国民性のベースとなっている事柄を指摘しているところです。事実や実態の解説だけでなく,それらのバックグランウンドまで言及していることで,理解がぶれなくなります。

 それにしても,デンマークの現憲法が福音ルーテル教会の支持を明言していることや,バイキング船に甲板がなかったことがドイツの繁栄につながったことや,長きに渡りデンマーク国王がノルウェー国王/スウェーデン国王を兼務していたことなど,北欧については知らないことばかりだと思い知らされますね。


みんなが読めば日本人の考え方も変わるかも 

感心したこととしては、エネルギー自給率が100%以上であること。自立した国民性であること。医療や教育費の心配がないこと。国の借金がないこと。税率が高いためみんなが政治に関心を持ち、参政していること。

それに比べ、日本人はすべて正反対だ。この本を読んでから、「私も国を変えるのは政治家でなく、国民ひとりひとりなんだ」と感じ、なるべく意見を発信したいと思うようになった。皆さんも、国を建て直すために、建設的な意見を出そう。なんなら、自ら立候補して、利権にしがみつく政治家を引きずり下ろそう。これからの日本がお手本にしたい国の本 日本人の幸福観を根本から変えてくれる1冊

投稿者21世紀のケインジアン2008年11月13日


世界一幸福な国ランキングNO.1の国、デンマーク。環境先進国として知られているるほか、日本がとても遅れているワークライフバランスの先進国としても知られている。

人口540万人の人口は、北海道とほぼ同じでしかない。しかし、デンマークの歳入額は、北海道の 20倍にもなる。一人当たりのGDPは700万円といわれ、健全な黒字国家である。赤字で苦しむ日本国とはまったく違う。国も潤い、国民も経済的に豊かで幸せ感が高い国が、デンマークだ。「持続可能」というテーマで世界を見ていると、デンマークで行われてきたことが大変興味深い。日本人の幸福観を見直す観点からも是非、読んで欲しい一冊です。

日本も国民全体の国政への関心を高めることから始めよう

 

歴史をなぞりながら、今のデンマークを解説している。デンマークが福祉国家へ歩み始めたのは、1683年の「クリスチャン5世のデンマーク法」あたりから原型が形づくられている。

キリスト教を基礎とした人道主義と、民主主義を基本とした自立精神がある。

1、デンマーク人は建国以来ヨーロッパ全体を市場として生きて来た国民である。

2、その歴史的過程が今日の世界を相手に事業をする企業や個人事業家にまで継承されていること。

3、権限を持つものが弱者を庇護し、弱者同士が互いを守り合う「共生の国民性」は「デンマーク王国」を建国する過程で費やされた大きな犠牲が生み出したものであること。

国民各層が大きな犠牲を払って国を守ってきたことが「国を愛する国民性」となり、国家を守ることとは何か、を認識する国民を育成してきた。

それが「ゆりかごから墓場まで」国民同士で守りあう、社会福祉制度の導入につながり、今日の自然エネルギーの導入にも繋がっている。

 

食糧とエネルギーが自給率100%を越えている。教育と医療費は無料。確かに税金は高いが、政治を信頼しており国民の合意はできている。すべてが良い循環になっている。

投票率も高い。国防の意識も高い。国民背番号制があり脱税が難しい。行政と産業が癒着しておらず官僚の天下りがない。労働組合は企業別ではなく職種別になっている。新規採用制度や定年がない。デンマーク王室は国民から敬愛され、垣根も警備もいらないぐらいの環境を作り出している。

デンマーク人は自国を愛するが故に高額な納税をし、国を守るために徴兵制度を導入し、中学生から政治活動に参加する。家族の誕生日にも国旗を揚げる。国歌は賛美歌と一緒に歌われる。

つまり具体的な行動になって「愛国心」が現れているのだ。 

子供は大学進学を目標とせず「教育の目的は個人が持つ能力や才能を社会のために育成すること」という教育理念がはっきりしている。

正誤でなく問題解決能力を伸ばす。デンマークでは歴史教育に力を入れている。

国家運営に参加する国民を作ることを目標としている。

12歳で「高速道路の建設に関する賛否」というテーマを取り上げ、自然破壊というマイナス面と、物流効率活性化というプラス面を考える。デンマークの選挙権は18歳からだが、12歳頃からこのような国家運営の根本となる施策への自己の意見を確立するための準備が始まっている。そして18歳になった時、選挙を通し国政に参加する市民としての条件を育成している。

日本では自分の意見を持ち行動していく人格を育てることが教育の目標になっていない。知識は身につけるけど行動力は持たない、政治に口を出させない。

良い大学に入ることが目標になってしまっている。

デンマークでは入学試験がなく、高校での成績がそのまま入学資格になる。

サバドーというモラトリアム期間があり、多くの若者がアルバイトをしながら様々な社会活動に参加し、のちに職に就いた時に役立てる。 

こうして日本と比較してみると両者の違いがはっきりしてくる。デンマーク人は国との一体感や信頼感がある。親子の団らんでも政治の話をする。問題を放置することなく積極的に話し合い改善策を考える。日本では愛国心や国旗や国歌に対して複雑な思いを抱えたまま今日まで放置されている。

日本人は国の運営に対して参加意識が薄い。官に服従する精神が強く、「誰かが何とかしてくれる」と人任せになりがちで、政治に無関心で投票率も低い。民主主義を行使していないのだ。

著者は「このような社会を作った原因は国家を管理運営する人たちに「あるべき国家の理念」が欠けているため。」と語る。その通りだと思う!

国全体のことを考えない官僚。カネと権力しか興味のない政治家。

国民から権力者まで日本国民ひとり一人が、「臭い物に蓋、見て見ぬフリ、知らんぷり、自分さえ良ければいいという歪んだ個人主義」が蔓延している。こういったことが国家運営の障害になっていることは間違いないだろう。

確かにデンマーク人の意識の高さには見習うべきところがある!

