« 先日は遠いところをお越しいただきありがとうございました。 少しでもお役に立てれば幸いです。さて中間処理施設などの運営ですが (有)そおリサイクルセンター(中間処理施設と有機工場)は民間で建設し、行政からの委託料と手数料で運営、曽於南部清掃センター(埋立処分場)は志布志市と大崎町から構成される一部事務組合(行政)が建設、運営費も税金投入です。奄美群島の自治体は・納税者の意志に反して・龍郷町は戸口川に3本の橋架け替え・大美川に2本の橋の架け替え・この予算約1,200,000,000円なり・ | メイン | 杉浦/一機 航空アナリスト。首都大学東京客員教授。世界の空港、エアラインのサービスや経営について造詣が深く、利用者サイドに立った航空の評論がモットー。1947年生まれ・利益が利用者に還元されない羽田・164頁・隠れた優良企業・空港ビルにも多くの子会社・天下り先の空港環境整備協会・権益だけで生きる空港施設。 »

2015年12月23日 (水)

誰のための教育か・内橋克人氏・人間は社会性がないとならない?162頁・自分たちの食糧やエネルギーがどこから来ているのか、現実世界の中で位置づけることによって、はじめて国際協調という言葉の意味が分かってくるのです。


引用


なぜ、デンマーク人は幸福な国をつくることに成功したのか どうして、日本では人が大切にされるシステムをつくれないのか 単行本 – 2008・2 ケンジステファンスズキ ・第9章 教育の目標は「国家運営」に参加する国民をつくること165・

http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/02/20082-9-35bd.html

7:35 2016/02/23


若者は、選挙に行かないせいで、四〇〇〇万円も損してる!?新書 – 2009・7・7 森川 友義 (著) 第5章「官僚組織」の「官僚組織」による「官僚組織」のための政治?第5章「官僚組織」の「官僚組織」による「官僚組織」のための政治?

http://amamioosimasanrinha.synapse-blog.jp/takita/2016/01/200977-55-e50c.html

15:30 2016/01/17


誰のための改革か 単行本  – 2002・5・20 内橋 克人 (編集) 

5つ星のうち 5     1 件のカスタマーレビュー容(「BOOK」データベースより)

市場原理を至上のものとして推進されるいわゆる「規制緩和」こそが矛盾を拡大させ、大きな社会的ダメージを与えるものとして批判し続ける編者の警告は不幸にして的中した。本書は、その後「経済戦略会議」から「小泉構造改革」へと展開してきた経済政策が、いっそう事態を悪化させるものであったことを明らかにする七人の論客による現代日本への警鐘。小泉改革の本質とされる「構造改革」が政策的に完全に破綻し、取り返しのつかないまでに事態を悪化させているとして徹底的に批判。危機の真因が小泉改革にあることを明らかにするとともに、これに替わって選択すべき政策を提示する。

 内容(「MARC」データベースより)

 『世界』における対談と論考をまとめた1冊。日本経済を危機的状況に陥れている真因は何か。小泉首相主導の構造改革を徹底批判し、小泉改革が完全に破綻しているだけでなく、危機を増幅していることを明らかにする。

 単行本: 212ページ出版社: 岩波書店 (2002/5/20)発売日: 2002/5/20


 目次

「小泉構造改革」は私たちをどこへ導くか(内橋克人)

「経済戦略会議」徹底批判(金子勝)

米同時テロ以後の世界経済―マネー資本主義こそが問題の核心(金子勝)

小泉「構造改革」はすでに破綻している(山家悠紀夫)

人間を中心とした経済社会へ(神野直彦)

ワークシェアリングとは何か(長坂寿久)

「生活大国」デンマークから何を学ぶか(ケンジ・ステファン・スズキ)149頁・平成27年12月23日・


158頁・4・生活大国と市民の意識・

内橋・日本では政治家も含めて、未だ北欧の諸国について陳腐で誤った常識が根強くはびこっています。北欧諸国は経済小国だ、人口も少ない、一体そんな小国が、経済大国日本の参考になるのか、というものです。いろいろ理想を追い求めているとしても、それは少ない人口だからこそ可能なんだ、と。