日本はデンマークの制度を取り入れるにしても、まずは意識改革が先だろう。

日本もデンマークを参考(モデル)にして、国の設計図から構想できるはず

 

北欧がかなり高いレベルで福祉と政治への満足度を実現していることはよく知られている。この本で示されたデンマークの福祉や諸制度は人間のことを考えられて構想されて実行もされていることがよくわかる。日本で想像する以上のレベルに達しているとみな驚くに違いない。

 

著者のお孫さんの医療に関する記事を読むと痛感する。心臓の病気で手術と入院を何度も繰り返しているが医療費は無料で親が看護のための休暇をとれば収入もそれなりに補ってくれるというものだ。

 

こういう事実を挙げていくと、日本の政治かや企業をはじめとするリーダ達は人口が少ないからできたなどと逃げ腰になることが殆どだし、官僚も似たような態度だろうな。

 

日本の政治、経済力と国民福祉の関係、税金の使途など改善する際の方向性を示してくれている本です。多くの人が手にとって欲しい。


日本でも高福祉と強い国際競争力が実現できる?!

 

高額な税金(所得の70%、消費税率25%)で、無料の教育、無料の医療費、失業時の高保障を実現しているにもかかわらず、国家財政は黒字、世界競争力ランキングで3位(日本8位)、1人当たりのGDPは日本の1.35倍、1人当たり貿易額は日本の3倍、エネルギー自給率156%、食料自給率300%超。

デンマークが「なぜ、どうして」これらを実現できたかを、デンマークに生活している生活者の視点とバイキングの時代から遡って視ることによって答えを見出そうとしたのがこの本です。体系的で整理された学者の本ではないが、競争社会、格差社会と福祉・高齢者切り捨てで混迷する日本の根源とあるべき姿を考えさせてくれる本である。

皆に読んでほしい。

北欧の高福祉は何十年も前から羨望の対象として語られてきたが、そのために長い時間をかけて国づくりを行ってきたことにまず注目すべきであろう。高福祉には高負担が伴うが、それを厭わない国民に日本人はなれるのか?それともやはり日本人には「中福祉・中負担」なのか?このような語り尽くされた論議のほかに私が注目したのは、本文中にあった、自分たちの将来の生活のために、安易に隣町の安い店に走らず、少々高くても近所の店で買うというデンマーク国民の姿勢だ。これなら、中国野菜や餃子問題は起こらないであろう。自分中心の生活により自らの首を絞めている私達日本人にまねができるだろうか。

幸福王国と不幸王国、同じ王国でありながらなぜこんなに正反対なのか、

 

だれもが尊重される社会と誰もが尊重されない社会。のびのび社会とジミジミ(チジミとジメジメの合成)社会。よしよし社会とダメダメ社会。日本の王様はなぜ国民を幸福にしないのか。

日本の教育はなぜ国民を奴隷化しようとするのか。日本は一部の特権者のためにすべてが奴隷化され、幸福が犠牲にされるという状況である。民主政治ではなく脅迫政治が実態である。

 

解決策:

公務員の終身雇用、年功序列制を禁止すること。公募制にすること。年齢身分差別に関わる制度をすべて見直すこと。小中学校でも同じクラスにいろいろな年齢の人がいるような状態にすること。小中学校も単位制にすること。落第、飛び級は個性の尊重として認められるべきこと。

エネルギーと食料自給率が100%を超えるデンマーク

 

デンマークという国を日本との比較で紹介した本です。教育や福祉に対する意識の高さ、愛国心、どれも今の日本にとって見習うべきところと思いますが、デンマークという国の歴史的な背景から来るものだと言うことが、詳細に述べられています。

中でもうらやましいのが、エネルギーと食料自給率が100%を超えるという点です。両方とも、これから世界的な不足が問題になることは目に見えていますが、これらの問題を克服している点に、デンマークと言う国のすばらしさを感じました。

公務員の必読本に指定して欲しい良書です。

 

タイトルが長く、一見くどい感じを受けましたが読んでみて、まず、日本の全公務員が読むべきだと感じました。驚いたことにデンマークは世界最高レベルの社会保障制度が整っていて、食料もエネルギーも自国でまかない、かつ民主主義がもっとも進んでいる国だそうです。 


例えば●病院の入院、治療費は無料

●小学校から大学までの教育費も無料

●大学入試もなし

●高等学校三年間の全ての科目の平均点数で大学と学部が決まる

●職業学校や大学に通学する18歳以上の国民には国庫から「奨学支援金」が支給そして、国民は福祉制度を支えるため

〇高額な税金を納付当たり前といえば当たり前ですがこの素晴らしい社会保障制度は制度を乱用しないという国民同士、国民と国家の信頼関係、税金が国民全体のために使われているという合意が大前提となっています。

(血税を湯水のように垂れ流し続ける日本とは大違いです。)

同じ地球上にここまで対照的な国が存在しているとは!食料自給率も300%以上、エネルギー自給率は156%超、財政は黒字。かたや、日本は900兆円の赤字を抱える借金大国です。

加えて年間の自殺者が毎年3万人以上、無縁死、孤独死される方々も3万人以上で美しい国どころか恐ろしい国になりつつあります。家族の責任は家長にあるように国家の責任は国のトップにあります。ぜひ、公務員、特に国会議員は何度も精読し、自らの税金の垂れ流しと事なかれ主義を猛省し、少しでも幸せな国を築いてほしいと思いました。また別の意味で、危機感と希望の両方を持つことができる素晴らしい本だと思います。

健全な日本社会をつくっていくための手引書楽しく読ませていただきました。

特に「フレデリック6世の善政」や「200年前の貧困救済計画」の先進性に驚かされました。なんて人民のことを大切に平等に考えているのでしょう。また、第2次世界大戦中、ドイツがデンマークに侵攻した時、わずか4時間で降伏し、占領を受け入れた指導者の判断もすばらしいと思います。それに比べて日本のとった行動は被害、加害を含め情けないの極みです。

デンマークの良さをたくさんの日本人に知ってもらって、日本をもっと改善していって欲しいと思います。その上で、本書は手引書として大いに役立つと確信しております。

15:10 2016/01/24

  



誰のための改革か 単行本– 2002・5・20 内橋 克人 (編集) 5つ星のうち 5     1 件のカスタマーレビュー容(「BOOK」データベースより) 

市場原理を至上のものとして推進されるいわゆる「規制緩和」こそが矛盾を拡大させ、大きな社会的ダメージを与えるものとして批判し続ける編者の警告は不幸にして的中した。本書は、その後「経済戦略会議」から「小泉構造改革」へと展開してきた経済政策が、いっそう事態を悪化させるものであったことを明らかにする七人の論客による現代日本への警鐘。小泉改革の本質とされる「構造改革」が政策的に完全に破綻し、取り返しのつかないまでに事態を悪化させているとして徹底的に批判。危機の真因が小泉改革にあることを明らかにするとともに、これに替わって選択すべき政策を提示する。

 内容(「MARC」データベースより)

『世界』における対談と論考をまとめた1冊。日本経済を危機的状況に陥れている真因は何か。小泉首相主導の構造改革を徹底批判し、小泉改革が完全に破綻しているだけでなく、危機を増幅していることを明らかにする。

単行本: 212ページ出版社: 岩波書店 (2002/5/20)発売日: 2002/5/20

 目次

「小泉構造改革」は私たちをどこへ導くか(内橋克人)

「経済戦略会議」徹底批判(金子勝)

米同時テロ以後の世界経済―マネー資本主義こそが問題の核心(金子勝)

小泉「構造改革」はすでに破綻している(山家悠紀夫)

人間を中心とした経済社会へ(神野直彦)

ワークシェアリングとは何か(長坂寿久)

「生活大国」デンマークから何を学ぶか(ケンジ・ステファン・スズキ)149頁・平成27年12月23日・

158頁・4・生活大国と市民の意識・

内橋・日本では政治家も含めて、未だ北欧の諸国について陳腐で誤った常識が根強くはびこっています。北欧諸国は経済小国だ、人口も少ない、一体そんな小国が、経済大国日本の参考になるのか、というものです。いろいろ理想を追い求めているとしても、それは少ない人口だからこそ可能なんだ、と。

159頁・実際、一人当たりのGDPではまさに世界トップクラスです。日本の比ではない。仮に、絶対額から見て生産大国でないとしても、社会の付加価値とかインフラの充実度、それに農業、ITなど先端産業は抜群に強い。

「経済大国」でない、というのなら、むしろ誇るべき「生活大国」と言うべきです。不勉強故に日本の知識人はこの実態を知らないわけですね。

 

また、人口が少ないと言いますが、エネルギー自給圏の形成一つ、日本でやってやれないはずがない。北海道、四国、九州、そして本州の東西南北、それらを一つのエリアと見れば、全く条件は同じ。むしろ今問われている地域主権とはこれをめざすことです。再生可能エネルギーの可能性一つ、北欧が参考にならないはずがないのです。

 

スズキさんの言う「80%の民主主義」、つまりは実質民主主義と日本の形式民主主義との違いを、深く理解することが、日本の未来にとって欠かせないと思います。

スズキ・高いですね。例えば、私の主宰する「風のがっこう」の周辺に住んでいる農家の人たちにコーヒーを呼ばれて二時間ぐらいおしゃべりをすると、必ず政治の話題が出ます。自分の町の政治、国の政治の話が必ず出る国なのです。

いまデンマークでは、世帯数で約20万世帯、ざっと見て40万人の人たちが風車に投資しています。

160頁・選挙民400万における40万と言うと、10%です。デンマークで世論調査をしますと、風車をもっと増やしたいと思っている人が今でも約70%いる。それに対して政治、あるいは行政側がストップをかけようとしますと、政治家を選び変えるよう行動するわけです。

 

立法するのは政治家ですから、政治が変わらないとどうしょうもない事を彼は知っているのです。

デンマークの教育は法律を読むことを教えます。みんな非常に法律にうるさいです。会話の中でも、憲法や、言論の自由がすぐ出てきます。法律そのものが日常生活の中に活かされた生活。それで初めて法治国家と言えるし、民主主義が生かされてくるわけです。

 

内橋・日本の現実に比べて、声がないですね。

・スズキ・デンマークの法律も日本の法律も内容的にはほとんど変わりないです、すべてのことに関して。

・内橋・法律は同じなのに、やることは逆だ、と・・・。

・スズキ・つまり法律どうりやっていないのですよ。守られているのは道路交通法と刑法だけではないかと思います。日本の会計の中で「使途不明金」が出てきますが、これを認めている国は、おそらく先進国にはないです。それが問われてこなければいけない。それを問うような教育がなされていないことだと私には思えます。 

 161頁・5・社会とリンクする教育・


 

・スズキ・いまデンマークの人口は530万人ほどです。日本の北海道と比較してみるとよくわかると思うのです。北海道の面積はデンマークの約二倍の8万㎡で、その中に570万人が住んでいます。ところが北海道の国民総生産はどうかと言うと、デンマーク並みなのです、ということは、半分の生産力しかないことになります。

 

北海道に世界的に名の知れたメーカーがあるかと言うと、そういう企業も育っていません。ですからこれは人口の問題と言うよりも国民性の問題、つまりは教育の問題です。 

資源のない国が頼るのは国民しかいない。それがデンマークの教育のベースにあると考え方です。小学校から大学まで授業料は無料で、しかも親としての扶養義務は18歳まで、それを過ぎた子供たちについては国が生活費の面倒をみます。親と子の経済的関係を切り離したわけです。

 

ただ、教育の基本理念から見ると、日本の教育基本法はデンマークのものとほとんど差がないと思います。

 

・内橋・教育基本法通りにやれば日本もデンマークのようにできるのだというご意見ですね。

 

・スズキ・そうです。例えば、日本の初等教育の目標の中に、「国際協調」があります。自分の郷土を知り、国を知った上で、国際協調をする子供に育てることが重要だとみなされているならば、少なくとも国際協調の中身として、食料とエネルギーの自給率について認識させなければならないはずです。 