159頁・実際、一人当たりのGDPではまさに世界トップクラスです。日本の比ではない。仮に、絶対額から見て生産大国でないとしても、社会の付加価値とかインフラの充実度、それに農業、ITなど先端産業は抜群に強い。

「経済大国」でない、というのなら、むしろ誇るべき「生活大国」と言うべきです。不勉強故に日本の知識人はこの実態を知らないわけですね。

また、人口が少ないと言いますが、エネルギー自給圏の形成一つ、日本でやってやれないはずがない。北海道、四国、九州、そして本州の東西南北、それらを一つのエリアと見れば、全く条件は同じ。むしろ今問われている地域主権とはこれをめざすことです。再生可能エネルギーの可能性一つ、北欧が参考にならないはずがないのです。

スズキさんの言う「80%の民主主義」、つまりは実質民主主義と日本の形式民主主義との違いを、深く理解することが、日本の未来にとって欠かせないと思います。

スズキ・高いですね。例えば、私の主宰する「風のがっこう」の周辺に住んでいる農家の人たちにコーヒーを呼ばれて二時間ぐらいおしゃべりをすると、必ず政治の話題が出ます。自分の町の政治、国の政治の話が必ず出る国なのです。

いまデンマークでは、世帯数で約20万世帯、ざっと見て40万人の人たちが風車に投資しています。


160頁・選挙民400万における40万と言うと、10%です。デンマークで世論調査をしますと、風車をもっと増やしたいと思っている人が今でも約70%いる。それに対して政治、あるいは行政側がストップをかけようとしますと、政治家を選び変えるよう行動するわけです。

立法するのは政治家ですから、政治が変わらないとどうしょうもない事を彼は知っているのです。

デンマークの教育は法律を読むことを教えます。みんな非常に法律にうるさいです。会話の中でも、憲法や、言論の自由がすぐ出てきます。法律そのものが日常生活の中に活かされた生活。それで初めて法治国家と言えるし、民主主義が生かされてくるわけです。 

・内橋・日本の現実に比べて、声がないですね。

・スズキ・デンマークの法律も日本の法律も内容的にはほとんど変わりないです、すべてのことに関して。

・内橋・法律は同じなのに、やることは逆だ、と・・・。

・スズキ・つまり法律どうりやっていないのですよ。守られているのは道路交通法と刑法だけではないかと思います。日本の会計の中で「使途不明金」が出てきますが、これを認めている国は、おそらく先進国にはないです。それが問われてこなければいけない。それを問うような教育がなされていないことだと私には思えます。


161頁・5・社会とリンクする教育・

・スズキ・いまデンマークの人口は530万人ほどです。日本の北海道と比較してみるとよくわかると思うのです。北海道の面積はデンマークの約二倍の8万㎡で、その中に570万人が住んでいます。ところが北海道の国民総生産はどうかと言うと、デンマーク並みなのです、ということは、半分の生産力しかないことになります。

北海道に世界的に名の知れたメーカーがあるかと言うと、そういう企業も育っていません。ですからこれは人口の問題と言うよりも国民性の問題、つまりは教育の問題です。

資源のない国が頼るのは国民しかいない。それがデンマークの教育のベースにあると考え方です。小学校から大学まで授業料は無料で、しかも親としての扶養義務は18歳まで、それを過ぎた子供たちについては国が生活費の面倒をみます。親と子の経済的関係を切り離したわけです。

ただ、教育の基本理念から見ると、日本の教育基本法はデンマークのものとほとんど差がないと思います。

・内橋・教育基本法通りにやれば日本もデンマークのようにできるのだというご意見ですね。

・スズキ・そうです。例えば、日本の初等教育の目標の中に、「国際協調」があります。自分の郷土を知り、国を知った上で、国際協調をする子供に育てることが重要だとみなされているならば、少なくとも国際協調の中身として、食料とエネルギーの自給率について認識させなければならないはずです。