162頁・自分たちの食糧やエネルギーがどこから来ているのか、現実世界の中で位置づけることによって、はじめて国際協調という言葉の意味が分かってくるのです。

 

「なぜデンマークにできて、日本にできないのか」とよく訊かれます。デンマークでは、日本と違って実社会と学校がリンクしています。学校では「あなたの言う・これが正当だ・という意見は、社会全体にとってどういう意味を成すのか?」という問いかけが常になされ、その時に「社会全体にとってこのようなプラスがある」と言う形で意見を表明しなければいけない。そのような訓練を受けているのです。

 

 

 ・6・答えが一つしかない教育と、たくさんある教育・  

・内橋・高等教育についてはどうですか。最初は様々な時計数次の解析の勉強からとおっしゃっていましたね。

 

 

・スズキ・私はコペンハーゲンの大学生経済学部に二年ほど在籍したのですが、経済理論の最初の時間に、まず「国際経済とは改定経済を大きくしたものである」と叩き込まれます。拡大解釈すると、お父さん・お母さんが子供を育て、守るために働くのだとすれば、国家の中枢にいる政治家・中央官庁の役人たちは、国を守るため、国民を守るためにいるのだ、と。そういう考えのもとに、国全体の統計、例えば国民総生産や消費者物価指数の算出の方法を教えられます。162頁・15/12/24 5時52分33秒


 

163頁・昨年(2001年)5月にデンマーク経済が一時的に加熱したのですが、その時取られた対策は、住宅ローン…デンマークは住宅を国民に持たせる政策を採っています・・・その利子に対して所得から控除していた額の割合を45%から38%に引き下げることでした。  

そういう形で国民の可処分所得を減らせば、経済を冷やすことができる。国の中枢にいる人たちが統計を基に国全体を見通せるから、そのような対策が可能になるのです。

 

 

・内橋・北欧諸国においても、日本とほぼ同じ時期にバブルが発生し、90年代に入ってすぐ崩壊しました。金融におけるビックバンが引き金で、商業地を中心に地価が上がったのが主な原因だったようです。しかし、住宅地は投機の対象にはなっていません。住宅地も巻き込んだ悪性バブルの日本との違いは厳然としています。だからこそ、不良債権の処理も素早く、手際よく済ませることができたのです。

 

 

もっと注目されたのは、そのバブルがデンマークにおいては発生しなかったことですね。その秘密が住宅政策にあったこと。なかでもローンの利子について所得控除の割合を動かす、という背景に、すべての国民に住宅を持たせることが、人々の安定と安心につながる、という政策があった…。163頁・  


164頁・スズキ・日本にも経済のプロだという人たちはたくさんいたはずなのに、当時何をやっていたのか。「東京の地価を合計すればアメリカ全土が買える」なんて、あり得ないですよ。そのツケが10年かかっても払いきれないわけでしょう。

 

 

・内橋・10年をもってしても清算できていません。

 

 

・スズキ・日本の学校教育がいかに実社会と離れた勉強をさせているか、ということです。 

日本では一年間に起業する人の平均が7,000人だと言われています。一方のデンマークでは、平均して年16,000人、去年でも13,500人が起業しています。日本の人口規模に置き換えると、毎年30万人が起業している計算になります。日本ではわずか7,000人と言うことは、つまり企業化になるようなきょう一句、使える勉強をしていないことの反映だと思います。

 

 

私がデンマークの大学で大変勉強になったことは、例えば筆記試験で4時間以下の試験はないのです。教科書から参考書、全部持ち込みOK。ただ回答は15枚くらいになる。

・内橋・その人の本当の考えを問う訳ですね。 

・スズキ・どんな問題が出るかと言うと、会社の会計報告を示して「この会社は景気が悪いが、どうしたら改善できるか論ぜよ」。もちろん教科書には答えは出ていません。解答は決して一つではなく、あらゆる解決策を探ることが可能です。

 ・内橋・回答が一つと言うような問題は出さないということですね。一方、いまの「小泉ブーム」を考えてみますと、答えが一つしかない教育を国民が受けているから、80%の内閣支持率がこの危機的状況の中で続いているのだと思いますね。164頁・


 165頁・結局答えは一つしかない。そして、「何とかしてくれるだろう」と幻想。ほとんどその根拠を問わない。まさに人気タレントと同じです。

 

・7・農業を大事にする国、しない国・

 

・7・農業を大事にする国、しない国・ここまで15/12/24 8時57分31秒

・内橋・デンマークは農業を国の産業として重視しており、食糧の自給率も100%をはるかに超えています。

19世紀末、スカンジナビア三国は、新大陸から安い農産物がどんどん入ってきたため、農業恐慌に襲われました。しかしデンマークは、恐慌の埒外で、非常に立派に切り抜けた。デンマークが農業を大事にするというのは、国土を一皮むけばそこはツンドラで、人間のエネルギーを農に注がなければ生命さえも維持できない、そういう限界状況では、国や社会にとって何が大事かわかっていたからだと・・・。

・スズキ・19世紀中頃、特に東欧、アメリカから安い小麦がどんどん入ってきたときに、イギリスやフランスは自国の農業を保護するために関税で対抗したわけですが、デンマークはもともと輸出の割合が多かったものだから、その方策では対抗できなかった。ではどうしたかと言うと、農家の人たちはその穀物を家畜に食わせることで付加価値を高めた。165頁・


166頁・餌の確保のために作付を大麦に変えていき、それを家畜に与えることで、穀物を肉やミルクに変えたのです。

 

 

・内橋・本当の意味の「米百票」の思想ですね。そのような歴史的な背景もあって、デンマークは農業国で、農業を非常に大事にしていますが、日本の場合は逆に農業軽視で、農産物も安いところから買えばいいという国際分業論です。経団連はずっと「日本農業不要論」を主張してきました。 

いま地方を歩いてみると、減反のために田畑が荒れ果てている。実際に米を作りたくても、作ればまさに村八分です。法律的な報復もあります。やむなく放置して、そして日本は自分で作れる穀物を他の国から買っている。エネルギーも食糧も自国内でカバーすべきだという「人道主義」から見れば、こういう状況は当然、世界に貢献していないというご意見ですね。 

・スズキ・その通りです。一年間に日本が輸入する穀物の量は約3000万㌧と言われています。数字だけではピンとこないのですが、いま焦点になっているのは水の問題です。

 ・内橋・「ブルーゴールド」(黄金に水)とさえ言われますね。

・スズキ・地球上には、実際たくさんの水がありますが、人間や動物が生きるために使える水は、わずか1%しかありません。世界には水の汚染に困っている人も、飲み水に事欠く人もたくさんいる。例えば、小麦一キログラムを生産するのに約600リットルの水を使います。166頁・ 


167頁・日本が輸入する小麦の量が年間約600万㌧ですから、約35億立方メートルの水が必要です。この数字は、大阪市が消費する水の量の七年分に相当します。それだけの水が日本に輸出されていることになります。

・内橋・結局、世界から水を奪っているということですね。そういう考え方を日本の国民が持てるようにするに、どうしたらいいでしょうか。

・スズキ・日本には立派な教育基本法があるのですから、そこへ戻ればいいのです。歴史のことも教えなければいけなと思います。大事なのは、過去少なくとも150年から最近の歴史。祖父・祖母の世代が、そうやってこの国を守ってきたのかがわかると、いかに資源が大事かもわかってきます。日本経済はアメリカをまねたとよく言いますが、アメリカの農業こそ学ばなければいけないのです。アメリカ経済が強いのは、まず穀物を抑えているからです。そういう根本をよく教えたうえで、農業について判断を下していただきたい。

・8・理想と人道主義は可能か・ここまで・15/12/24 10時30分23秒

・内橋・大変不幸なことに、いま日本では「聖域なき構造改革」なるキャッチフレーズが大はやりで、教育さえもすべて御破算に、という状況です。教育に見直し、大学制度の見直しと、まさに教育基本法破壊過程にあります。167頁・

168頁・もう一つ不幸は、日本の中で「歴史が大事だ。どのようにして日本の国が守られてきたかを教えるべきだ」と言う意見は、主として短絡的に民族主義・国家主義につながる側から、しかもグローバリゼーションへのアンチテーゼとして出てくる。その逆に、「すべてアメリカのまねをすればいい。今時代はグローバリゼーションである。グローバル・スタンダードでやるべきだ「と。このどちらかしかないのが現代日本の言説です。今おっしゃっている意味はそうではないわけですね。

・スズキ・そうではないです。日本の皆さんとディスカッションをすると、よく極端になってしまうのですね。これは教育の中でディベートがなされていない証拠です。応えはたくさんなければならないにもかかわらず、一つしかないから、話が全部極端になってしまうのです。

・内橋・なるほど。

・スズキ・それから形式も大事だけれども、もう少し理想と人道主義に基づいた教育が必要ですね。共生の社会ですから。

・内橋・理想、そしてそれを裏付ける人道主義、この二つが大事ですが、日本の場合、まさに「形式主義」であって、理想を解きますと「嘴が黄色い」と言われる。日本の場合、私たちが一番懸念しているのは、強いものには弱く、弱い者には強い、という日本人社会的性癖です。168頁・

169頁・デンマークでは、啓蒙主義が、全部そういうものを破壊してくれたのです。つまり、権力を全部地表に落とした。日本では今でも「天下り」問う言葉が使われていますが、そういう言葉を使っていいかどうかが本来問われなければいけない。そんな古い言葉は捨てなければいけない。あの人たちは天にいるのではなく、幸いにして不幸にしてか、役人になっているのに過ぎないのですから。  

・内橋・行政絶対優越、官僚支配という、日本特有の社会のあり方はまったく変わっていないし、いま叫ばれる「聖域なき構造改革」のお題目にしても、見せかけの官僚征伐を売り物にしているだけです。小泉政権にすり寄る特定の学者グループ、特定の学派の一族支配といっていい。

官僚たちの特権を憎むからこそ、その打破をうたう小泉流に多くの日本人が拍手を送っている。しかし、その実態は旧大蔵省、現財務省の掲げてきた財政原理の、まさに忠実な実行者こそ、ほかならぬ小泉首相であり、残念ながらそのことに国民はまだ気づいていない。「痛み」と言う名の大衆課税、「改革」と言う名の格差拡大、そして依然として官尊民卑の思想ははびこり続けています。

 ・9・ワークフェアの考え方・ 

・内橋・ところで、デンマークの福祉政策と環境政策はリンクしているという、この考え方は貴重ですね。169頁・


170頁・・スズキ・人間が生まれてから死ぬまでの過程で、福祉というのはどこに関わってくるかを考えると、健康である限り病院にかかる必要はないですから、健康の人は全然福祉のお世話にならないのです。死を迎える時になって、もしかしたら病院に入る、つまり福祉のお世話になるかもしれない。一方環境と言うのは、その人の生きる過程の中にあり、過程の中で環境を汚染してその人たちの健康を害する結果を招いたら、福祉の負担が増えてくるというのが見えてくるわけです。

 

人が生きる過程における最低条件として、きれいな水と空気を確保しておかなければいけない。食べるものを含めて。これがデンマークのおける環境政策なのです。有機食品が大変はやっているような国民性ですから、デンマークの福祉に実際にお世話になっている人は何%かと言うと、おそらく大変少ないのではないかと思います。 

「それだけ福祉をよくしたら、誰も働きにいかないのではないですか」とよく訊かれるのですが、「人間と動物の違いだ」と私は答えます。人間とは、自分の可能性を追求する存在だというのがデンマーク人の考え方です。餌だけで生きているのではなく、自分が生きたいという何かを残しておきたい。給料は要らないけれどもこういう仕事をしてみたい、とか…。ですから3,4回は平気で職を変える人が多いのです。