162頁・自分たちの食糧やエネルギーがどこから来ているのか、現実世界の中で位置づけることによって、はじめて国際協調という言葉の意味が分かってくるのです。

「なぜデンマークにできて、日本にできないのか」とよく訊かれます。デンマークでは、日本と違って実社会と学校がリンクしています。学校では「あなたの言う・これが正当だ・という意見は、社会全体にとってどういう意味を成すのか?」という問いかけが常になされ、その時に「社会全体にとってこのようなプラスがある」と言う形で意見を表明しなければいけない。そのような訓練を受けているのです。


・6・答えが一つしかない教育と、たくさんある教育・

・内橋・高等教育についてはどうですか。最初は様々な時計数次の解析の勉強からとおっしゃっていましたね。

・スズキ・私はコペンハーゲンの大学生経済学部に二年ほど在籍したのですが、経済理論の最初の時間に、まず「国際経済とは改定経済を大きくしたものである」と叩き込まれます。拡大解釈すると、お父さん・お母さんが子供を育て、守るために働くのだとすれば、国家の中枢にいる政治家・中央官庁の役人たちは、国を守るため、国民を守るためにいるのだ、と。そういう考えのもとに、国全体の統計、例えば国民総生産や消費者物価指数の算出の方法を教えられます。162頁・15/12/24 5時52分33秒


163頁・昨年(2001年)5月にデンマーク経済が一時的に加熱したのですが、その時取られた対策は、住宅ローン…デンマークは住宅を国民に持たせる政策を採っています・・・その利子に対して所得から控除していた額の割合を45%から38%に引き下げることでした。

そういう形で国民の可処分所得を減らせば、経済を冷やすことができる。国の中枢にいる人たちが統計を基に国全体を見通せるから、そのような対策が可能になるのです。

・内橋・北欧諸国においても、日本とほぼ同じ時期にバブルが発生し、90年代に入ってすぐ崩壊しました。金融におけるビックバンが引き金で、商業地を中心に地価が上がったのが主な原因だったようです。しかし、住宅地は投機の対象にはなっていません。住宅地も巻き込んだ悪性バブルの日本との違いは厳然としています。だからこそ、不良債権の処理も素早く、手際よく済ませることができたのです。

もっと注目されたのは、そのバブルがデンマークにおいては発生しなかったことですね。その秘密が住宅政策にあったこと。なかでもローンの利子について所得控除の割合を動かす、という背景に、すべての国民に住宅を持たせることが、人々の安定と安心につながる、という政策があった…。163頁・


164頁・スズキ・日本にも経済のプロだという人たちはたくさんいたはずなのに、当時何をやっていたのか。「東京の地価を合計すればアメリカ全土が買える」なんて、あり得ないですよ。そのツケが10年かかっても払いきれないわけでしょう。

・内橋・10年をもってしても清算できていません。

・スズキ・日本の学校教育がいかに実社会と離れた勉強をさせているか、ということです。

日本では一年間に起業する人の平均が7,000人だと言われています。一方のデンマークでは、平均して年16,000人、去年でも13,500人が起業しています。日本の人口規模に置き換えると、毎年30万人が起業している計算になります。日本ではわずか7,000人と言うことは、つまり企業化になるようなきょう一句、使える勉強をしていないことの反映だと思います。

私がデンマークの大学で大変勉強になったことは、例えば筆記試験で4時間以下の試験はないのです。教科書から参考書、全部持ち込みOK。ただ回答は15枚くらいになる。


・内橋・その人の本当の考えを問う訳ですね。


・スズキ・どんな問題が出るかと言うと、会社の会計報告を示して「この会社は景気が悪いが、どうしたら改善できるか論ぜよ」。もちろん教科書には答えは出ていません。解答は決して一つではなく、あらゆる解決策を探ることが可能です。

・内橋・回答が一つと言うような問題は出さないということですね。一方、いまの「小泉ブーム」を考えてみますと、答えが一つしかない教育を国民が受けているから、80%の内閣支持率がこの危機的状況の中で続いているのだと思いますね。164頁・


165頁・結局答えは一つしかない。そして、「何とかしてくれるだろう」と幻想。ほとんどその根拠を問わない。まさに人気タレントと同じです。

・7・農業を大事にする国、しない国・

・7・農業を大事にする国、しない国・ここまで15/12/24 8時57分31秒

・内橋・デンマークは農業を国の産業として重視しており、食糧の自給率も100%をはるかに超えています。

19世紀末、スカンジナビア三国は、新大陸から安い農産物がどんどん入ってきたため、農業恐慌に襲われました。しかしデンマークは、恐慌の埒外で、非常に立派に切り抜けた。デンマークが農業を大事にするというのは、国土を一皮むけばそこはツンドラで、人間のエネルギーを農に注がなければ生命さえも維持できない、そういう限界状況では、国や社会にとって何が大事かわかっていたからだと・・・。

・スズキ・19世紀中頃、特に東欧、アメリカから安い小麦がどんどん入ってきたときに、イギリスやフランスは自国の農業を保護するために関税で対抗したわけですが、デンマークはもともと輸出の割合が多かったものだから、その方策では対抗できなかった。ではどうしたかと言うと、農家の人たちはその穀物を家畜に食わせることで付加価値を高めた。165頁・


166頁・餌の確保のために作付を大麦に変えていき、それを家畜に与えることで、穀物を肉やミルクに変えたのです。

・内橋・本当の意味の「米百票」の思想ですね。そのような歴史的な背景もあって、デンマークは農業国で、農業を非常に大事にしていますが、日本の場合は逆に農業軽視で、農産物も安いところから買えばいいという国際分業論です。経団連はずっと「日本農業不要論」を主張してきました。

いま地方を歩いてみると、減反のために田畑が荒れ果てている。実際に米を作りたくても、作ればまさに村八分です。法律的な報復もあります。やむなく放置して、そして日本は自分で作れる穀物を他の国から買っている。エネルギーも食糧も自国内でカバーすべきだという「人道主義」から見れば、こういう状況は当然、世界に貢献していないというご意見ですね。

・スズキ・その通りです。一年間に日本が輸入する穀物の量は約3000万㌧と言われています。数字だけではピンとこないのですが、いま焦点になっているのは水の問題です。

・内橋・「ブルーゴールド」(黄金に水)とさえ言われますね。

・スズキ・地球上には、実際たくさんの水がありますが、人間や動物が生きるために使える水は、わずか1%しかありません。世界には水の汚染に困っている人も、飲み水に事欠く人もたくさんいる。例えば、小麦一キログラムを生産するのに約600リットルの水を使います。166頁・


167頁・

日本が輸入する小麦の量が年間約600万㌧ですから、約35億立方メートルの水が必要です。この数字は、大阪市が消費する水の量の七年分に相当します。それだけの水が日本に輸出されていることになります。

・内橋・結局、世界から水を奪っているということですね。そういう考え方を日本の国民が持てるようにするに、どうしたらいいでしょうか。

・スズキ・日本には立派な教育基本法があるのですから、そこへ戻ればいいのです。歴史のことも教えなければいけなと思います。大事なのは、過去少なくとも150年から最近の歴史。祖父・祖母の世代が、そうやってこの国を守ってきたのかがわかると、いかに資源が大事かもわかってきます。日本経済はアメリカをまねたとよく言いますが、アメリカの農業こそ学ばなければいけないのです。アメリカ経済が強いのは、まず穀物を抑えているからです。そういう根本をよく教えたうえで、農業について判断を下していただきたい。

・8・理想と人道主義は可能か・ここまで・15/12/24 10時30分23秒

・内橋・大変不幸なことに、いま日本では「聖域なき構造改革」なるキャッチフレーズが大はやりで、教育さえもすべて御破算に、という状況です。教育に見直し、大学制度の見直しと、まさに教育基本法破壊過程にあります。167頁・