 ・内橋・「ウェルフェア」と「ワーク」の合成語で「アークフェア」と言うのがありますね。働くことが福祉だ、と。これが自然に、すんなり入ってきます。

  

171頁・ 


・スズキ・この職を失えば食えなくなるというのなら、会社にしがみつくのも分かりますが、好きでもない仕事に行く必要がないのは、ちゃんと食べられる保証が後ろにあるからです。それによって初めてその人の能力が発揮でいるのですね。 

・内橋・なぜ日本のような「経済大国」が10年をもってしても不良債権一つ処理できないか、理由がよくわかります。日本では会社が潰れると人間も潰れてしまうからです。デンマークにしても、他の北欧の国々にしても、会社は潰れても人間は潰れない。食べて行けるわけですから、多額の不良債権を飼明けた会社は早く潰した方が社会的コストも少なく済む。そういう方向に自然に向かっていくわけですね。 

・10・福祉に裏打ちされた納税感覚・ここまで・15/12/24

・10・福祉に裏打ちされた納税感覚・ここまで・15/12/24 14時20分52秒

・内橋・デンマーク、あるいは北欧の国々於いて、日本でいう「福祉」とは、福祉の本質が相当に違っているように思うのです。デンマークの人々が海外で事故にあうと、治療費の請求書のあて名がすでに書いてあって、それはデンマーク政府なのだと。

そのシステムにまだ入っていない日本で医者にかかった場合、たて替えておけば後で政府が補償してくれる。世界中どこを旅行していてもどこで活動していても、ひとたび怪我をしたり病気になれば、国が面倒を見てくれる。これは単なる福祉ではありませんね。171頁・


172頁・・スズキ・自分の国の国民をいかに大事にするかということの現れです。国民も、これだけ大事にされたら、税金を払っても惜しくないと思います。デンマークは世界で一番の重税国です。

100円のうち51円か52円の税金を取られているけれども、やむを得ない。なぜなら払っている先が見えるからです。しかも、人頭税ではなく所得税ですから、所得のない人は払う必要がない。税金が高いと言って逃げ出す人もいますが、たいてい戻ってきます。やっぱりデンマークが一番安心して住んでいられる、と。

・内橋・日本で今、再び消費税引き上げ論が出ています。課税最低限度額の引き下げも言われています。低所得層も所得税を払いなさい、国を支える気概を持ちなさい、と政府・自民党は叫んでいるわけです。

・スズキ・日本の国民が反対するのも分かります。払った税金がどこに使われているのかも見えないのですから。

大企業が倒産するからと言って、巨額の資金を投入するのも不思議ですね。それに対して説明は一切なく、国民の側も説明を求めない。金融機関等にあれだけの融資をする余裕があるのなら、メーカーなどモノづくりの担い手たちを育てなければいけない。もう既に使い込んで、足りないからまたくださいなんて、お金をドブに捨てるようなものです。172頁・


173頁・そういう会社は無くていいのですよ。新しい産業を起こすことに資金を投入しないと、いつまでたっても豊かにはなれません。

デンマークの場合なら必ず、資金投入の目的を厳しく問われます。一五歳から確定申告をする国で、皆に個人番号がついていますから。

・内橋・国民総背番号制ですね。日本で導入すると、大変なことになります。まさに管理国家になってしまう。 

・スズキ・導入したら、おそらく正当でない方法でお金を得ている人が一番困ると思います。もちろんデンマークでも、何とか税金を逃れをしようとする人もいますが、重罪に問われます。ヨーロッパで世論調査をした中で、「政党でないお金をもらうことはいけないことだ」と言うモラルに賛成する割合はデンマークが七三%でトップなのです。


・内橋・これも「八〇%の民主主義」に相応していますね。

・11・国のあり方を変えるための長い道のり

・内橋・確かに公平・公正という観点からすれば、国民総背番号制は極めて望ましいシステムかもしれません。しかし、それを導入するためには、前提として、国のあり方の問題があります。人権や人道主義、人間と言うものを価値の一番最上位に置く考え方がある中での公平・公正であり、したがって手段としての国民総背番号制が必要だという論理になってくればいいのですが、日本の場合、「個人情報保護法」と言われているものの中味が実際は「個人情報管理法」であるというような国のあり方を変えませんと、「国民総背番号制」も、言葉は同じでも内容は似て非なる「国民総管理番号制」になってしまう恐れがある。 


174頁・民主主義も同じで、日本の「形式民主主義」は、本当の意味の民主主義とはまさに180度違う。

日本とデンマークで同じ言葉を使っても中身が違うという印象が非常に強いのですが、両者を近づけるにはどうすべきか、ということが問われているわけですね。  

・スズキ・日本では、わかっているけれども行動に移せないことがたくさんあるのですね。デンマークのやり方をよくわかっていても、それを実行するとなると戸惑ってしまう。勇気を持って行動する人が少ない。日本の場合、国方からは動かないので、そういうことを感じる人たちが行動に移し、小さくともネットワークを作って、政治を変えていくしかありません。わたしたちの「風のがっこう」の研修生の中で、環境教育をしたいから小学校の教師になった人や、風力発電に係りたいと風車関係の商社に入った人がいます。そういう形で、相当時間がかかるけれども、意識のある人たちが行動に移していく。それ以外に方法はないのです。

・内橋・そうですね。何とか今の国のあり方、社会のあり方そのものを変えていくという方向にいかないと・・・。

・スズキ・現実として、日本が抱えている国債666兆円と言う額は、とにかく桁が大きすぎて想像もつかないのですが、174頁・


175頁・消費税を35%にしても返済に70年かかるという計算があるのですね。と言うことは、すでに今の人たちは、孫の世代までの財産を食ってしまったことになります。

今の世代の皆さんは確かに頑張ったかもしれないけれども、結果として、自分の子供に対して、食べ物も、エネルギーも確保しなかったし、借金をたくさん抱えて、しかも年を取ったから面倒を見てくれと言う。次の世代にも生きる権利があるはずです。何とか踏み台の一つぐらい作ってあげて次の世代に渡すのが、親の世代の愛情ではないでしょうか。今の日本を見ていると、次の世代に対する愛情がない。それを直すためには、心ある人たちがまとまって、行動を通じて新しい国のあり方をつくっていかなければいけない。