168頁・

もう一つ不幸は、日本の中で「歴史が大事だ。どのようにして日本の国が守られてきたかを教えるべきだ」と言う意見は、主として短絡的に民族主義・国家主義につながる側から、しかもグローバリゼーションへのアンチテーゼとして出てくる。その逆に、「すべてアメリカのまねをすればいい。今時代はグローバリゼーションである。グローバル・スタンダードでやるべきだ「と。このどちらかしかないのが現代日本の言説です。今おっしゃっている意味はそうではないわけですね。


・スズキ・そうではないです。日本の皆さんとディスカッションをすると、よく極端になってしまうのですね。これは教育の中でディベートがなされていない証拠です。応えはたくさんなければならないにもかかわらず、一つしかないから、話が全部極端になってしまうのです。

・内橋・なるほど。

・スズキ・それから形式も大事だけれども、もう少し理想と人道主義に基づいた教育が必要ですね。共生の社会ですから。

・内橋・理想、そしてそれを裏付ける人道主義、この二つが大事ですが、日本の場合、まさに「形式主義」であって、理想を解きますと「嘴が黄色い」と言われる。日本の場合、私たちが一番懸念しているのは、強いものには弱く、弱い者には強い、という日本人社会的性癖です。168頁・


169頁・デンマークでは、啓蒙主義が、全部そういうものを破壊してくれたのです。つまり、権力を全部地表に落とした。日本では今でも「天下り」問う言葉が使われていますが、そういう言葉を使っていいかどうかが本来問われなければいけない。そんな古い言葉は捨てなければいけない。あの人たちは天にいるのではなく、幸いにして不幸にしてか、役人になっているのに過ぎないのですから。

・内橋・行政絶対優越、官僚支配という、日本特有の社会のあり方はまったく変わっていないし、いま叫ばれる「聖域なき構造改革」のお題目にしても、見せかけの官僚征伐を売り物にしているだけです。小泉政権にすり寄る特定の学者グループ、特定の学派の一族支配といっていい。

官僚たちの特権を憎むからこそ、その打破をうたう小泉流に多くの日本人が拍手を送っている。しかし、その実態は旧大蔵省、現財務省の掲げてきた財政原理の、まさに忠実な実行者こそ、ほかならぬ小泉首相であり、残念ながらそのことに国民はまだ気づいていない。「痛み」と言う名の大衆課税、「改革」と言う名の格差拡大、そして依然として官尊民卑の思想ははびこり続けています。

・9・ワークフェアの考え方・

・内橋・ところで、デンマークの福祉政策と環境政策はリンクしているという、この考え方は貴重ですね。169頁・


170頁・

・スズキ・人間が生まれてから死ぬまでの過程で、福祉というのはどこに関わってくるかを考えると、健康である限り病院にかかる必要はないですから、健康の人は全然福祉のお世話にならないのです。死を迎える時になって、もしかしたら病院に入る、つまり福祉のお世話になるかもしれない。一方環境と言うのは、その人の生きる過程の中にあり、過程の中で環境を汚染してその人たちの健康を害する結果を招いたら、福祉の負担が増えてくるというのが見えてくるわけです。

人が生きる過程における最低条件として、きれいな水と空気を確保しておかなければいけない。食べるものを含めて。これがデンマークのおける環境政策なのです。有機食品が大変はやっているような国民性ですから、デンマークの福祉に実際にお世話になっている人は何%かと言うと、おそらく大変少ないのではないかと思います。

「それだけ福祉をよくしたら、誰も働きにいかないのではないですか」とよく訊かれるのですが、「人間と動物の違いだ」と私は答えます。人間とは、自分の可能性を追求する存在だというのがデンマーク人の考え方です。餌だけで生きているのではなく、自分が生きたいという何かを残しておきたい。給料は要らないけれどもこういう仕事をしてみたい、とか…。ですから3,4回は平気で職を変える人が多いのです。

・内橋・「ウェルフェア」と「ワーク」の合成語で「アークフェア」と言うのがありますね。働くことが福祉だ、と。これが自然に、すんなり入ってきます。


171頁・

・スズキ・この職を失えば食えなくなるというのなら、会社にしがみつくのも分かりますが、好きでもない仕事に行く必要がないのは、ちゃんと食べられる保証が後ろにあるからです。それによって初めてその人の能力が発揮でいるのですね。

・内橋・なぜ日本のような「経済大国」が10年をもってしても不良債権一つ処理できないか、理由がよくわかります。日本では会社が潰れると人間も潰れてしまうからです。デンマークにしても、他の北欧の国々にしても、会社は潰れても人間は潰れない。食べて行けるわけですから、多額の不良債権を飼明けた会社は早く潰した方が社会的コストも少なく済む。そういう方向に自然に向かっていくわけですね。


・10・福祉に裏打ちされた納税感覚・ここまで・15/12/24

・10・福祉に裏打ちされた納税感覚・ここまで・15/12/24 14時20分52秒

・内橋・デンマーク、あるいは北欧の国々於いて、日本でいう「福祉」とは、福祉の本質が相当に違っているように思うのです。デンマークの人々が海外で事故にあうと、治療費の請求書のあて名がすでに書いてあって、それはデンマーク政府なのだと。

そのシステムにまだ入っていない日本で医者にかかった場合、たて替えておけば後で政府が補償してくれる。世界中どこを旅行していてもどこで活動していても、ひとたび怪我をしたり病気になれば、国が面倒を見てくれる。これは単なる福祉ではありませんね。171頁・


172頁・

・スズキ・自分の国の国民をいかに大事にするかということの現れです。国民も、これだけ大事にされたら、税金を払っても惜しくないと思います。デンマークは世界で一番の重税国です。

100円のうち51円か52円の税金を取られているけれども、やむを得ない。なぜなら払っている先が見えるからです。しかも、人頭税ではなく所得税ですから、所得のない人は払う必要がない。税金が高いと言って逃げ出す人もいますが、たいてい戻ってきます。やっぱりデンマークが一番安心して住んでいられる、と。

・内橋・日本で今、再び消費税引き上げ論が出ています。課税最低限度額の引き下げも言われています。低所得層も所得税を払いなさい、国を支える気概を持ちなさい、と政府・自民党は叫んでいるわけです。

・スズキ・日本の国民が反対するのも分かります。払った税金がどこに使われているのかも見えないのですから。

大企業が倒産するからと言って、巨額の資金を投入するのも不思議ですね。それに対して説明は一切なく、国民の側も説明を求めない。金融機関等にあれだけの融資をする余裕があるのなら、メーカーなどモノづくりの担い手たちを育てなければいけない。もう既に使い込んで、足りないからまたくださいなんて、お金をドブに捨てるようなものです。172頁・


173頁・そういう会社は無くていいのですよ。新しい産業を起こすことに資金を投入しないと、いつまでたっても豊かにはなれません。

デンマークの場合なら必ず、資金投入の目的を厳しく問われます。一五歳から確定申告をする国で、皆に個人番号がついていますから。

・内橋・国民総背番号制ですね。日本で導入すると、大変なことになります。まさに管理国家になってしまう。

・スズキ・導入したら、おそらく正当でない方法でお金を得ている人が一番困ると思います。もちろんデンマークでも、何とか税金を逃れをしようとする人もいますが、重罪に問われます。ヨーロッパで世論調査をした中で、「政党でないお金をもらうことはいけないことだ」と言うモラルに賛成する割合はデンマークが七三%でトップなのです。


・内橋・これも「八〇%の民主主義」に相応していますね。

・11・国のあり方を変えるための長い道のり


・内橋・確かに公平・公正という観点からすれば、国民総背番号制は極めて望ましいシステムかもしれません。しかし、それを導入するためには、前提として、国のあり方の問題があります。人権や人道主義、人間と言うものを価値の一番最上位に置く考え方がある中での公平・公正であり、したがって手段としての国民総背番号制が必要だという論理になってくればいいのですが、日本の場合、「個人情報保護法」と言われているものの中味が実際は「個人情報管理法」であるというような国のあり方を変えませんと、「国民総背番号制」も、言葉は同じでも内容は似て非なる「国民総管理番号制」になってしまう恐れがある。