・内橋・気が遠くなるような時間がかかるでしょうが・・・。

・スズキ・20ねん、30年はどうしてもかかるのです。急げば急ぐほど、ものにならない。しかも絶対に東京からスタートしないですね。田舎から立ち上がってくるでしょう。

・内橋・スズキさんの「風のがっこう」の日本での第1号も、丹後半島に開校の予定ですね。今年の六月でしたか・・・。

・スズキ・そうで。人に言うばかりでなく、自分でももっと行動を起こさなければ、と思っています。175頁・


176頁・・内橋・今日は刺激的なお話をどうもありがとうございました。

發出、世界・2002年3月号・

平成27年12月24日 

・スズキ・地球上には、実際たくさんの水がありますが、人間や動物が生きるために使える水は、わずか1%しかありません。世界には水の汚染に困っている人も、飲み水に事欠く人もたくさんいる。例えば、小麦一キログラムを生産するのに約600リットルの水を使います。166頁・


167頁・日本が輸入する小麦の量が年間約600万㌧ですから、約35億立方メートルの水が必要です。この数字は、大阪市が消費する水の量の七年分に相当します。それだけの水が日本に輸出されていることになります。

・内橋・結局、世界から水を奪っているということですね。そういう考え方を日本の国民が持てるようにするに、どうしたらいいでしょうか。  

・スズキ・日本には立派な教育基本法があるのですから、そこへ戻ればいいのです。歴史のことも教えなければいけなと思います。大事なのは、過去少なくとも150年から最近の歴史。祖父・祖母の世代が、そうやってこの国を守ってきたのかがわかると、いかに資源が大事かもわかってきます。日本経済はアメリカをまねたとよく言いますが、アメリカの農業こそ学ばなければいけないのです。アメリカ経済が強いのは、まず穀物を抑えているからです。そういう根本をよく教えたうえで、農業について判断を下していただきたい。

17:01 2016/01/23 


なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか (単行本)

ケンジステファンスズキ (著)

この本とフィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453)) (集英社新書)  堀内 都喜子をあわせて買う

なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか+ フィンランド豊かさのメソッド (集英社新書 (0453)) (集英社新書)

デンマークという国 自然エネルギー先進国―「風のがっこう」からのレポート ケンジステファンスズキ

少子化をのりこえたデンマーク (朝日選書) 湯沢 雍彦

デンマークの子育て・人育ち―「人が資源」の福祉社会 澤渡 夏代ブラント

内容(「BOOK」データベースより)

世界最高レベルの社会保障制度を整え、食料もエネルギーも自活、世界でもっとも民主主義が進んでいる国、デンマーク。「共生」の政策理念の基盤となる国の歴史と国民の姿を通して、年金・雇用・貧困・格差・「愛国心」・環境・エネルギー・食料など問題の山積する日本社会を見つめ直す。 

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)ケンジ・ステファン・スズキ

旧姓、鈴木健司。S.R.A.デンマーク、「風のがっこう」代表。1944年、岩手県生まれ。1967年、青山学院大学中退後デンマークに渡り、翌年コペンハーゲン大学政治経済学部に入学。1971年から在デンマーク日本大使館に勤務し、その後農場経営をはじめる。1979年、デンマーク国籍を取得。 1990年、中部ユトランド商科大学会計学部税法学科を卒業。同年、S.R.A.デンマークを設立。デンマークの風力発電機、バイオマスプラントを日本に普及させる事業を手掛ける。1997年、デンマーク・ウアンホイに「風のがっこう」を設立。環境政策などの視察でデンマークに訪れる日本人のための研修施設として運営を開始。2002年、京都府弥栄町に「風のがっこう京都」を町営の環境教育施設として開校。2004年、「風のがっこう栃木」と業務提携し、研修業務を支援。現在は、日本とデンマークを往復しながら、さまざまな事業を手掛けるほか、講演活動などを精力的におこなっている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)

登録情報

* 単行本: 189ページ    * 出版社: 合同出版 (2008/02)    * 発売日: 2008/02

目次を見る 目次

第1章 デンマーク・私が「理想とする国家」に近い国

第2章 なぜ、デンマーク人は国に愛情を持つようになったか

第3章 氷河とバイキングがつくった北欧の小国

第4章 デンマーク人が国を愛する心の原風景

第5章 農奴が下支えした中世のデンマーク社会

第6章 神聖なる王権から国民の主権へ

第7章 福祉制度をつくり出したデンマーク・福祉を考えなかった日本

第8章 デンマークは「戦争」とどう闘ったか

第9章 教育の目標は「国家運営」に参加する国民をつくること

第10章 借金を残さないデンマーク・つけを残す日本


これからの日本がお手本にしたい国の本 日本人の幸福観を根本から変えてくれる1冊, 2008/11/13

By     21世紀のケインジアン (兵庫県) - レビューをすべて見る世界一幸福な国ランキングNO.1の国、デンマーク。環境先進国として知られているるほか、日本がとても遅れているワークライフバランスの先進国としても知られている。人口540万人の人口は、北海道とほぼ同じでしかない。しかし、デンマークの歳入額は、北海道の 20倍にもなる。一人当たりのGDPは700万円といわれ、健全な黒字国家である。

赤字で苦しむ日本国とはまったく違う。国も潤い、国民も経済的に豊かで幸せ感が高い国が、デンマークだ。「持続可能」というテーマで世界を見ていると、

デンマークで行われてきたことが大変興味深い。日本人の幸福観を見直す観点からも是非、読んで欲しい一冊です。 日本でも高福祉と強い国際競争力が実現できる?! 2008/6/7