174頁・

民主主義も同じで、日本の「形式民主主義」は、本当の意味の民主主義とはまさに180度違う。

日本とデンマークで同じ言葉を使っても中身が違うという印象が非常に強いのですが、両者を近づけるにはどうすべきか、ということが問われているわけですね。

・スズキ・日本では、わかっているけれども行動に移せないことがたくさんあるのですね。デンマークのやり方をよくわかっていても、それを実行するとなると戸惑ってしまう。勇気を持って行動する人が少ない。日本の場合、国方からは動かないので、そういうことを感じる人たちが行動に移し、小さくともネットワークを作って、政治を変えていくしかありません。わたしたちの「風のがっこう」の研修生の中で、環境教育をしたいから小学校の教師になった人や、風力発電に係りたいと風車関係の商社に入った人がいます。そういう形で、相当時間がかかるけれども、意識のある人たちが行動に移していく。それ以外に方法はないのです。

・内橋・そうですね。何とか今の国のあり方、社会のあり方そのものを変えていくという方向にいかないと・・・。

・スズキ・現実として、日本が抱えている国債666兆円と言う額は、とにかく桁が大きすぎて想像もつかないのですが、174頁・


175頁・消費税を35%にしても返済に70年かかるという計算があるのですね。と言うことは、すでに今の人たちは、孫の世代までの財産を食ってしまったことになります。

今の世代の皆さんは確かに頑張ったかもしれないけれども、結果として、自分の子供に対して、食べ物も、エネルギーも確保しなかったし、借金をたくさん抱えて、しかも年を取ったから面倒を見てくれと言う。次の世代にも生きる権利があるはずです。何とか踏み台の一つぐらい作ってあげて次の世代に渡すのが、親の世代の愛情ではないでしょうか。今の日本を見ていると、次の世代に対する愛情がない。それを直すためには、心ある人たちがまとまって、行動を通じて新しい国のあり方をつくっていかなければいけない。

・内橋・気が遠くなるような時間がかかるでしょうが・・・。

・スズキ・20ねん、30年はどうしてもかかるのです。急げば急ぐほど、ものにならない。しかも絶対に東京からスタートしないですね。田舎から立ち上がってくるでしょう。

・内橋・スズキさんの「風のがっこう」の日本での第1号も、丹後半島に開校の予定ですね。今年の六月でしたか・・・。

・スズキ・そうで。人に言うばかりでなく、自分でももっと行動を起こさなければ、と思っています。175頁・


176頁・

・内橋・今日は刺激的なお話をどうもありがとうございました。

發出、世界・2002年3月号・

平成27年12月24日


コメント

・スズキ・地球上には、実際たくさんの水がありますが、人間や動物が生きるために使える水は、わずか1%しかありません。世界には水の汚染に困っている人も、飲み水に事欠く人もたくさんいる。例えば、小麦一キログラムを生産するのに約600リットルの水を使います。166頁・


167頁・


日本が輸入する小麦の量が年間約600万㌧ですから、約35億立方メートルの水が必要です。この数字は、大阪市が消費する水の量の七年分に相当します。それだけの水が日本に輸出されていることになります。


・内橋・結局、世界から水を奪っているということですね。そういう考え方を日本の国民が持てるようにするに、どうしたらいいでしょうか。


・スズキ・日本には立派な教育基本法があるのですから、そこへ戻ればいいのです。歴史のことも教えなければいけなと思います。大事なのは、過去少なくとも150年から最近の歴史。祖父・祖母の世代が、そうやってこの国を守ってきたのかがわかると、いかに資源が大事かもわかってきます。日本経済はアメリカをまねたとよく言いますが、アメリカの農業こそ学ばなければいけないのです。アメリカ経済が強いのは、まず穀物を抑えているからです。そういう根本をよく教えたうえで、農業について判断を下していただきたい。

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