高額な税金(所得の70%、消費税率25%)で、無料の教育、無料の医療費、失業時の高保障を実現しているにもかかわらず、

国家財政は黒字、世界競争力ランキングで3位(日本8位)、1人当たりのGDPは日本の1.35倍、1人当たり貿易額は日本の3倍、エネルギー自給率156%、食料自給率300%超。デンマークが「なぜ、どうして」これらを実現できたかを、デンマークに生活している生活者の視点とバイキングの時代から遡って視ることによって答えを見出そうとしたのがこの本です。体系的で整理された学者の本ではないが、競争社会、格差社会と福祉・高齢者切り捨てで混迷する日本の根源とあるべき姿を考えさせてくれる本である。


楽しく読ませていただきました。

特に「フレデリック6世の善政」や「200年前の貧困救済計画」の先進性に驚かされました。なんて人民のことを大切に平等に考えているのでしょう。また、第2次世界大戦中、ドイツがデンマークに侵攻した時、わずか4時間で降伏し、占領を受け入れた指導者の判断もすばらしいと思います。それに比べて日本のとった行動は被害、加害を含め情けないの極みです。

デンマークの良さをたくさんの日本人に知ってもらって、日本をもっと改善していって欲しいと思います。その上で、本書は手引書として大いに役立つと確信しております。

北欧の高福祉は何十年も前から羨望の対象として語られてきたが、そのために長い時間をかけて国づくりを行ってきたことにまず注目すべきであろう。高福祉には高負担が伴うが、それを厭わない国民に日本人はなれるのか?それともやはり日本人には「中福祉・中負担」なのか?このような語り尽くされた論議のほかに私が注目したのは、本文中にあった、自分たちの将来の生活のために、安易に隣町の安い店に走らず、少々高くても近所の店で買うというデンマーク国民の姿勢だ。これなら、中国野菜や餃子問題は起こらないであろう。自分中心の生活により自らの首を絞めている私達日本人にまねができるだろうか。

5つ星のうち 5.0 エネルギーと食料自給率が100%を超えるデンマーク, 2008/11/21

デンマークという国を日本との比較で紹介した本です。教育や福祉に対する意識の高さ、愛国心、どれも今の日本にとって見習うべきところと思いますが、デンマークという国の歴史的な背景から来るものだと言うことが、詳細に述べられています。中でもうらやましいのが、エネルギーと食料自給率が100%を超えるという点です。両方とも、これから世界的な不足が問題になることは目に見えていますが、これらの問題を克服している点に、デンマークと言う国のすばらしさを感じました。

一読の価値がある本と思います。 14:24 2009/01/31


なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか 

「無言劇」平らな国デンマーク

『平らな国デンマーク/子育ての現場から』 第73回 「無言劇」

高田ケラー有子 :造形作家 デンマーク北シェーランド在住 『平らな国デンマーク/子育ての現場から』  第73回「無言劇」

1月も早くも終わりに近づき、2月のグループ展の準備に追われております。このグループ展は、いつもと趣向が違い、鑑賞者を巻き込む工夫がさまざまにあって、作品を見るだけではなく体験することのできるグループ展で、かなり大掛かりな仕掛けもあり、私自身も7人の作家によるグループ展の仕上がりを楽しみにしているものです。

会場はかつては大砲の玉や銃弾を作っていた工場が改装された建物で、重厚で、高さのあるその歴史ある建物のなかで、新しい感性が響き合う事も期待されています。

私は、この建物の、普段は作品など一切展示されない高さ6mと10mのところにある梁と梁の間に作品を設置し、高さ6mの梁の上まで上れる形のタワーが仮設され、鑑賞者はそこ(高さ6mの地点)から作品を見る、という前提で作品を制作。床レベルから見た時には見えない全貌が、タワーに上って初めて見える、というものです。 普段は見る事のできない、上からの視線で、会場全体を見る事ができる、というのもひとつの体験で、またその階段には、床と天井に鏡が設置されるので、階段を上る時点でも異空間体験ができる、というもの。中には怖くて上れない方もあるかもしれませんが、他の作家さんも、それぞれに工夫を凝らした作品が展開される予定で、全員の作品を展示するための部材や、仮設の構造物を制作するのに要する合板の枚数は200枚。こうした部材や私が展示のために使う貸し電動リフトなども、すべて周辺企業の寄付で賄われます。

世界的な不況の中、こうした展覧会をサポートしてくれる企業がある事は、作家にとってはほんとうに喜ばしい限りです。デンマークのTOYOTA財団もそのひとつで、このご時世では一番先に削られそうな予算とも言える中、アートなど無駄、とはいわず、サポートしてくれるのですからありがたいことです。この展覧会に企画側が選んだもうひとりの日本人作家が招待されているのですが、ビデオインスタレーションの

若手作家(向井智香 / http://www.mu-kai.com/chika/ )で、体験型の作品を展示してもらう事になっています。実はこの作家は私の姪でもあり、叔母との初コラボということにもなり、その意味でも個人的には思い入れの強い展覧会になります。

会場は、ごく一般的な人々が日常的に気軽に訪れることのできる空間で、入場料は無料。常に赤ちゃんからお年寄りまで、多くの市民に親しまれています。日常的に市民が利用する文化会館での展覧会で、こうした新しい企画が大規模に展開され、またそれを周辺企業がサポートする、という地域ぐるみでアートを楽しむ(支援する)姿勢があることには、文化意識の違いとアートが日常的なものになっていることを感じます。

私は、より多くのビジターに積極的に参加してもらうため、文字探しゲームも梁の上の大作とは別に企画しており(子供のお誕生会のようですが)、高さ30cmほどのアルファベットキュービックを制作し、会場のあちこちにちりばめて展示し、そのうちのいくつかはタワーの上に上らないと見ることができなかったり、下からは見えていても何の文字がわからないように展示する予定。そして、訪れた人々が文字を探して単語にして紙に書き込むと、正解者の中から最終日に抽選でアルファベットキュービックの内の一文字がもらえる、というおまけ付き。文字を探して完成する単語はこの歴史的な建物だからこそ込めたかった平和へのメッセージになっており、子供からお年寄りまで誰にでも分かりやすいものにしています。

平成28年1月26日

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